特許翻訳を独学で学ぶ際に手元に置いておきたい書籍7選

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特許翻訳に携わるようになってから数年が経ちました。

仕事を通して新しい分野の勉強や、知財業務に関する勉強もしてきて、知財実務や科学分野の専門書、手軽に読める文庫本、英文ライティング等についての書籍も多く購入してきました。その中で、「この本にはもっと早く出会っておきたかった」「こんな本も特許翻訳に役立つんだ」という本も何冊かあります。

 

今回は、私がこれから特許翻訳の勉強(仕事)に携わると仮定して、真っ先に手元に置いておきたい書籍を7冊紹介します。

※これらの本を題材にして勉強をする、というよりも、実際に明細書を調べて読み込んで、翻訳をして…というプロセスの合間にこれらの本を読むと、理解のスピードが速まる、という本です。その点はご理解頂ければと思います。

 

①特許翻訳の実務 英文明細書・特許法のキーポイント

 

2017年の夏頃に読んだ本で、特許翻訳者になるための勉強法から、特許翻訳の実務の流れ、特許法や審査基準の話、請求項の書き方等が一通り網羅されている優良書籍です。

 

内容は日英翻訳をベースにして書かれていますが、用語の調査方法や辞書の使い方についても言及がされているので、普段の勉強や仕事にすぐに取り入れられる内容も多いです。

 

特許翻訳という、少し特種な仕事(知財業務の1つのワークフロー)を理解するために、知財業務の全体像についても書かれているのもポイントです。

 

②外国出願のための特許翻訳英文作成教本

 


こちらは、業界では有名な方の渾身の一冊とも言える書籍です。表題通り「外国出願」、つまり「日英翻訳」についての解説書なので、英日翻訳には関係ない!とも思われがちですが、日本の特許実務とアメリカの特許実務の違いや、使ってよい用語と使用を避けるべき用語の解説も多く載っているので、英文和訳を仕事にしている方にも、和訳の際に気をつけなければならないポイントを多く学べる価値のある一冊と言えます。

 

また、英日翻訳を通して多くの英文(原文)を読む中で、日本語表現をどのように英語で表現するか、ということも少しずつイメージが掴めてくるので、普段英日特許翻訳をしながらこの本を読み返してみるのも推奨される使い方と言えます。

 

日英翻訳をする方にとっては言うまでもなく、日英特許翻訳のA to Zが書かれているので、この本を読みながら実際に特許を検索して、自力で翻訳をしてみる、という使い方をしてみるのがいいでしょう。

 

③日米欧三極共通出願時代の 特許クレームドラフティング

 

こちらは、特許翻訳者向けというよりは明細書起草者(弁理士等)向けの「請求項の書き方」に焦点を絞った書籍です。そのため、翻訳については基本的に言及がされていません。

しかし、特許翻訳でも請求項の読解と翻訳は避けては通れない作業ですし、請求項は書き方の特徴が独特であるため、最初はどうしても苦手意識が生まれてしまうものです(私もそうでした)。

 

この本では、主に機械系の請求項を日本語で起草する際の注意点が網羅されていますが、請求項の特徴や正体をはっきりと理解できれば、その考え方を翻訳にも応用できるはずです。

 

本書はあくまで「請求項の書き方」に重点を置いているので、具体的な翻訳技法について参考になる部分はほぼありませんが、自力で翻訳をしながらこの書籍を読んでみることで、よりよい請求項にリライトできないか、といったことを考えるきっかけにもなります。

 

④日本人のための日本語文法入門

 


 

この本も、「日本語文法」の本なので翻訳について直接言及されているものではありません。

しかし、私たち日本人(日本語を母語にしている人たち)は、普段自分の使っている言葉を感覚的に発話したり記入したりしていることも多いため、「どういう理由でこの言葉を使うのか」「なぜこの文法を使うのか」ということを、きちんと言葉で説明することは簡単はことではありません。

また、日本語は英語などの言語とは根本的に、物事の考え方(言語思想)が異なっているため、同じ文章を逐語訳で翻訳をしても、訳文がどうも変なものになってしまうことがあります(英語をそのまま日本語に訳すと違和感があり、日本語をそのまま訳すと英語が変になる)。

 

そんな時に、「この日本語はどういうことが言いたいのか」ということを、ある程度明示的に(きちんと言語化して)理解できると、英訳の際にメリットを受けられますし、英語を日本語に訳す場合も、より「日本語らしい文章」としてアウトプットすることが可能です。

 

翻訳(英語翻訳)というと、どうしても英語ができるかどうかに関心が向けられがちですが、自分が無意識のうちに操っている母語である日本語の正体を理解することが、「敵を知り己を知れば百選危うからず」ではありませんが、より自信を持って翻訳に取り組めむことができる、と言えるでしょう。

 

⑤図解入門よくわかる最新分析化学の基本と仕組み

 

特許明細書の分野でも特に、化学・バイオ系の案件を対応するのに必ずと言っていいほど登場するのが分析機器です。

実施例ではクロマトグラフィーや電気泳動などを使って、物質の分離や測定を行っている場合がほとんどですが、これらの機器に馴染みのない方にとっては、どこから学べばいいかが分からないこともあるかと思います。

 

この書籍は、私が特許翻訳の仕事を受け始めた頃に購入して一通り読んだことのあるもので、化学・バイオ系の実験で使われる分析機器の種類や仕組み・原理が、豊富な図と分かりやすい説明でされています。

私は、この本を読んだ後に企業のホームページ等でより詳しい原理や仕組みを調べましたが、いきなりホームページを読むよりも、こういう書籍で「さわり」の部分を押さえるほうが理解の進み具合も早くなります。

 

この「図解入門」シリーズは、他にも半導体や流体力学の分野、更には特許翻訳とは関係のない投資やビジネス分野の書籍も豊富にあるので、必要に応じて買いそろえるといいでしょうが、分析機器は特許翻訳の多くの分野に共通して登場するので、最初に揃えておいて損のない一冊と言えます。

 

⑥科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現

 

英文ライティング業界では有名な書籍で、英語表現の誤用や勘違いのしやすい用法についての解説と用例が網羅されています。

 

実のところ、英文ライティングについて解説しているブログやサイト、翻訳会社のページなども多いですが、これらの多くはこの書籍の内容をベースにして加筆を行っているものです。それであれば、約700ページあるこの書籍を通読しながら理解を深めていくほうが、サイトが飛ぶ恐れもなく着実に積み重ねをしていけると考えられます。

 

なお、この書籍は英訳者向けの本ですので、和訳をメインにする方にとっては優先順位は下げて大丈夫です。

 

⑦翻訳ツール大全集

翻訳ツール大全集

最後に拙著を紹介するのは気が引けるのですが…

 

特許翻訳をする上で、今後必ず使えるようになっておく必要があるのが、TradosやmemoQ等の翻訳支援ツール(翻訳ソフト)です。

私が翻訳支援ツールを使うきっかけになったのがまさに特許翻訳で、当時はこのようなまとまった書籍も当然存在せず、サービスプロバイダーに振り回されてあれこれ大変な経験もしました。

 

翻訳支援ツールは、実際に使いながら手に馴染んでくる道具ですので、ゼロから使い始める場合に使い方が分からない、という場合は、この書籍を手元に置いておくと心強いこと間違いなしです。

 

「翻訳ツール大全集」はPDF版でもご購入頂けます(こちらのほうが、書籍内検索がしやすいのと、パソコンでPDFリーダーを使って文字や画像をはっきりと読めるのでオススメです)。

PDF版の「翻訳ツール大全集」のご購入は以下のページより可能です。

http://jiyuugatanookite.com/lp/daizenshu/

 

まとめ

今回は、自分がこれから特許翻訳に参入するなら、という仮定で、真っ先に揃えておきたい書籍を7冊ピックアップしました。

条件的に「どの分野の専門になるのか」を決めていないので、分野毎の学術書や専門書は取り扱いませんでしたが、これらの書籍についても今後折を見て紹介していければと思います。

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