今回は、「科学論文の英語用法百科」(第1編)を参照して、「based」と「on the basis of”の違いについてまとめていきます。
この2つの言葉ですが、私も英文をチェックしていて、あるいは自分で日本語を英語に訳すときに、どちらがいいのか分からなくなることがあります。
高校時代に受験英語で勉強したとは思うのですが、相当理解があやふやになってきているので、いま一度、ここに整理しておきたいと思います。
basedの正しい用法・間違った用法
“based”は、
・受け身形(受動態)
・過去分詞(名詞を修飾)
の2つの用法で用いるのが正しく、これ以外の使い方は文法的に間違っています。
この書籍では、特に多い間違いとして「basedが動詞を修飾する副詞として誤用される」ということが挙げられています。
まずは、正しい用法はこちら。
– Our calculation is not based on Eq. (17) itself.
– We employ the standard prescription based on perturbation theory.
– Equation (6) is interpreted, through consideration based on Eq. (1), as the effective action.
– This method is also free from most astronomical ambiguities, because it is based upon geometrical relations.
– The original formulation for the gauge theory based on NCG is sometimes inconvenient.
– These three schemes are based on the same assumption.
– It is quite reasonable that the present model based on the mean field picture does not yield a good fit.
重要なのは、”based”は、(多くの場合、その後に”on” “upon”を伴って)、be based onという動詞(受動態)として、又は(名詞)based on …という、名詞を修飾する過去分詞として用いられる、ということです。
これに対して、”based”の間違った用法としては、”based (on/upon)”で始まる独立した節を作ってしまい、これによって”based”が主節の動詞を修飾してしまう、というものです。
あまり、誤用例をそのまま記載するのは個人的によくないと思っているので(変な表現を目にしてしまうと、それが蓄積されて感覚がおかしくなると思うので)、文章の骨格だけを抜き出すと、
Based on …, we concluded that … .
のような表現です。
この、文頭にある”Based on”から始まる節が文法的に間違っていて、”based”をこのように用いてしまうと、本来過去分詞が修飾できない動詞を修飾してしまうことになります。ここでは、”based on”以下のもの(この節)が、「結論が下された」という動詞を修飾しているのですが、これは文法的に間違っている、ということです。
これは何も、文頭にくる場合だけではなくて、”based on…”という表現が独立した節を形成してしまうこと自体が、間違っている、ということになります(”We concluded that…, based on … .”といった表現も、同様に間違っているということです)。
では、なぜこういう間違いが多発してしまうのか、というと、恐らく”based (on/upon)”と似た表現である、”on the basis of”という表現が存在するからではないか、と思われます。
on the basis ofの正しい用法・間違った用法
非常に単純に言えば、”on the basis of”の正しい用法は、”based”の対をなしたもので「動詞を修飾する」というものです。つまり、こちらは”based”とは違い、この表現から始まる節を作ることができます。
「百科」に掲載されている正しい典型例としては、
– We conclude on the basis of these results that m1 is neither the largest nor the smallest element of Sm.
– We constructed a new theory on the basis of the experimental findings presented in Ref. [2].
– On the basis of this reasoning, we identify the first of these solutions with the behavior observed experimentally.
– Ultimately, the validity of these results rests on the basis of the dimensional analysis given in the previous section.
これらはいずれも、”on the basis of”が動詞を修飾しています。
一方、間違った用法として多く見られるのは、”based”の逆で「名詞を修飾する(過去分詞のような用法で用いられる)」ものに加えて、”in terms of/with respect to”のような意味を表すために誤って用いられている場合、そして”using”の同義語として用いられている場合、が挙げられています。
例えば、
– [1] We have introduced a new theory on the basis of conventional XXX theory.
– [2] In this paper, we examine this point on the basis of the XXX theory.
などです。
[1]については、on the basis ofではなくbased onを用いるのが正しく、なぜなら、on the basis ofを使うと、修飾被修飾の関係が「XXX理論に基づいて、(新しい理論を)導入した」という意味になってしまい、based onだと、修飾被修飾の関係が「XXX理論に基づく(これを土台にして生み出した)新しい理論(を導入した)」になるからです。
(まあ、この文章についてはどういう分野でどういう脈絡で用いられているか、によって適切な表現は異なると思うので(”on the basis of”が適切な場合もあるように思います)、この文章だけで判断できるものではない、とは思っていますが。)
[2]については、usingを用いるのが正しい、と書かれています。なぜか、というと説明が難しいですが、on the basis ofというのは、(この本にも書かれていますが)日本語の「~に基づいて(基づいた)」よりも、より論理的に厳密な関係にあるときに用いられる(つまり、意味合いが限定的)ので、「この理論を土台にして、この点を調査する」というニュアンスは不適切、ということなんだと思います。
確かに、on the basis ofは、”basis”という言葉が使われていることからもイメージできるように、元となるものを「踏まえて」、次のものに繋げる、というイメージがあるのではないか、と思います。
[2]の例では、theoryはpointを導き出すための土台とはなり得ない(むしろ、theoryは単なる「手段」でしょう)ため、usingを用いるのが適切だ、ということなのでしょう。
まとめ
“based (on/upon)”と”on the basis of”の2つの表現は区別がし辛いかもしれませんが、文法的な用法の違いと、ニュアンスの違いを理解することで適切な使用ができるのではないか、と思います。
日本人が間違えやすい英語の用法について網羅されている「英語用法百科」は、こちらです。
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