このブログをご覧の方の中には、これまで理系の専門分野をお持ちでなかったり、知財関係の実務を経験されることなく特許翻訳者になった方、あるいは特許翻訳者を目指されている方も多いのではないでしょうか。
かくいう私も、高校で勉強した化学Iの基本的知識をベースにして、非理系でメーカーや知財会社で仕事をすることなく、これまで数年間特許翻訳の仕事に携わってきました。
ただ、これからも長く特許翻訳の仕事を続けていくのであれば、どんな風に企業が特許を出願して、特許を取得するまでにどんなプロセスが存在するのか、どんな縛りがあるのか、ということについて一通り流れを知っておいたほうがいいのは間違いありません。
特許翻訳というのは「知財業務」の一つの構成要素をなすものであって、この翻訳がひいては審査の結果を決めたり、中間処理に関係してくると言っても過言ではありません。
もちろん、それらを見据えて明細書を専用に書き換えたり、請求項が別の国での出願に適している表記なのかどうかを調べてリライトする、というのは特許翻訳者が行う仕事ではないかも知れません。
しかし、あなたが普段翻訳している書類が、その後どんな場所でどんな人に調査されて、特許を取りたいと考えている企業にどんな影響を与えるのか、ということを知っているか知っていないかでは、仕事に取り組む姿勢や、疑問点が出てきた場合に取引先(翻訳会社)に問い合わせる内容も変わってくるでしょう。
今回はそんなあなたに、私がオススメする本を一冊紹介します。
それは、KS語学専門書の「特許翻訳の実務~英文明細書・特許法のキーポイント」です。
特許翻訳の実務 英文明細書・特許法のキーポイント (KS語学専門書) 新品価格 |
この書籍は、特許翻訳者として知財業務に長らく携わっている方が書いたもので、
・特許翻訳者になるための勉強方法
・特許翻訳の実務の流れ(どんな組織が関係しているのか)
・特許翻訳をする際に知っておいて損のない特許法
・審査基準についての基礎知識
・請求項の書き方やその種類
・更には中間処理業務について
まで、特許翻訳を主とするベーシックな知財業務や知識が一通り網羅されています。
特許翻訳に携わっているなら必ず一度は耳にする「逐語訳問題」や、この著者が普段参考にしている書籍や辞書、あるいは分野毎の請求項の書き方の規定(ソフトウェア分野や、用途発明と第二医薬用途、リーチ・スルー・クレームとプロダクト・バイ・プロセスクレーム等)についても詳しく書かれているので、数年間特許翻訳の経験をお持ちの方であれば、これまで仕事で個別に調べてきた内容をまとめて理解、復習することもできます。
逆に言うと、(これまで知財系の仕事に関わったことがなく)これから特許翻訳者を目指す人には、内容が理解しづらいのですぐに購入する必要はないと言えます。
内容の多くは、すぐに仕事で活用できるものとは言えませんが、請求項の訳し方や記載方法といった内容は、次回からの仕事で訳し方や読み方に意識を払って工夫ができますし、時間とお金に余裕がある間に地道に勉強するのにうってつけの書籍と言えます。
筆者が日英翻訳を主とされているのでその話が多く出てきていますが、逆の言語方向でも参考になる話ばかりなので、手元に一冊揃えておかれることをオススメします。
※紙媒体とKindle版の両方で入手できますが、Kindle paperwhiteで読むと文字の拡大縮小ができないので、パソコンやKindle Fireなど、大画面で読むのが目も疲れずに効果的です。
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