“compared to/with”と”as compared to/with”の違い、きちんと理解できていますか?

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英訳された日本語明細書を読んでいていると、”, as compared to”が使われていることがよくあるんですが、どうも日本語と照らし合わせて読んでも、英文だけをざっと流し読みしても、文章の接続に違和感を覚えることが多いんですよね。

 

かといって、”compared to”に(asを省略して)表記を改めれば問題は解決するのか?と言われると、そういう風に読み替えても文章(節)の繋がりがよく分からない、ということもあるので、最近このブログで紹介している「科学論文の英語用法百科(第1編)」を引っ張り出してきて、該当する章を何度も読んでみました。

 

 

結論から言うと、一読しただけではこれらの違いを理解するのは簡単ではないのですが、何度も用例を読みながら、構造の違いを見極めることで、以前よりはきちんと違いを理解できるようにはなる、というくらい、ややこしい意味合いの違いを持っているようです。

 

 

compared toを用いるケース

まず、本書では以下のような説明がされています。

compared to/withを使用する場合、比較されるのはcomparedによって修飾されている名詞と、前置詞to又はwithの目的語である。

(英語の語順など、一部引用主が変更)

そして、この本で最初に出てくる2つの用例がこちら。

– (1) Fractures in gels propagate very slowly compared with those in solid materials.

– (2) In this case, the size of the Wilson loop is large compared with the typical size of the insulation.

 

また、今回テーマにしている内容とはややずれる内容ではありますが、本書には加えて、compared to/withを用いる際の注意点として、

ある形容詞又は副詞の意味が、compared to/withのような表現により限定されている場合には、その形容詞や副詞は比較的な意味ではなく、絶対的な意味を示さなければならない

とも書かれています。つまり、上の(1)では、very slowlyをslowerという比較級で、(2)ではlargeをlargerという比較級で表現することはできない、ということですね(比較級を用いる場合は、compared to/withではなくthanを使う必要がありますね)。

 

この章の説明は他にもあり、その説明では「このような分詞節が果たせる役割は形容詞、又は副詞の意味を限定するだけだ」みたいなことも書かれているのですが、正直な話、英語を読んで持つ違和感をシステマチックに日本語で表現されても、私は皮膚感覚で理解できない………ということで、続いて、as compared to/withの正しい用法を見ていきたいと思います。

 

(なお、compared withとcompared toの違いについては、compared withは相違、compared toは相似の描写において用いるのが望ましい、という説明がなされています。

 

as compared to/withの使い方

本の中で出てくる例文はこちら。

–  (3) The strength of the interaction increases very rapidly in the present case, as compared with the case investigated above.

– (4) There are several practical advantages of this simplified method, as compared with the more mathematically rigorous method.

※文章の前に付けた番号は便宜上変更

 

その上で、上記(3) (4)のas compared withを共に、compared withに変更すると、どうやら違和感を覚えてしまうと思います。

 

では、(1)~(4)を比較すると、一体何が違うのか?という話なんですが、これを日本語で論理的に説明するのは、初見ではできない人も多いんじゃないかと思います。

 

なお、「用例百科」にはどういう説明がされているのか、というと、

すなわち、as compared to/withが、異なった場合を、それぞれの場合を特徴付ける要素(量、性質、現象、実態など)について比較するのに対し、compared to/withは、そのような要素事態を述べる。

というものなんですが、(この前にも、もう少し文法的な説明があるのですが)これを読んだだけで、compared to/withとas compared to/withの違いを論理的に理解できるのか?と言われると、否なような気がします(少なくとも私は、理解できませんでした)。

 

というわけで、どうやって違いを理解するのか、という話なんですが、(3)の文章を、as comparedではなくcomparedを用いた表現に変更することは可能なので、それに取り組んでみることにしましょう。

 

–  (3) The strength of the interaction increases very rapidly in the present case, as compared with the case investigated above.(再掲)

– (3′) The strength of the interaction in the present case increases very rapidly compared with that (the strength) of the case investigated above.

 

確かに、これだと(3′)を読んでも特に違和感は持たないかと思います。

 

comparedとas comparedの違いは、「主題と比較されるものの関係性」の違いではないか

(3)と(3′)を比較するとあぶり出されるのは、「主題どうしが比較されているのか、主題とは別のものが比較されているのか」という違いではないか、と思います(断定を避けた言い方になっているのは、ここからの話は本に書かれておらず、私なりの表現を使って説明をしているからです)。

 

まず、(3)について見てみると、as compared withの後に出てきているのはcaseですから、この文では、主題(文章のテーマ)は2つのcase(s)なんですが、ではその2つの何が違うのか、というと、(caseの内容と言ってもよい)strength of the interactionです。

 

では、(3′)ではどうなっているのか、というと、compared withの後にあるのがthe strength (that)になっていますから、この文章では、”the strength of the interaction in the present case”と、”the strength of the case investigated above”の2つを比較していることになります。

 

(3′)の場合、この文章での主題(テーマは)は、caseではなくstrengthと言えます(caseはofによって、strengthを修飾しているので、主題であるとは考えづらいです)。

 

「用法百科」では、「2つの異なる場合の、それらを特徴付ける要素(as comparedで比較するもの)」と「要素自体(comparedで比較するもの)」、という説明になっているのですが、「要素」という言葉を使うと、なんだか特許明細書の「構成要素」みたいな意味合いをどうしても持ってしまうので、「主題」という言葉を使ったほうがいいのではないか、と思います。

 

 

特許明細書で用いられる可能性のある表現を考えてみる

では、(3)と(3′)で抽出した違いを踏まえて、特許明細書でこれら2つの表現を使って、日本語で書かれた文章を英語に訳す際に実際にありそうな場合を考えてみます。

 

– (5) The elasticity of the resultant compound following the procedure in Example 5 is high compared with that of the resultant compound following the procedure in Example 8.

– (5′) The elasticity of the resultant compound following the procedure in Example 5 is high, compared with the compound following the procedure in Example 8.

 

 

いくつも例が出てこないのでとりあえず一例だけですが、comparedとas comparedの違いについての解説は、インターネットを探してもあまり出てこないので、非ネイティブの視点から論理的に解説がされているこの「用法百科」は重宝しますね。

 

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