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特許明細書における「又は」と「若しくは」の使い分け

明細書

前回の記事では、法律用語としての「及び」と「並びに」の使い分けについて見てみた。

今回はそれに対応して、「又は」と「若しくは」の使い分けについて見てみよう。

これらの接続詞も、日常(口語)ではあまり使わず、「お堅い」雰囲気が出ているのは間違いないが、
平たく言うと「~か~」という、選択を表す接続詞である。

そして、前回の記事をお読み頂いているあなたには気づいて頂けると思うのだが、

そう、これらの接続詞の違いも、要するに「階層の違い」に応じて使い分けるのだ。

ただ、「及び」「並びに」の場合と違うルールがあるので、そこには注意が必要だ。

「又は」と「並びに」の使い分けのルールというのは、「及び」「並びに」の場合と同様に、

・全てが同一階層の概念で並列している場合は「又は」を用い、

・「又は」だけで全てをまとめられない、複数階層の概念が存在する場合に、「若しくは」を用いる

のだが、気をつけたいのが、これらを使う順序である。

大事なのは、複数の階層を繋ぐ場合、最も大きい階層どうしの接続には「又は」を用い、それ以外の階層どうしの接続には、全て「若しくは」を使うということで、「及び」「並びに」の場合と「順序が逆になる」ことを理解しなければならない。

 

例を挙げて見ていこう。

まず、単一の階層を一まとめにできる場合。
これは簡単で、「又は」を用いればよい。

「メタン、エタン、プロパン、又はブタン等のアルカン」といったものが、そうだ。

次に、異なる2つの階層を繋ぐ必要がある場合。

これは、より大きなくくりに「又は」を使い、小さなくくりには「若しくは」を使うのであるから、

「エタン、メタン、プロパン、若しくはブタン等のアルカン、又はエチレン、メチレン、プロペン、若しくはブテンなどのアルケン」というような使い方をするのが正しい、ということになる。

これが、「及び」「並びに」の場合だと、「及び」のほうが小さな階層になるので、順序が逆になる、というわけだ。

そして、異なる3つ以上の階層を繋ぐ必要がある場合。

これも、「又は」を最も大きな接続だけに使う、というルールに忠実に則ればよい。

即ち、例えば

「エタン:メタン:プロパン:若しくは、n-ブタン若しくはイソブタン等のブタン:といったアルカン、

又は

エチレン:メチレン:プロペン:若しくは、1ブテン、cis-2-ブテン、もしくは2-メチルプロペン等のブテン:といったアルケン」

というような使い方となる。

ここでは、エタン、メタン、プロパン、ブタンが1つの階層なのだが、

ブタンの中に、更に入れ子で「n-ブタン、イソブタン」という具体例が出てくる。

そして、アルカンとアルケンが対比で使われており、これらが一番上位概念となっているために、
まずこれらの接続に「又は」を使い、残りの接続は全て「若しくは」となる、というわけだ。

(※ブタンの異性体はn-ブタンとイソブタンの二種類しかないため、「等」を用いる必要性は厳密に言えばないのだが、あくまで語調も含めた便宜上の表記ということでご理解頂きたい)

そして、「及び」「並びに」の場合と同じように、「又は」も「若しくは」も、共に英語では「or」なのだ。

そのため、英語から日本語に訳す際は、orがどこまでを含んでいるのか、ということを正確に把握して内容を理解する必要がある。

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