昨日書いた記事では、初めて受験した弁理士短答試験にまつわることに対する自分の考えを書き連ねました。
今回は、もう少し具体的に、勉強を始めた2021年1月から受験までの間に取り組んだ勉強法や揃えた書籍などについて、まとめていきたいと思います。
そもそも勉強期間半年で短答に合格することはできるのか?
この記事を書いている時点で、まだ特許庁からの正式な解答は公開されていませんが、予備校の速報の情報に基づいて自己採点をした結果、自分の得点は以下のようになりました。
特実:9/20
意:6/10
商:4/10
条:2/10(足切り)
著不:4/10
合計:25/60
弁理士短答の合格基準は、
・5分野の全てで4割以上の得点率
かつ
・総得点率が65%以上(39問以上正解)
というものになっています(後者に関しては、その年の難易度によって1点程度基準が増減することがあるそうです)。
これを踏まえて、今回の自分の結果を「半年の勉強でこれだけしか取れなかった」と捉えるのか、「半年の勉強でこれだけ取れるようになった」と捉えるのか、微妙な話ではあるんですが、「半年猛勉強をしたら短答に合格できるのか?」という質問に対しては、「現実的ではないけれど、勉強にフルコミットしたら不可能ではないと思われる」という答えが、この半年間勉強にある程度時間を注いできた自分の、現時点での答えです。
ちなみに、僕が弁理士試験のことを調べ始めたのが2020年の年の暮れで、年明けにいくつかオンライン予備校の無料講義を視聴して、どの予備校を利用しようかと考え始め、受験と受講を決めたのが2021年の1月20日。なので実質、ギリギリ半年に達しない期間で、文字通りゼロから勉強を始めて、短答で25点(得点率で言うと4割強)取れるようになった、ということになります。
なお、僕自身が会社勤めをしているわけでもなく、フリーランスとして仕事をしていることもあり、会社勤めをしている人よりは勉強時間の確保はしやすかったと思います。また、結婚もしていないので、起きている時間を全て自分のことに費やすことも可能ではありました。
ただ、現実問題仕事もしていましたし、勉強を始めた1月後半~4月前半は仕事がそれなりに忙しかったので、「勉強一筋」で毎日を過ごしてはいませんでした。
こういう環境の中で、全くのゼロから勉強を始めた(勉強方法については後で詳述)のですが、
・勉強以外にやることがない(=リソースを全て弁理士試験に投入できる)
・弁理士資格を得ることでスキルアップや年収増が確実に見込める(例えば、現時点で無職だけれど資格を取る(短答に合格する)ことで特許事務所にとりあえず転職できる、など)
の2つの要件が揃っていれば、半年間猛勉強をしたら、短答の合格は不可能ではないと思いました。
(ただし、文字通り「猛勉強」なので、起きている間は基本的に全ての時間を勉強に費やす、ということをした場合の話です。)
僕の場合、正直な話をすると弁理士試験の受験を思い立った頃には、外内翻訳を主とするフリーランスの仕事でそれなりの年収がある(ここ数年で100万円単位の差はありますが…)のと、これまで貯金をしてきたのもあってそれなりの額の貯金がある、という要因もあって、勉強を始める前後で「弁理士資格を取ることで、こんな素晴らしい未来が待っている」ということがそこまで明確にイメージできなかった、というのが、勉強を進める上で一番の足かせというか、ネックにはなっていました。
ただ、自分みたいなキャリアの背景を持っている人はごく少数、というかほぼいないはずなので(今年の弁理士試験の受験者で、自営業の方は100程度、割合で言うと3%弱)、「短答合格という資格を持つことで転職を有利に進めよう」といった考えを持っているのであれば、ガチ勉をすることで半年で短答合格、というのは不可能ではないとは思いました(多分今まで、1年間の勉強で通った人ならまだしも、半年で通った人はいないと思いますが)。
受験勉強を始めるにあたって揃えた勉強道具
ここからは、実際に僕が勉強を進めるにあたって手に入れたものをまとめていきます。
①オンライン予備校「資格スクエア」の申し込み
勉強を始めるに当たり、完全独学はいくら時間があっても無理と判断して、資格スクエアを利用しました(金額はおよそ25万円)。
この「2022年弁理士試験コース 短答・論文パック」を使って、講義を視聴しながら過去問演習とWeb問題集演習(内容は過去問と同じ)を活用して、短答対策として「問題が解けるようになる」ことを目指して勉強を進めていきました。
②四法対照の購入
短答受験で必ず必要な書籍は、この「四法対照」でしょう。
弁理士試験で対象となる法域は、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、それに各種条約と著作権法、不正競争防止法ですが、これらの条文が全て網羅されているのが、この四法対照です。
この四法対照の何が便利かというと、特に四法(=特実意商)間で、同じテーマについての条文が同じページに載っているので、串刺しで確認できる、というのがあります。
普通に勉強を進めると、まず特許法、次に実用新案法、それから意匠法………のように進めていくわけですが、このときに、意匠法で特許法の条文を準用している、ということが多くあります。
その際に、いちいち分厚い法令集を繰って四法横断をする必要なく、この「四法対照」で調べることで、調査と理解の負担を減らせるのが大きいですね。
また、四法対照は余白も多いので、その部分にメモを残すことで、自分だけの「オリジナル参考書」にすることも可能です。
実際に僕は、こんな風に使っていました。
③四法の青本(製本されたもの)
四法対照と合わせて必須とも言えるのが、青本(工業所有権法逐条解説)です。
その名の通り、各種法律の条文の解説を(条文の記載と合わせて)している資料で、短答の問題では、この青本(の解説部分に記載の内容)からも出題されることがよくあるので、こちらも条文理解を進めるための参考資料兼短答出題範囲、として携行必須の資料です。
なお、青本そのものは特許庁のホームページでデータとして入手できるのですが、附則も含めて膨大なページ数となるので、これをそのままデジタル資料として活用するのは得策ではありません。
僕は、ヤフオクで青本を紙媒体にして発送してくれる製本業者(?)があるのを見つけて、そこで四法全ての青本を製本してもらいました。
手元にある紙版の青本は、こんな感じですね。
きちんと表紙も付けて製本してもらったので、便利なことこの上ありませんでした。
青本の活用方法としては、過去問を解くときに、最初解答解説を見てもちんぷんかんぷんなことが多く、
・解答解説で触れられている条文と青本での解説を参照する
・解説の中に青本の記載が掲載されていたら、そこを都度参照する
という風にしていました。
※青本を最初から通読する、というのは現実的ではないですし、恐らくほぼ全員が面白いと思わない作業になるので、あくまで「言及されたら参照する」という使い方がいいかと思います。
どうやって勉強を進めたか
受験勉強を始めてから半年の間で、どういう風に進捗を重ねていったのか。大まかにまとめると、以下のとおりです。
①受講開始直後:基礎講座の消化を進める
勉強を開始してすぐ、資格スクエアの基礎講座の動画を視聴して、とりあえずどういう内容が弁理士試験で問われるのか、工業所有権法四法で規定されている内容について理解を進めていきました。最初は当然ながら右も左も分からないので、「拡大先願」とか「優先権」とか、条文の規定とその効力について理解できるまでにすごく時間がかかりましたね。
②受講開始直後から短答過去問も解き始める
今回の勉強の目標は「とりあえず今年の短答受験」だったので、短答の過去問を解かないと始まらない、ということもあり(時間も半年しかないので)、勉強を始めてから4日後には短答過去問を1つずつ解き始めていました。
ただ、当初思ったより過去問は全然解けませんでした。というのも、当初の目論見では「基礎講座で勉強した分野の過去問を解けば、予習→復習、で定着が進むだろう」と思っていたのですが、実際に過去問を解いてみると、まだ勉強していない分野の内容についても、同時に触れられていることが多いんですよね。
例えば、特許法の「手続の補正」について基礎講座で勉強をして、その分野の過去問を解いたとしても、「手続の補正」と関係のある「拒絶査定不服審判」「前置審査」「出願の分割」といった別の手続や、それに関する条文の内容も問われることが多く、特に最初は「問題を読んでも勉強していないことばかりだし、そんな条文知らん」と、泣きたくなるようなことしかありませんでした。
このときは、嘆いてもどうしようもないので
・過去問解説に出てくる条文の参照
・同時に該当する条文の青本参照
の2つの勉強を延々と続けました。そのため、1つの過去問(5枝)を確認し終えるのに10分以上かかり、1時間で6問解き進められるかどうか…といったペースでの勉強の進み具合でした。
③各法律の音声聞き流し
3月に入ってから、四法+条約の音声(オーディオブック)を購入してiPhoneに入れ、散歩のときに聞き流すようにしていました。
結果論ですが、これはあまり効果がなかったと思います。というのも、音声を聞き流していても歩いていると他の考えごとをしてしまって、そんなに音声が頭に入ってこなかったからです(とかいいつつ、4ヶ月くらい毎日、どれかの条文の音声を聞き流していましたが)。
④Web問題集で一問一答形式でアウトプットの練習
4月に入った頃から、資格スクエアのWeb問題集を使って、一問一答形式で問題を解くようにしていきました。
一問一答の場合、「その問いは正しいのか、それとも間違っているのか」を判断する必要があるわけですが、これが存外、勉強法としては一番効果があったと思っています。
というのも、短答の問題は「5枝のうちから1つ選ぶ」問題と、「5枝のうち、該当するものの個数を答える」の2種類があるわけですが、前者の問題は、他の選択肢との兼ね合いで答えを導き出せる場合があるといえばあるのですが、後者の場合は、枝1つ1つの真偽を判断できないといけません。そして、この訓練は、一問一答形式で演習をすることでしか身につかないのではないかと思います。
結果的に、この勉強を始めてから、5月に入ったくらいだと思いますが、過去問を解く際にも「枝1つ1つの内容が、条文に照らし合わせると正しいのか正しくないのか」ということを意識し始めることができ、理解度も勉強開始当初よりも明らかに深まっていった、と自分でも思えました。
まとめ
以上、今年の1月から勉強を始めて半年で短答を受験した自分の勉強法や、勉強をするに当たって気を付けたことなどをまとめました。
結果的に、半年で短答合格は(自分の環境では)無謀なことだったとは思いますが、逆に言えば「半年でゼロから勉強を始めてどれくらいの完成度まで進められるか」ということがざっくりと知れただけでも、大きな収穫になったと思っています。
既にフリーランスとして仕事をある程度続けていると「自分の勝てる場所で戦う」「同一直線上で勝負しない」と言った考えも持ちながら仕事をしているので、そういう考え(戦略)も大切にしながら、今後どのように生きていくかについても考え続けていく必要があるな、と改めて思いました。
※勉強は、完全な独学ではなく、オンライン予備校資格スクエアを利用して進めました。詳しい解説はこちらの記事で。
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