フリーランス外内特許翻訳者が弁理士短答試験の勉強をして学んだ5つのこと

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2021年の1月に、にわかに弁理士試験の勉強を始めて、半年で短答受験、結果は予想通り不合格、となった自分ですが、結果だけを見ると「ボロボロ」でしたが、自分の今の仕事に役立つ、取り入れられる知識や考え方も、当然ながら短答の勉強をする中でありました。

 

今回はそんな、「短答の勉強で学んだこと」を5つ紹介したいと思います。

①特許公開公報、特許公報、出願公告などの違い

これが外内案件と直接関係することではないのですが、たまに受ける内外案件や、参考に読む日本語明細書の「参考文献」の欄に出てくる「特許公開公報」「特許公報」「出願公告」といった書類名の違いが昔から全然分かっていませんでした。

 

特に、出願公告については調べてもよく分からず、なんなんだこれは………と思っていたのですが、弁理士試験の勉強の中で青本を読んでいるときに、かつて日本の特許制度には「出願公告」という制度があり、その際に出された書類のことを指すらしい、ということを知ったんですよね。

 

他にも、特許公開公報は、出願審査請求をせずに公開されたもの(特64条)であり、一方で特許公報は、出願審査がされて発行されたもの(特64条の2)、ということも、特許法の条文を読んで制度を知ってから理解することができました。

 

こういう大まかな制度について知れただけでも、弁理士試験の勉強をしてよかったな、と思いました。

②外国語出願(翻訳した明細書)の出願時のおおまかな手続

外内案件というのは、英語で書かれた明細書を日本でも出願するために当該明細書を日本語に訳す仕事なわけですが、どういう流れで明細書を翻訳して出願して、権利付与がされるのか、といった流れを大まかではありますが掴めたのも勉強になりましたね。

 

とりあえずは

・第36条の2第2項の外国語書面出願の出願人は、前項本文の規定にかかわらず、同条第1項の外国語書面及び外国語要約書面について補正をすることができない(特17条第2項)

・特許明細書、特許請求の範囲、図面について補正の制限規定(特17条の2第2項~第6項)

に規定されている、補正の制限について大まかに知ることができたのは良かったです。

 

いつだったか、仕事先の勉強会で、「翻訳した明細書に誤訳があった場合は誤訳訂正書を提出しないといけず、その負担が大きい」という話があったのですが、その話を聞いたときは弁理士試験の勉強をしていたので、言っていることがなんとなく分かった、というのが、この勉強をして良かったな、と思えた瞬間ですね。

 

この手続の制限を知ってからは、今まで「仕事で誤訳はしないように」と考えていた理由を具体的に知ることができて、より質の高い仕事をするように意識を変えることができました

 

③公用文における複合語の送り仮名の規則を学べた

特許明細書を翻訳していると、よく「組み合わせ」や「組み換え」といった複合語が出てくるのですが、実はこういう言葉の、公文書での正しい表現は内閣府の訓令で決まっているんですよね。

公⽤⽂における漢字使⽤等について

こういう規則があるのは、他でもない青本と工業所有権法の条文を読んで気づいたのですが、それ以来、普段の仕事でも、クライアントの指示や規則で定められていない限り、名詞で用いる際は「組合せ」「組換え」と書いて、名詞で用いる際は「組み合わせて」「組み替えて」と書くようになりました。

 

今では、レビューの仕事をしているときに、名詞で用いるときに「組み合わせ」と書かれているのをみると、もやっとしながらスルーするようになりました。笑

④特許法の条文で用いられている独特の表現を用いるようになった

勉強を進める中で、条文そのものと青本の記載を読むことが多くなったのですが、その中で気になった表現、というか、「こういう表現をすると法令文書っぽくなるのか」と思ったものが2つありました。

1つめは、例えば特許法第16条には

未成年者(独立して行為をすることができる者を除く。)又は成年後見人がした手続は、(中略)本人が追認することができる。

と書かれているんですよね。

ここで、太字で表した、「文の途中に用いられている括弧における閉じ括弧の前の句点」は、これまで目にしてきた色んな文章の中で始めての使われ方だったんですよね(今までは、閉じ括弧の前に句点はありませんでした)。

 

この表現の仕方は正直「使えるな」と思って、勉強を始めて以来、普段の仕事で、使える場所では使うようになったんですよね。おかげで、依然よりも若干読みやすい訳文を作ることができるようになった気がします。気のせいかもしれませんが。

 

2つめは、法律の条文では、基数詞が用いられていない、ということですね。

基数詞というのは「1個」「1枚」「1膳」といった、物の個数を数えるための単位なんですが、特許法や意匠法、商標法の条文を読んでみると、必ず、どんな場合でも「1以上」という表現がされています。つまり、基数詞が使われていません。

 

これ、以前から気になっていたのは、外内案件の勉強で使う、翻訳会社や特許事務所が出している書籍やネット上の資料を読んだときに、ときどき、こういう風に基数詞が欠落して使われている表現があったんですよね。そのときは違和感しかなくて、「いや、普通”つ”とか付けるやろ」と思っていたのですが、条文を読み始めてから「なるほど」と理解することができました。

 

それ以来、この表現を使っても支障がない場合は、外内案件の翻訳の際に、基数詞を使わずに訳出することが多くなりましたね。

 

⑤PCT条約の内容がややこしすぎ

最後はこれですね。自分が一番仕事でお世話になっているはずのPCT(特許協力)条約の内容がややこしすぎるのと、短答の内容も難しすぎ、というものです。

 

PCTは、短答では条約10問のうち5問を占めているのですが、そもそもPCTの条文数が多いことと、おびただしい数の附則も参照するので、到底理解できるものではなく………。厳密にいうと、時間をかければ理解できるんでしょうが、短答の条約10問のうち5問を正解するためにこの分野を勉強できるか、というと………。自分は全くやる気が起きません(笑)

 

勉強を始める前は、普段やっている仕事が外内のPCTなので、ここが一番勉強でとっつきやすいところかな、くらいに思っていましたが、蓋を開けてみたら全然違った、というのが、ただ単に驚きでした。

 

 

まとめ

今回は、弁理士試験の短答を勉強するなかで学びになったことを、「フリーランスの外内特許翻訳者」という視点からまとめてみました。

 

正直な話、資格は取らなくても(取れなくても)、普段の仕事に取り入れられる知見を得られた、というだけでも、弁理士試験の勉強をして良かったとは思います。

 

また、これまでも特許関連の書籍を読んで、自分の仕事に取り入れられないかについては考えていましたが、特許法の内容を知らないと理解しづらい話も多くあったので、そういう書籍を読む、あるいは専門家の話を聞く上での素養というか、土台をほんの少し作ることができた、というのも、勉強によって得られたことだと考えています。

 

資格を取ることがなくても、勉強をする中で得られた学びを血肉にすることはできるし、ゴールは資格取得でなくてもいいのかな、と考えることで、逆に気楽に勉強を続けられるのかも、と改めて思いました。

 

現在弁理士試験の勉強をされている方、あるいは同じように外内、内外案件をすることで知財の世界と関わっておられる方に、参考になれば嬉しいです。

 

 

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