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過去に経験したトンデモトライアル

エッセイ

特許翻訳に限らず、翻訳の仕事をフリーランスとしてやっていくには基本的に、翻訳会社のトライアルを受けて合格しなければいけないわけですが(クラウドソーシングサイトを利用する場合を除く)、トライアルと言っても、まあ会社によって色んなスタイルがあるわけでして、こればかりはある程度場数を踏んでみないと、傾向やクセは分からないものです。

 

ただ、場合によっては「これってトライアルなの?」と思うようなトンデモナイ「試験」が送られてくることも、ごく稀にあります(というか、僕が実際に経験しました)。恐らく、特許翻訳の世界でこういうことはあまりないと思うのですが、世の中にゼロはないので、今後トライアルを受けていく方は参考にして頂ければと思います。

 

トライアルのボリュームはどれくらい?

この話は、僕がまだ、特許翻訳者に転身する前に経験したことなので、特許翻訳の世界でも同じようなことがあるのかは分かりません(上で、「特許翻訳の世界でこういうことはあまりない」と書いたのはそのためです)が、翻訳の種類を問わず、一応「翻訳」という広い括りで考えて頂ければと思います。

 

その当時、ぼくは「来る者拒まず」の姿勢で仕事は受けていたのですが、やはり複数の翻訳会社と取引をして、安定して仕事を続けたい、という気持ちももちろんあったので、ネットで求人情報を探してCVを送っては、トライアルが送られてきたときには全力で受けていました。

 

ただ、その時に応募したある会社のトライアルが、当時の僕でもはっきりと違和感を覚えるほどの「トンデモ」なものだったのです。

 

一般的に、翻訳のトライアルの分量は、英日の場合約600ワード~800ワードと言われています。もう少し前後する場合もあると思いますが、多くても1000ワード程度と考えていいと思います。

 

ただ、その時に送られてきたトライアルはなんと、A4のPDFで確か約20ページ超。トライアルの指示メールには「この文章の全文を、いつまでに翻訳して提出して下さい」と書かれていました。ボリュームははっきりと覚えていませんが、ある文書の最初から最後までを全て訳すもので、1週間やそこらでは対応できないような内容だったということは今でも覚えています。

 

この時、僕は「トライアルの一般的なボリューム」について一応の情報を得ていたので、「これはなんだかおかしいな」と思って、結局「納期と分量の都合で対応が厳しいため、今回は辞退させて頂きます」といってこちらから丁重にお断りをさせて頂きました。

 

トライアルで会社が評価する内容は?

実は、この「辞退メール」を送った後に先方からメールを受け取ったのですが、その中には「この分量の翻訳をトライアルで受けて頂くことで、貴方にやる気があると判断したかったので、非常に残念です」ということが書かれていました(当時のメールはもう残っていないので、実際の文面とは異なります)。

 

ただ、この返信を受け取ったときに、僕が抱いていた違和感は一層大きくなりました。「トライアルはやる気を判断するものなのか?」と。

 

これは、今特許翻訳の分野でトライアルを受けて仕事をしているから分かることもあるのですが、トライアルで判断するのは、言わずもがな「応募者が基本的な内容を理解できていて、実際の仕事を捌くための最低水準をクリアしている」という、極めてロジカルな内容です。

 

例えば、

・その分野、業界で使われている言葉や用語を理解しているか

・原文に誤記や誤字脱字、あるいは論理的矛盾、意味不明な記載があったときに、翻訳者として正しい対処をすることができるか

・指定の期日に指定のフォーマット、方法で成果物を納品できるか

といったことですね。

 

これらはあくまで、「実際の仕事を投げて対応できるかどうかを判断する」ための物差しですから、翻訳会社側としては「戦力になる人員を見極める」という、極めて実利的な観点の評価を重視していることが分かるわけですし、応募者側もこれらの内容は最低限理解しておくべきと言えます。

 

ですから、これは今から当時を振り返って思うことでもあるんですが、やはりトライアルで「やる気」を見るのは見当違いなんじゃないか、と思うんですね。というより、「やる気」という言葉は確かに我々は使いますが、じゃあ「やる気」って何なのか、と言えば、もっと言葉数を増やして説明できないといけませんし、その意味を共通して我々が持っていないといけないわけですよね。

 

実際のところ、一定以上のレベルでトライアルに合格をして、仕事がコンスタントにやってくれば「やる気」の有無には関係なく仕事は捌かないといけませんし(もちろん、休息や勉強も必要です)、やる気なんてものは、そもそもトライアルの時点でも、最初の仕事、あるいは仕事を続けていく中で「この人は仕事を継続的に捌けるのか」ということを判断する際にも、考える必要はない物差しと言うことができると思います。

 

結局、この会社は何がしたかったのか?

今振り返ってみても、結局この会社がなぜ、常軌を逸した「トライアル」を送ってきて(あれは「仕事」で捌く分量です)、そこで応募者の「やる気」を見ようとしたのか、ということはよく分かりません。

 

穿った見方をすれば、トライアルと称して「ただ働き」をさせたかったのかも知れませんし(提出されたトライアルのできが良ければ、それをクライアントに納品する)、もしかすると本当にトライアルとして、翻訳者の素質を見抜きたかったのかも知れません(そうだとしても、全範囲の中から引っかけ部分だけをトライアルに使えばいいとは思うのですが)。

 

いずれにせよ、当時の僕にも、そして今の僕にもこの一連のやりとりからは、相手の本当の意図は見抜けませんでしたが、「何か変だな」という嗅覚と違和感を大切にして、とりあえず変な方向に進まなかったのは良かったことだと思っています。

 

今、特許翻訳者として仕事を続ける中で受けてきたトライアルには、さすがにこんな「代物」はありませんが、特許翻訳に限らず、翻訳のトライアルを受けるときに似たような場面を経験してしまうこともあると思うので、是非今回の話は心の片隅に閉まっておいて下さい。

 

 

ここで書けない話も赤裸々になったセミナー

最後は告知になってしまいますが、2017年3月に東京と大阪で行った「特許翻訳丸裸セミナー」では、ブログなど公の場では書きづらいことも全てお伝えしました。

 

一般販売用のコンテンツでは一部編集をした箇所もありますが、翻訳者がネットには書かない内容も沢山話しているので、レベルアップをお考えの方は是非有効活用して下さい。

 

特許翻訳丸裸セミナーの販売コンテンツや参加者の声は、以下のページにまとめています。

特許翻訳丸裸セミナー案内ページ

 

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