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Wordでの「記号と特殊文字(半角)」の入力方法と、翻訳支援ツール使用時の問題点・注意点

仕事道具

英訳や英訳レビューの仕事をする際に、長きにわたって気になっていたのが、「ギリシャ文字など、半角入力できない文字や記号をどうやって入力するのか?」ということでした。

 

この、英語キーボード(日本語入力をオフにしたキーボード)で、普通にタイピングをしても入力できない文字や記号の中で、特許翻訳で使うものと言えば、例えば

・ギリシャ文字(ω脂肪酸や、αケト酸、μmなど)

・引用符(日本で言うカギ括弧)/“”など

・角度記号(degree for angle)や摂氏記号(℃)

があります。

 

特に、ギリシャ文字については、普通に手入力するだけだと「alpha, beta, omega…」のようにしか入力できず、かと言って普通に表そうとすると、日本語でこれらの読み方を入力して変換する必要がありますが、これだと「全角記号」になってしまいます(英訳の場合、「全角記号は使用不可」という指定があるものが、自分が担当した仕事に限って言うと多いです)。これは、摂氏度を表すときも同様ですね。

 

これまでは、ネットでいちいちググって、ヒットしたサイトで用いられている半角記号(英語コンテンツで使われているもの)を利用していたのですが、さすがに手間がかかるので、他に良い方法はないかと調べていると、どうやら、Wordの機能に「特殊記号」というものがあるようです。

 

Wordの「特殊記号」の使い方

Wordの「特殊記号」は、編集画面の上にあるリボンの「挿入」→一番右にある「記号と特殊文字」→下の「その他の記号」の順にカーソルを移動させてクリックすると表示することができ、ここに出てくる、ギリシャ文字やキリル文字、各種記号は全て、半角入力できるようになっているようです。

(厳密に言うと、ホームの「テーマのフォント」を英語用のもの(centuryなど)に設定すると、これらの文字・記号が半角で入力されるようです)

 

この、「その他の記号」に用いられているものの一例はこちら。

見たことも、これから一生使わないであろう、どこかの言語の文字も沢山収録されているようです。

 

この中にギリシャ文字、ダブルクオーテーションマーク、角度記号(°)が含まれているので、英語を入力する際には、これらの記号を使うことで確実に、全角文字(記号)が含まれていないドキュメントを作ることができます。

 

(摂氏度を表したい場合は、°(半角)+C(半角)をスペースを入れずに繋げます)

 

 

………が、この機能、日英翻訳の仕事をするに当たっては、不十分な機能でもあることが分かりました。

 

翻訳時における「記号と特殊文字」の難点

それはずばり、翻訳支援ツール上では半角表示されないということです。

 

もう少し厳密に言うと、記号と特殊文字を半角で挿入しても、翻訳支援ツール上では全角入力されているように見える、というものになります。

 

(どうやら、秀丸エディタでも同じように、全角記号が入力されているように見えてしまうようです)

 

というのも、Tradosで送られてきたパッケージファイル、あるいは自分で作ったプロジェクトファイルを開いて翻訳を進めると、Wordに挿入した記号・特殊文字をコピー&ペーストしても、Tradosの訳文セグメントでは、あたかも全角のように表示されてしまうからです(全角文字特有の、やや太っちょな表示になります)。

 

また、引用符については、「“”」(Wordの「記号と特殊文字」で入力できる)については、半角記号であるにもかかわらず、Tradosでは全角記号のように見え、「””」(半角キーボードで、Shift+2で入力できる)については、問題なく半角で表示されるようです(厳密に言えば、これらの記号は異なるもののようです)。

 

 

そして更に問題なのが、これらの、全角と半角の区別が付かない記号や文字を、TradosからエクスポートしたWordファイル(訳した英文のみが記載されているファイル)上で個別に検索をしても、区別されずにヒットしてしまう、ということ。

 

実際にいくつか操作してみたのですが、

a part

a part

これら3つの色で表した記号は、一応全て違うもの(正式名称は詳しく分かりませんが、赤色は左ダブルクオーテーションマーク(引用開始マーク)、空色は右ダブルクオーテーションマーク(引用閉じマーク)、黄色はダブルプライム(?))になるはずなんですが、Wordだと、あいまい検索をオフにしても、どの記号を入力しても、全ての結果がヒットしてしまいます。

 

(※Wordで全角入力をする場合、上記の赤色記号は「全角左ダブル引用符」、空色記号は「半角ダブル引用符・クオーテーションマーク」、黄色記号は「全角右ダブル引用符」という名称で、選択できるようになっているのですが、半角入力でキーボードを使って入力できるのは、黄色の記号のみです)

 

ダブルクオーテーションマークの使用において、上の「赤色+青色」のペアで用いるのか、「黄色を2回」使うのかは、確か文化圏によって異なる(アメリカとイギリスで異なる、みたいな)という話だったように思うのですが、少なくとも、WordとTradosを使って、日本語から英語を生成する際には、Wordの「記号と特殊文字」を使うだけだと、確認が非常にし辛い、というか、本当に半角記号なのか、よく分からないことがほとんどです。

 

 

特に、Tradosを使って翻訳をする場合に、パッケージファイルとエクスポートした訳文ファイルの2つを共に納品しないといけない場合、これら2つの入力内容は統一されていないといけないので、「Wordでは、μは特殊記号になっていたはずだけど、Tradosで見ると全角のように見えて、どちらか分からない」みたいな状態になるのは、ワークフローの視点から言うと好ましくないように思えます(同様に、ダブルクオーテーションマークがどうなっているのか、というのも、いちいち確認するのは面倒です)。

 

また実際問題、Wordにエクスポートした訳文を印刷して見直す際に、(レビューの仕事だと特に、自分が訳文入力作業をしたわけではないので)記号や文字が全角なのか半角なのか、というのが分かりづらいことが多いです(しかも、Tradosを参照すると全角にしか見えない)。

 

 

こういうややこしさを少しでも減らすために、翻訳プロセスのルールとして(会社のスタイルガイドの中に)「ギリシャ文字や摂氏記号などは、Wordの「記号と特殊文字」より挿入して、それをTradosにコピー&ペーストすること」のようなルールを明文化しておいたほうがいいのかもしれません。

 

 

まあ、元をたどると、Wordとの互換性を備えた設計になっている筈の翻訳支援ツールが、この機能まで反映できていない、という部分がボトルネックになっている、とも言えるとは思うのですが…。

 

なお、memoQなど他のツールでも、同様の問題が生じ得るのかはきちんと確かめられていませんが、これまでmemoQで対応してきた英日翻訳の仕事を振り返ってみると、「μm」などの記号は、memoQのセグメント内では全角のように見えていた気がします。

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