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技術思想に着目して、様々な明細書にアプローチをする方法

技術思想

ここ最近全くブログを更新できずにいたのだが、仕事を進めるのとは別に、興味を持った分野の資料を読みあさったり、明細書を読んだりしていた。今回は、どのように勉強をしているのかをまとめてみたい。

 

まず、発端はと言えば、以前に記事にも書いた、歯垢染色剤だ。

この時は歯医者に行った後、「どうやって発色するのか?」ということをざっと調べてみた。当時は「pH応答性」というキーワードが頭に引っかかったのでそのようにブログに書いていたが、その後、「光を吸収することによって変色する」という話が出てきたので、そういう資料を読みあさっていた。

 

そこで気づいたのが、ベンゼン等に見られる「共役π電子は、紫外線を吸収する」という話だ。これは以前、有機化学関連でベンゼンの化学を勉強した際に頭に残っていたのだが、ベンゼンだけでなく、ジエンなどのいわゆる「共役系」を持っている化合物は、紫外線波長領域で電子を吸収するようだ。

参考:紫外可視吸収スペクトル(役に立つ薬の専門情報)

 

光を吸収して変色する、というのはつまり、化合物が持っている電子軌道で電子が基底状態から励起状態に、エネルギーを吸収して変化した後、励起状態から基底状態に戻る際に(基底状態のほうが安定だからである)、共役系が複雑であると、エネルギーの放出が複雑になり、別の波長の光が放出される、ということである。

細かい話をするには、電子軌道での電子の移動について理解しておく必要があるのだが、理論化学・物理化学の込み入った話になるので、ネットに公開されている大学の講義資料と思しき資料をアップしておく。

参考:2013年度 有機化学4 (有機機器分析化学)

 

こういう資料を読みあさるにつれて分かったのが、「吸光と発色を上手く利用することで、様々な製品に原理を応用することができる」ということである。例えば、

・発色の原理は、歯垢染色剤のような「発色剤」に使うことができる(=「色の変化」に注目)し、

・吸光の原理を用いて、例えば「紫外線吸収剤」(=いわゆる日焼け止めクリーム)を作ることができる。

(なお、日焼け止めクリームには、今回の原理を利用した「紫外線吸収剤」と、別に「紫外線散乱剤」もあるのだが、これは用いられている原理が違う。恐らく、散乱剤のほうは、化合物の化学変化ではなく、光が媒質を通過する時の反射・錯乱という、物理的原理を用いているのではないだろうか。調べもせずに推測で書いているので言質を取られるとまずいのだが、光の散乱と言えば、ラマンスペクトルを利用したラマン分光法でも用いられるため、そういう繋がりで技術思想・原理を調べていくことはできそうである)

・フタロシアニン等の、共役系を持っている化合物はその発色から「顔料」に用いられる。(これは、「色の変化」に注目しているのではなく、あくまで「もともと発色している」ことに注目している)

というものである。

 

一言で「吸光・発色」といっても、実に様々な側面に注目していることがお分かり頂けるのではないだろうか。紫外線吸収剤は、「光エネルギーの吸収(によって化合物が変化する)」という、物理化学的色合いが強いし、染色剤では「光エネルギーを吸収した後に基底状態に戻る、エネルギー変化」に注目している。顔料では「色(可視光線)が目に見える原理」という、そもそもの原理を使っている。

 

こういう風に色々を勉強をしつつ、実際に明細書も10件程引っ張りだして読んでみた。フタロシアニンの合成方法であったり、紫外線吸収剤であったり、歯垢染色剤であったりしたが、「課題と発明の新規性」の部分だけ丹念に読みつつ、どのような原理が用いられているのかを確認して、後の(具体例などは)ほぼすっ飛ばした。

 

そして、こういう勉強をちまちましていたら、先日は似たような原理を利用した明細書にも仕事で出くわした。これは、「紫外線に当たると変色する」という問題を解決するために、変色しにくい(つまり、光エネルギーの吸収により化学変化を起こしにくい)化合物を用いて材料を改変する」という内容だった(ものすごく抽象度が高い表現になってしまったが…)。

 

 

このように、ここ2週間ほど仕事以外の部分で、特に光関係の調べ物が多くなり(半分くらいは、仕事に直結しないので趣味になってしまうのだろうが)、その関係で電子軌道の話も出てきたので、ざっと復習もしていた(といっても、ネットで拾った資料を読みつつ、HOMOやLUMO等の概念を軽く押さえただけであるが)。なかなか、仕事や生活にも時間を割かないといけないので、脳がくすぐられるほど十分な勉強はできていないのであるが(そして、こういう、ブログという媒体を通じてアウトプットする方法がまだまだ下手である)、こういう時間を過ごせることも人生の糧として、これからもこの世界を味わっていきたいと思う。

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