特許侵害訴訟を考慮した米国出願向けクレームの作成で注意したいこと

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米国における特許侵害の基本的な考え方を踏まえたクレームの作成や、製品の販売形態を考慮してのクレーム作成について、「米国特許クレーム例集」にまとめられている内容をベースに、ここにまとめておきたいと思います。

 

 

侵害の基本的な考え方を踏まえたクレームの作成

米国特許法の下では、特許権の侵害には1人の当事者がクレームの全ての構成要件を実施などしている必要があります。

逆に言えば、複数の当事者が全体として特許のクレームを実施している場合には、侵害を主張するのは難しい、ということです。

 

そのため、クレームを作成するときには、侵害の当事者が1人になるようなクレーム作成を意識しないといけません。

システムと複数の構成要素からなる対象物をクレームする場合

システムがB、C、D、及びEから構成され、BがFから受信する情報を処理する、と仮定します。そして、B、C、D、Eを製造・販売する者と、Fを製造・販売する者が異なっている場合に、例えばクレームを

A system … comprising: a device B that processes information received from a device F, a device C, a device D, and a device E.

とすると、相手側当事者が2者となり、特許侵害で訴えることが難しくなります。

 

なので、このような場合は

A system … comprising: a device B that processes received information, a device C, a device D, and a device E

として、クレームにはFを含まないようにすることが重要です。

別業者の製品Aと製品Bが接続して使用される場合

2つめの例として、ある販売業者の製品A(apparatus A)が、別の販売業者の製品Bに接続して使用される場合に、製品Aのクレームを

An apparatus comprising: a terminal which is connected to B…

とすると、クレームはBも含むと解釈される可能性が高くなります。そのため、クレームに2つの販売業者が含まれることとなり、特許侵害で訴えることが難しくなります。

 

なので、このような場合には

An apparatus comprising: a terminal which is configured to be connected to B…

のように記載して、クレームには製品Bを含まないようにするのがベターと言えます。なお、

“configured to”は、当該構成物の(あることを行う)機能、能力を表すために用いられ、機能や能力の対象となる「物」はクレームの構成とは一般には解釈されない

ということです。

 

 

たしかに、普段読んでいる(訳している)英日の特許明細書でも、機械(装置)の構成要素を列挙する際に、よく「configured to …」という表現で各構成要素の説明がされているものを見かけますが、こういう意図があって用いられているんですね。

 

製品の販売形態を踏まえたクレームの作成

①製品と一緒に販売されていないものはクレームから除く

競合社の販売製品が自社の特許を侵害している、と訴える場合には、競合社の販売製品が自社の特許のクレームの構成要件を全て有しているか、が問題となります。

 

 

例えば、製品Aがある部材bを使ってある作業をするものであって、業界で一般的に販売されている製品Aに部材bは含まれないものとします。

 

このようなときに、製品Aに関するクレームを

An apparatus that uses b, comprising…

とすると、部材bもクレームに含まれてしまい、特許権侵害で競合社の製品が特許を侵害している、と訴えることは難しくなってしまいます。

 

こういう場合には、

An apparatus that is configured to use b, comprising…

のように、「configured」を用いて、クレームに部材bが含まれないことを明確にする(部材bが含まれるという解釈を避ける)ことが必要になる、と解説されています。

 

つまり、製品と一緒に使用されていても、製品と一緒に販売されないものはクレームから除くのが重要である、ということです。

 

このような、「構成要素に含まれないことを明確にする(そのように解釈される)表現としては、

– be configured to

– capable of

があります。

②クレームに水、ガス、光、空気などを含まない

③クレームに人物を必要としない

②同様に、人がクレームの構成要件の一部とならないように注意する必要もあります。工夫の仕方としては、

・adapted to を使う

・configured to を使う

・user を使わない

という3つが主に考えられます。

 

以下、不適切な表現と、そのリライト案を併記しておきます。

a processor causes a user to choose whether or not to start a detection operation…

→ a processor is configured to allow a user to choose whether or not to start a detection operation…

※プロセッサーの機能として、「ユーザーに検出作業を開始させるか否かを決定させる」という記載にすれば、userがクレームの構成要件とはなりません。

 

a data receiving section that receives an input of data by a user

→ a data receiving section that receives data

※データを入力するかは人(ユーザー)以外でも可能かもしれない、と考えてみる、ということですね。

 

a speed setting unit that is operated by a user to set a rotational speed of the rotor

→ a speed setting unit that sets a rotational speed of the rotor

※ここでも、誰が操作するかは関係ない(重要ではない)と考えます。

 

a handle to be gripped by a user

→①単に a handle、又は

② a handle adapted to be gripped by a user/ a handle configured to gripped by a user

のような表現を用いることが適切です。

 

 

まとめ

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