複数の実施例で用意した物品を試験に通すとき、その物品は単数なのか複数なのか

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日本語の明細書を英訳するときにふと思うのですが、複数の実施例で用意した物品を何らかの試験に通すさい、英語の表現はどうすればいいんでしょうね。

 

接着テープを実施例1、2、比較例1、2、3で5種類用意したとします。

 

その接着強度を試験するために、それぞれを「強度測定試験」に通すとしますよね。

 

日本語で、こんな風に明細書が書かれているとします。

 

実施例1

上記の組成で物品1を調製した。

実施例2

●を変えた以外は、実施例1と同様に物品2を調製した。

比較例1

●を変えた以外は、実施例1と同様に比較物品1を調製した。

比較例2

●を変えた以外は、実施例1と同様に比較物品2を調製した。

比較例3

●を変えた以外は、実施例1と同様に比較物品3を調製した。

<強度測定試験>

上で準備した物品を、強度測定試験に通した。

 

 

問題は、太字にした部分ですよね。これ、日本語で読み書きする分には上のような流れで問題ないと思うんですが、英語にそのまま訳すことはできないと思うんです。

 

例えば、

The article prepared as described above was subjected to the strength measurement test.

のように単数で「物品」を表してしまうと、実施例で用意した全ての物品を含まないので(単数で表してしまうと、theが何を意味するのかもあやしい)、少なくとも「articles」と表現しないといけないんじゃないでしょうか。

 

ただ、

The articles prepared as described above were subjected to the strength measurement test.

という表現にすると、articleとtestの関係が不明瞭になってしまうような気もします。

 

1つの試験(装置)に、全ての物品を一度に通してしまうのか?といった読み方ができてしまうように思うのは、僕だけでしょうか。

 

自分なら、

The articles prepared as described above were each subjected to the strength measurement test.

 

のように、eachを入れて「複数用意した物品をそれぞれ、試験に通した」という意味が出るように訳すと思うし、英文チェックをしていたとしても、同じように修正してしまうと思います(修正はしないかもしれませんが、こういう表現もあるなあと考えてしまいます)。

 

この例だと構造がシンプルなのでまだいいですが、

実施例と比較例で調製した材料をフラスコに入れて、他の成分と添加して混合して、物品1~比較物品3を用意した

みたいな実施例になると、どういう表現を用いるのがいいかはより厳密に考える必要があるのではないでしょうか。

 

 

上の表現は、もちろん「物品1、2、比較物品1、2、3をそれぞれ作った」という意味です。

 

材料1+追加成分1+追加成分2=物品1

材料2+追加成分1+追加成分2=物品2

……

………

 

の、合計5通りの実施例を1つの文章にまとめたわけですよね。

 

この場合だと、日本語をそのまま訳してしまうと英文は変になってしまうんじゃありませんかね。

 

The materials prepared in from Example 1 to Comparative Example 3 were  placed in five flasks separately, and the additional ingredient 1 and 2 were added to each flask and stirred, to from the article 1 and 2, and comparative articles 1 to 3, respectively.

 

のように、しつこいまでに「別に用意した」ということを、eachやrespectivelyやseparatelyを用いて表現するほうが、分かりやすいように思えるんですが、実際のところどうなんでしょうね。

 

英訳でも日英レビューの仕事でも、作成した英文を、最後に英文「だけ」で通し読みするようにしていますが、英語だけを読んだときに、どういう風に用語が繋がって説明されているのか、というのが、英語の場合は日本語よりもはっきり分かるようになっていると思いますし、違和感を覚えることも多いです。

 

いくらPCT出願とは言え、英文にした際に流れを汲めなかったら意味がないので、これくらいの「英文作成」はできるようになっておくのがいいのではないかと思うんですが、結局はクライアントの意向になるんでしょうかね。

 

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