フリーランスとして初めて自力で受けた仕事の話

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僕は特許翻訳者になる前に、2年ほど「何でも屋」としてフリーランスとして仕事をしていた時期がありました。

 

独立した際に初めて受けた仕事は、大学時代の知り合いからの翻訳の依頼だったのですが、もちろん単発の仕事だったので、自分で取引先を見つけて仕事を受けて、とりあえずのお金を稼がないといけません。今回は、当時自分が自力で開拓して受けた仕事の話をまとめました。

 

利用したのは在宅ワーク情報サイト

 

僕が独立したのは2013年の年明けで、まだクラウドソーシングサイトが黎明期でした(ちょうど、その年の4月頃から、クラウドソーシングの第1ブームがやってきたと思います)ので、まだその時はこれらのサイトは使っていませんでした。

 

ただ、以前から日本では「SOHO」という、いわゆる「内職仕事」は一定の市民権を得ていて、当時はそういうサイトを調べて、ユーザー登録をしては仕事を探して応募をする、ということをしていました。

 

その時に利用して、初めて仕事を受けたのが@SOHOというサイトでした。

 

どんな仕事を受けたのか

 

このサイトに出ている仕事は、翻訳・通訳関係だと

・海外ネットショッピング用の翻訳やリミット制限撤廃のための電話交渉

・海外での買い付け

・サイトの翻訳

といった、クラウドソーシングサイトに出ている内容と多くはあまり変わりません(買い付け系はこちらのサイト特有、といった気もします)。

 

その中で僕が探してコンタクトをとった仕事は、とある日本語ホームページの英語翻訳の仕事でした。

 

この時の条件は、サイトのURLを確認して、数週間以内に英訳文のみをテキストデータにして納品する、というもので、報酬は「1万円」だったのですが…

 

問題は、ホームページ1ページあたりの単価ではなく、「全ページ」で1万円、という、なんとも「ブラック」な条件だったのです。

 

そのサイトはここには載せられませんが、ページ数が50ページほど、文字数にするとおよそ5万文字はあったと思います(もっとあったかもしれません)。

 

もちろん、改めて確認したら「こんなに分量が多いのに1万円!?」となったので、慌てて先方に条件の交渉をしてみたのですが、当然のことながら「この条件で同意のもと、契約を交わしたということなので…」というようなつれない返事をもらって、さすがに心が折れそうになりました。

 

この時に、強情にも「この条件では仕事は受けられません」と突っぱねて仕事をしない、という対応もあったのかもしれませんが(厳密に言うと、契約的な問題でアウトだと思いますが)、当時の僕は、「自分の確認ミスでこうなってしまったのだから、甘受するしかない」と自分に言い聞かせて、なんとか締切までに仕事をして、先方に納品しました。

 

検収が終わって、無事に1万円が銀行口座に振り込まれた時は安堵感と共に、「もう同じ失敗はできないな」とも強く思ったものです。

 

この仕事で学んだこと

 

結局、この相手とはそれ以降仕事をすることは当然のことながらありませんでした。そして、ブラック企業で仕事をしていた自分も驚く程の、フリーランスという仕事の「ブラックぶり」を、入口の時点でまざまざと知ってしまった僕は、この時に以下のことを学びました。

①仕事の条件は、契約前に十二分に確認する

この仕事は、僕が勝手に条件を勘違いして「これで仕事をします」と相手に伝えてしまったのが、そもそもの失敗でした。当時の業務委託相談の文面は手元に残っていないので厳密な話はできませんが、恐らく僕の頭の中で「サイトは1ページしかない」という思い込みが出来上がっていたのだと思います。あるいは、先方がそこをはっきりと書かずに条件を出していて、具体的な交渉に入ったときに本当のことを伝える、というのだったかもしれません。

 

この時に地雷を踏んでしまったことで、僕の中では、その後の仕事の契約の際には、細かい部分まで徹底的に「確認をして納得する」というクセが付きました。

 

それは納期や分量、仕事内容、金額、税金(外税か内税か)といった、仕事の指示や内容、お金の話といった、本当に多岐にわたる内容についてです。

 

幸い、最初にこんな最低レベルの条件で仕事を経験できたので、その後の仕事ではここまでの地雷は踏むことはなくなりましたが、今でも仕事内容を確認するときに、相手の出方によっては「あまり印象が良くないな」「こっちを安く使おうとしているのかな」と、こちらが仕事を頂く側であるにも関わらず、相手に対して悪い印象を抱くこともたまにあります。

 

間違いないのは、「自分の確認不足でも、誰も自分を助けてはくれない」という、フリーランスであればしごく当たり前のことを実際の仕事を通して経験できた、ということでした。

②仕事ではお金を払う人のほうが力が強い

この仕事を通して痛感したのは、仕事条件の変更の相談は、基本的にお金を受け取る側からはできない、ということでした。

この激安仕事の場合、先方から値上げといった条件変更の相談が行われる可能性は万が一にも行われるかもしれませんが、仕事を頂く側から、依頼を受けた後で「やっぱりこの条件ではできないので、変更して下さい」ということは、ほぼ不可能ということです。

 

仕事の発注者と受注者は対等、という考え方もあるとは思いますが、フリーランスというのは所詮下請け、基本的には発注者に権限があるのだ、ということをこの機会に学ぶことができました。

 

これ以来、僕は仕事で不明点がある場合は、正式発注(即ち合意契約)前に逐一確認をして、その上で諸々の事情で出来ない仕事はその時点で断るようにしています(合意をした後で変更の相談をするのは、契約面でもあまり良くはありませんし、マナー違反だとも個人的には思います。もちろん、やむを得ない事情がある場合は別ですが)。

③事前確認や合意/辞退の選択も含めて全て自己責任

結局、フリーランスの場合は、仕事の内容確認や、仕事を受けるか否か、といった決断・判断も全て「自己責任」です。会社員の場合は、上司に相談をしたり、上司が責任を被ってくれることもあるかと思いますが、フリーランスの場合はそんなことはありません。

 

自分はどんな条件の仕事を受けるのか、どういう場合は特例で受けるのか、といったことを逐一考えるのも、全てフリーランスの仕事の一貫ですし、その行動と決断に責任を持つのも自分です。

 

そう言う意味では、独立したての、右も左も分からない頃に、これだけ手痛いパンチを食らったことは、長期的に見ると自分の仕事において大きな糧となったと思っています。

 

まとめ

この経験は、もちろん万人がすべきものではありません。

僕の場合、当時はまだ20代前半で、とりあえず自分の最低限の生活費+αを稼げれば大丈夫、という状況だったので、こんなトンデモワークを甘受することができましたが、他の人の環境によっては、こんな判断ミスによって貴重な時間を失ってしまうことで、大きなロスになってしまう可能性もあります。

 

特に、フリーランスになりたての頃は「実績作りのため」であったり「とりあえずお金が欲しいから」という理由で、条件の悪い仕事も受けてしまいがちになると思いますが、経験不足からとんでもない落とし穴にはまってしまうこともあるので、同じ失敗はなるべくしないで欲しい、というのが僕の思いです。

 

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