柑橘類と光毒性の関係

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以前、とある調べ物をしていると

 

冬至にはゆず湯に入る習慣があるが、ゆず湯に入った翌日に太陽に当たると肌にシミができやすくなる

 

という話がネット上に転がってあり、興味を持ってしまった。

少し調べてみると分かったのだが、これはゆずに限らず多くの柑橘類に共通する特性で、光毒性(ひかりどくせい:又は光感作作用)と呼ばれてるものらしい。

 

どうやら、柑橘類に一般的に含まれている成分が、紫外線を吸収する性質があり、その吸収したエネルギーが皮下に蓄積されてしまい、シミとなってしまうようだ。

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紫外線の吸収と言えば…

以前にこのブログでも書いたことだが、紫外線の吸収と言えば共役π電子(共役結合、共役系)であり、共役π電子と言えば紫外線の吸収、という程には、紫外線=共役π電子、という等式が頭に残るほどに、この原理は個人的に印象深いものだった。

 

参考記事:

身の回り品から特許明細書にアプローチする方法

技術思想に着目して、様々な明細書にアプローチをする方法

 

上の記事でもまとめているが、共役系が(紫外線に限らず)光を吸収することに起因する様々な原理を用いることで、色素や紫外線吸収剤という、同じ原理の違う側面をフォーカスすることによる製品や商品が開発され日常で使用されている。

 

そして、今回の「光毒性」の話を始めて見たときも、「もしかすると共役系が紫外線の吸収をするのか?」ということがまず頭によぎったのである。

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光毒性の原因となる化合物

光毒性の原因となる化合物は、フロクマリン(又はフラノクマリン)と呼ばれる、フラン環とクマリンが縮環した構造をとる有機化合物である。

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これらがそれぞれ、クマリンとフランの構造である。どうやら、共役系が含まれる構造になっているようだが…

 

なお、フロクマリン(フラノクマリン)というのは、基幹構造が同じ複数の化合物のグループ名で、例えばプソラレンやアンゲリシンという化合物があるようだ。

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共役系というのは「炭素間結合で、単結合と二重結合が交互に繋がっている結合」のことであるから、どうやらフロクマリン(フラノクマリン)が光毒性を持っているのは、この共役系が紫外線を吸収するからではないか、ということは、外れてはいないように思える。

 

共役系の吸光帯を決定するもの

とはいっても、共役系が吸収する光は何も、紫外線だけでない。紫外線より低波長の可視光線を吸収することが可能な場合もあるため、その原理を用いて共役系を含む化合物を色素として利用することができるのである。

 

では、共役系を有する化合物が異なる吸収帯を持つ原因は何なのか?と言えば、これは共役系の長さである(共役系が大きくなると、吸収帯が長波長(紫外線側)にシフトする)。

参考:有機スペクトル化学第14回(PDFファイル)

 

おそらく、フロクマリンが持つ共役系の長さ(上の構造に見られる長さ)が、ちょうど紫外線領域の波長を吸収する長さになっている、と考えるのが妥当なのではないかと思う(この仮説の厳密性を確かめる資料までは見つけられなかった)。

 

とすると、フロクマリンの光毒性が原因で、紫外線を浴びると肌のシミができてしまう、というのは、推論としては許容できるものなのではないだろうか。

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技術思想や原理のエッセンスを転用する

今回書いた内容も、実は以前記事にまとめた「共役系」や「光の吸収」という話と、根本的には何ら変わりがない。ただ、その使われ方や、注目する側面が微妙にズレている。

 

実は、このような「技術思想」(今回の場合、「思想」と言うほど大げさなものではないかも知れないが)をある程度理解しておけば、まったく別の分野の技術に出逢ったときも、案外原理や思想は以前勉強したものと同じ、ということに気づけることが多くなる。

 

今まで(特許翻訳に参入するまで)、私自身もこのような技術思想や原理に触れる機会は殆どなかったのだが、今となっては、むしろ「まったく違うように見えて、案外似た考え方が使われている」という発見をした時の快感を覚えてしまい、できる限り原理原則、技術思想を丹念に押さえるようになってきた。

 

案外このやり方のほうが応用力、転用力が利くし、表層的な流行、一過性のものに流されないという意味で、太くて強い芯を持つことができるのではないか、と思っている。

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