翻訳者が特許明細書を読むときに他の特許との違いを理解すべきか?

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「特許明細書の読み方」というタイトルで、特許翻訳講座の講師がブログを書いていましたけど。

 

その特許は何を言いたいのか。
一言でいうと?
他の特許とどこが違うのか。
どれぐらい独創的なのか。

まとめて送ってください。

出典:https://transformation-technologies.livedoor.biz/archives/65907936.html

 

※リンクは貼ってませんので、URLをブラウザにコピペして飛んでください。

 

うーん、「他の特許とどこが違うのか」って、解読するの難しいんですよね、正直なところ。

 

日本語明細書の場合、「課題を解決する手段」とかの章が設けられているので、そこを読んだらある程度、この特許の概要を抑えることはできると思います。が、米国基礎出願の英文明細書だと、そもそも「課題を解決する手段」に対応する章が存在しないので、明細書全体を読まないといけない場合があります。

 

しかも、高分子化学分野の材料系の明細書だったらまだしも、バイオ系の製薬系の明細書だったら、「病気に苦しんでいる人がアメリカにはこんなに多く存在する」みたいな説明があった後は、延々と化合物の説明(Aは~で、Bは~で、C1は~で…)があった後に、合成スキームの説明が出てくる、みたいな明細書も多いです。抗体系の特許だったら、配列番号何番で、どこに置換があって、相同性が何パーセントくらいなのか、という説明がされることが普通ですよね。

 

実際にこの分野の英文明細書を読んだり、翻訳されたことがある方は実感できると思いますが、こういう明細書を読んで「他の特許とどこが違うのか」って、一言でまとめることはまあできないと思います。

 

というか、そこを理解する、把握する力って、特許翻訳においては必要ないです。

 

必要となるのは、先行技術文献調査や侵害予防調査などの、特許調査の分野だと思います。

 

 

まあそもそも、特許出願だけされていて、特許そのものが取れていない(新規性や進歩性があるのかどうか分からない、審査段階の)明細書を読んでも、「他の特許とどこが違うのか」という話はできないですよね。「他の特許」が、権利取得した特許公報なのか、出願審査請求されないまま終わった、あるいは審査で新規性・進歩性が認められず拒絶査定を食らって特許を取れなかったものなのかによっても、比較対象が違うので「どこが違うか」を単純に導き出す意味が分からないですし、特許の取り方も、用途発明なのかパラメーター発明なのか、新規の組み合わせなのか、などによって(これらはいずれも、化学バイオ分野特有のものだと思います)違うわけで。

 

なので、機械電気通信系だとまた話が変わるかもしれませんが、それらを全部ひっくるめて「特許明細書を読んで、他の特許とどこが違うかをまとめろ」と一言で表現するのは、あまりにも現場感覚と解離し過ぎている、というしかないですね。

 

「特許翻訳に必要な解像度で明細書を読む」ことを謳っているようですが、そもそもこのアプローチが、特許翻訳に直結しないものですから。

 

もちろん、特許翻訳を軸足にサーチャー系の仕事もされるのでしたら、上記のアプローチはある程度効果があると思いますが、それだったら、そういう特許調査系の書籍を手にして、順を追って明細書の読み方を学ぶべきだと思います。

 

 

まあ、10年以上、特許翻訳や知財実務の現場から離れている分際が「特許翻訳講座」なるものをし続けているのも謎ですが(笑)、現場感覚を完全に失っている人間から何かを学んだところで、ミスリードされ続けていることにも気付かない可能性もあるので、現役バリバリで特許実務に関わっておられる弁理士さんが発信されている内容から学ばれるのがいいかと思いますよ。

 

例えば、特許翻訳者向けではないですが、安高さんのこの動画とかですね。

 

2020年頃から、弁理士さんや知財業界のプレーヤーの皆さんが情報発信に力を入れられていて、私が特許翻訳者になるための勉強をしていた頃には考えられないような、質の高い情報が、以前よりも多く、無料~安価な金額で手に入るようになりました。こういう方々のコンテンツを生かさない手はないでしょう。

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