翻訳業は自由業?

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フリーランスの翻訳業は、社会的な分類では「個人事業主」という業務形態であり、これは俗に「自営業」とも呼ばれている業種形態である。

 

この「自営業」に似た言葉に「自由業」という言葉もあるのだが、これは一般に、作家(小説家)やデザイナーあたりを指すのだろうか、
・平日休日に関係なく仕事ができ、
・朝昼晩に関係なく仕事ができる

という「自由さ」を指して、このような言い方をされているように思う。

 

(一方、「自営業」というのは八百屋であったりラーメン屋であったりクリーニング屋であったりと、「時間」の自由もなければ「場所」の自由もない形態を指すように思う)

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さて、ここで当然、「翻訳業はどうなのか」という疑問が湧いてくる。即ち、「翻訳業は自由業なのか?」という疑問である。

 

普通に考えると、フリーランスの翻訳業では、出社する必要がない。自室が職場であり、職場が自室である。
次に、就業時間も日時も、特に限定されているわけではない。朝方の人は太陽が顔を出す前から仕事をしているであろうし、逆に太陽が沈んでからが本領発揮、という方もおられるに違いない。そして、平日の昼間に買い物に行ったり映画に行ったりクリーニングを取りに行ったりすることもできるし、空いている博物館を味わうこともできる。逆に言えば、外の世界が混雑する週末に部屋に閉じこもって仕事に勤しむことができるわけだから、どう転んでも「自由業でしかない」と捉えられるのが一般的であろう。

 

しかし、わたしは必ずしも、翻訳業が自由業であるとは思っていない。
その理由を簡単に述べれば、次のようなものが挙げられる。

①職場環境が不動的

小説家やデザイナーという仕事は、あくまで私のイメージだが、職場環境が「動的」である。小説家の中には、喫茶店に原稿用紙やパソコンを持ち込んだほうが執筆が捗るというプロもいるし、デザイナー等も、街中を歩いている時にインスピレーションを得たり、周りが静かすぎない環境で仕事をするほうが集中できる、という人がいるとも聞く。(漫画家などもそんな気がする)

 

方や、翻訳業はこんなことができない。あくまで私個人のケースなのかもしれないが、まわりがうるさいと耳障りで文章が頭に入ってこない(もともと、音声を聞きながら本を読む、という作業も無理だ)ので、「喫茶店などで仕事をする」というのはすぐに却下だ。

 

それにこの仕事、案外重装備になる。今はレーザープリンターもあるし、普段はパソコンに入れた辞書を使うが、ペーパーバックの辞書も机の下に置いている。パソコンは、海外に行くこともあるので14.5インチのノートパソコンを使っているのだが、できれば20インチを超える大型ディスプレイを付けたデスクトップパソコンを使うのが理想である。キーボードも外付けのものを使っているし、とてつもなく明るい照明もパソコンの画面を照らしてくれる。本棚もパソコンの隣と押し入れの中にある。あと、椅子もいいものを使っている。

 

そう、とにかく世間の想像以上に必要な道具が多く(しかも重い)、とてもじゃないが、いい訳文ができないから喫茶店に入って…なんてことはできない(というか、そんなことができるほど時間に余裕もない)。全くもって、職場は「不自由」な仕事だと思っている。

(個人的には、ある程度の広さの部屋で静かに仕事ができるほうが落ち着いて捗るのだが)

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②多くの会社員と同じく、平日のほうがピリピリする

私は、あまり休日に仕事をするのが得意ではない。これは別に「みんなが休んでいる時に別のことをできない」というわけではなく(むしろ私は、「みんながしないからこそする」タイプである)、単純に休日はそこまで集中力が続かないからなのだ。これには恐らく、世間一般の空気のようなものもあるのだが(休日のほうが緊張の糸が解けている気がする)、もう1つ原因はある。

 

それは、取引先とのメールのやりとりは平日にしかしないので、どうしても平日のほうがピリピリしてしまい、その疲れが休日に出てしまうからなのだ。

 

というのも、翻訳業の取引先とは、翻訳会社であったり特許事務所であるわけで、これらは普通に「平日営業週末休業」なわけである。そして、新しい案件の打診や、仕事の確認・質問のメールは全て、平日の営業時間内に行わなければならない。

 

取引先とのメールの中では、殆どが「今日のいつまでに返信下さい」というお願いつきなので、どうしても普段の翻訳のように、「いつまでに100%終わらせればいい」という、ゆったりした構えで取り組めないのだ。その時間までに、対応できる仕事なのかどうかを、中身や分量と納期を確認して判断しなければならない。さすがにこんなメールが毎日来るわけではないが、週に一回は来るわけで、それもいつ来るかは分からないので、呑気に映画を見ていてメールを見逃してしまう、なんてことはできないわけだ。(私のスマホでは、メールが届いたときに通知が来る設定にしているが、パソコンからじゃないと確認できないファイルもあるので、基本的に意味をなさない)

 

判断する時間が短いメールの内容は神経も使うし、判断力も必要だ。それに、そのメールがいつ来るか分からない。仕事柄、できるだけメールの確認はせずに昼過ぎに一回、夕方に一回、くらいの頻度で行うのがいいのだが、それだとメールに気づかない…ということもあるので、メールが届いた瞬間にアラートが届くようにしていて、送信元と件名だけ表示されるようにはしている。そして、すぐに確認が必要なものであれば、仕事を中断してそちらを優先する。

 

簡単に言うと、いいことなのか悪いことなのかは置いておいて、平日のほうが心が安まらないのである。そしてその反動で、メールが基本的に届かない週末は心が安まる。

 

なので、よっぽど締切まで時間がない、というようなことがない限りは、「平日に仕事、休日は勉強かリフレッシュ」を主眼に置いてスケジュールを立てるようにしているのだ。(一時期7日連続で仕事をした日もあったが、とてもじゃないが集中力が続かなかった)

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まとめ:そこまで「自由業」じゃないこの仕事

というわけで、私の場合、翻訳業は自由業ではないと考えている。かといって、自ら「不自由業」というのも気が引けるが、別に私は、今の状態が不自由と言っているわけではない。あくまで他の自由業と比較した際に、「仕事環境」という意味での自由度が少ないだけである。

 

よくよく考えてみれば、理不尽なことで怒られることでもないし、個人的には無意味と思えるような出世争いや下らない仕事の後の飲み会に顔を出す必要もまったくない。そういうのが嫌なのでこの仕事を選んでいる、というのもあるのだが、そういう意味ではこの仕事でも、十分に自由は享受できていると受け止めている。

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