特許翻訳者向けJplatpat(特許情報データベース)活用法5選

この記事は10分で読めます

特許翻訳をするときに、日本の特許情報データベース(Jplatpat・ジェイプラットパット)を、訳語の調査や取引先の開拓などに上手く活用する方法をお伝えします。

 

なお、私が外内(英日)翻訳を行っている関係で、今回実演する調査結果の画像は、海外企業のものが多くなりますが、内外(日英)翻訳などでも活用できますので、適宜読み替えていただければと思います。

⓪まずはJplatpatにアクセス

具体的な検索方法をお伝えする前に、Jplatpatの初期操作について簡単に触れておきます。

特許情報プラットフォーム(Jplatpat)

 

まずは、上のリンクにアクセスをします。

こちらがトップページで、左上の「特許・実用新案」をクリック。

 

 

 

真ん中の、「特許・実用新案検索」をクリックします。

 

 

 

 

 

 

 

 

初期画面では、4つの検索窓に「全文」「書誌的事項」「発明・考案の名称/タイトル」「要約/抄録」がそれぞれ表示されています。

 

この、検索窓で使える絞り込み要素は、以下のとおり。

「全文」「書誌的事項」「発明・考案の名称/タイトル」「要約/抄録」「請求の範囲」「明細書」「審査官フリーワード」「審査官フリーワード+全文」「FI」「Fターム」「ファセット」「IPC」「出願人/権利者/著者所属」「発明者/考案者/著者」「代理人」「審査官名」

 

この検索窓同士の間に「AND」とあり、この検索窓を複数使うと、それぞれの窓に入力した番号・文言・記号を組み合わせての絞り込みができます。

 

もちろん、検索窓1つだけを使っての絞り込みも可能です。

 

ここから具体的に、特許翻訳で重宝する、検索窓を使う、5つの検索方法をまとめたいと思います。

 

①「発明の名称」で絞る

最初はオーソドックスな検索方法の、「発明の名称」での絞り方です。

 

外内翻訳の場合、翻訳をしようとする明細書は英語乃至他の外国語で書かれているため、翻訳に着手する時点で日本語検索はできませんが、

 

・同じキーワードが入っている明細書

・タイトルがほぼ完全一致する明細書

を調べることは可能です。

 

例えば、発明の名称に「ポリクロナール抗体」が含まれている明細書を調べてみます。

 

検索日は、2024年の6月12日。

 

 

 

3件だけヒットしました。思った以上に数が少ないですね。

 

外内出願の場合(内外も同じかもしれませんが)、ある企業(出願人)が、似たような特許を複数出願する場合に、タイトルが同じ、あるいは似通っている場合があるので、類似特許を読んで技術理解や用語選択の参考にする場合などに、使うことができる検索方法です。

 

②「明細書」で絞る

続いても、どちらかというとオーソドックスな検索方法の、「明細書」で絞る方法です。

 

ある特定の用語がどれくらい用いられているのか、といったことを調べる際に使える方法で、こちらも汎用性があります。

 

例えば、バイオ分野の実施例でよく用いられる”transfect”。名詞形は”transfection”で、そのまま「トランスフェクション」と訳せますが、この動詞形をカタカナで表記するときに、「トランスフェクトする」なのか「トランスフェクションする」なのか、どっちのほうが適切なのだろう、のように疑問が湧いたとします。

 

こういう時に、検索窓で「明細書」を選択し、「トランスフェクションし」と「トランスフェクトし」のそれぞれを入力して、2回検索してみます(検索日は共に、2024年6月12日)

 

「トランスフェクトし」だと約3万8千件がヒット。

 

「トランスフェクションし」だと、約1万4千件がヒットしました。

 

厳密な話をすると、これに加えて「トランスフェクトする」「トランスフェクションする」のような揺らぎも含めて検索するほうが、検索の精度を高めることができるのですが、今回はざっくりと、言葉の使用頻度を調べるだけのものなので、これだけ粗くても問題ないかと思います。

 

結果的に、明細書で用いられている頻度はダブルスコアを超えて「トランスフェクトする」のほうが多いので、こちらが一般的な表現だと思われますが、「トランスフェクションする」も十分多く用いられているので、ほぼ完全に「好み」の問題と言えるでしょう。

 

「明細書」で表現を絞る方法は、このように、特定の技術用語や専門用語がどれくらいの頻度で使われているかを調べるために、粗めの検索精度で活用できる方法と言えます。

 

③「出願人/権利者/著者所属」で絞る

この辺りから、やや高度な話に突入していきます。

 

②の「発明の名称」で絞る方法は、粗い検索精度での結果が出てくることが基本なのですが、場合によっては、「これだけ検索結果が多いと、検索の意味がない」ということもあるかと思います。もっとピンポイントで、必要としている情報を手にしたい場合です。

 

この③~⑤では、そういう場合に、より検索精度を高めて結果を出したいためのスキルで、基本的には①または②と組み合わせて使うことが一般的です(そうすることで、検索結果の精度がグッと上がります)。

 

その方法の1つめが、「出願人」で絞る方法です。特許情報データベース上では「出願人/権利者/著者所属」の3つがセットになっていますが、特許翻訳の場合、ほぼ「出願人」情報で絞り込みを掛けることになります。

 

これは、ピンポイントで企業名を入力することになるため、その企業が出願している明細書で用いられている用語を調べたり、似たような特許を調べて周辺知識を補う、対訳を取る際に重宝します。

 

ここでは、具体的な検索結果の表示は避けますが、外内翻訳を担当している場合、これまでに対応した明細書に記載の出願人名をカタカナ表記するなどして検索すれば、相当絞り込みをかけることができます(有名どころであれば、アップル社やプロクター・アンド・ギャンブル社など)。

 

マイナーな出願人(会社)名の場合、その日本語表記を正しく調べられるまでに時間が少しかかるかもしれませんが、先にGoogleで調べるなどすれば問題なく検索できます。

 

この「出願人名」で絞り込みを掛ける方法によって、初めて対応する案件の場合でも、これまでの出願動向や書面を参考にすることができます。

 

④「代理人」で絞り込みをかける

「出願人」での絞り込みと同レベルで有効なのが、「代理人」での絞り込みです。

代理人とは、出願及びこれに関連する手続きの代理を行っている弁理士さん(個人)または弁理士法人に当たるので、代理人で絞り込みをかけると、どのような分野の対応が多いのか、過去に対応している同じクライアントの明細書の訳文がどのようなものなのか、といったことを芋づる式に調べることができます。

 

翻訳会社だけと仕事をしている翻訳者の場合、これまでに対応した案件のタイトルをまず検索して、それが数年前に対応したものであれば、既に出願公開または特許登録されていて、代理人の名前も分かりますから、弁理士個人が代理人になっている場合は、その弁理士の名前をググることで特許事務所(弁理士法人)を調べることもできますし、その事務所が出している訳文を参考にすることもできます。

 

既に特許事務所と取引をしている翻訳者であれば、過去に対応した同じ出願人の案件を調べることができますし(「出願人」だけで調べると、別の代理人から移管されている場合に、移管前の代理人の案件が出てくる場合があります)、大いに参考になる検索方法と言えます。

 

ところで、代理人から翻訳文を調べて対訳を取るときに気を付けないといけないのが、翻訳の品質の見極めです。というのも、代理人はあくまでも出願の代理をしているだけなので、その際に提出される翻訳文が、内製されているのか、事務所と取引をしている個人翻訳者が担当しているのか、あるいは翻訳会社に発注されているのかが、分からないからです(外内案件をとにかく多く受けて、翻訳は外部に丸投げで品質チェックがきちんとできていないところもありそうです)。

 

これに関しては、事務所の評判・口コミを調べたり、事務所のHPから、対応している案件(外内、内外、内内など)の割合を導き出すなど、他の情報分析スキルが必要となるのですが、今回の記事の趣旨とはズレるので、詳細は割愛させていただきます。

 

⑤IPC(国際特許分類)

最後は、IPC(国際特許分類)を使っての絞り込みについてです。

 

そもそもIPCとはなんぞや、ということに関しては、こちらの別サイトで上手くまとまっていますので、こちらをご覧ください。

【入門編】特許検索に必須!特許分類「FI」「Fターム」「IPC」とは

 

※特許分類には、「FI」「Fターム」「IPC」の三種類があるのですが、とりあえずIPCだけざっくりと分かれば大丈夫です。

 

上記リンク先に、IPCのおおまかな分類もまとめられていて、アルファベットのA~Hまでが大分類としてあり、これらを下層まで詳しく分類した情報は、以下の特許情報データベース上の1ページにまとめられています。

IPCセクション選択

 

これを使うことで、特定の用語が、特定の分野で一般的に用いられているかどうかを調べることができます。

 

例えば、英語のバイオ系明細書でよく見る”operably linked to”という表現。この表現の日本語訳として、「作動可能に連結された」がいいのか、「作動可能に接続された」がいいのかで、迷ったとします。

 

この場合に、上の②で記載した、「明細書」だけで絞り込みをかけてしまうと、機械・構造分野での、構成要素同士の関係性を描写した表現がノイズとして混じってしまう可能性が高いです。

 

実際に、2024年6月12日に、「作動可能に連結された」「作動可能に接続された」だけで検索をしてみると、

 

「作動可能に連結された」は約1万3千件、

「作動可能に接続された」は約1100件がヒットしました。

 

ただ、これだと様々な分野の明細書が交じっている可能性があるので、IPCを使って絞り込みをかけます。

 

上記のIPCセクション選択を見てみると、「化学・冶金」分野はCセクションにあり、ここを詳しく見てみると、C12に「生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学」とあるので、このIPCを使ってみます(検索日はいずれも、2024年6月12日)。

 

まずは、「作動可能に連結された」にIPC:C12を組み合わせてみると

約1万件のヒット。続いて、「作動可能に接続された」∩IPC:C12で絞ってみると

 

わずか195件のヒットとなりました。

 

これらのデータを踏まえると、「作動可能に連結された」という表現は、バイオ分野特有の表現であり、「作動可能に接続された」という表現は逆に、この分野では一般的に用いられない表現である可能性が高い、ということが分かりました。

 

一応補足をしておくと、検索結果1万1千件だとまだノイズが含まれている可能性があるので、今回紹介した他の方法で、もう少し絞り込みをかけていくこともできると思いますが、技術分野を絞ることで、「Aの分野では一般的に用いられている表現が、Bの分野でも用いられているのか?」ということを調べることは可能だ、ということは、特許翻訳をする際に知っておくと、何かと役立つノウハウと言えるでしょう。

まとめ

特許翻訳をする場合、訳語検索はほとんどGoogleなどの検索エンジンに頼りっきりになってしまっている方も多いと思いますが、既に公開されている、特許明細書に書かれている内容を参照することで、場合によっては検索エンジンを利用するよりも高い精度で、必要としている情報を手にできる場合もあると思います。

 

特許翻訳者が特許情報データベースを使っている、IPCを知っている、という話はあまり聞かないので、ぜひ普段の業務において、活用してもらいたいです。

 

※今回まとめた話は特許調査も絡んでいるので、合わせて以下の書籍も読むことで、理解が深まるかと思います。

 

 

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