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会社員と同じ稼ぎを得るだけでは、フリーランスは不十分

オピニオン

何年も前から、働き方(仕事のスタイル)の論争で「会社員がいいのか、フリーランスがいいのか」という話があります。

 

私は、半年に満たない会社員時代を経てからフリーランスになりましたが、独立の直接的な経緯は「いくつかの仕事を知人から頂いた」ということでした。

 

当時まだ23歳だった私は、その仕事をきっかけにしてフリーランスに挑戦してみよう、と決めました。しかし、分野も絞らず、朝から晩まで働きづめの日々を続けても貯金はそこまでたまらない、スキルが蓄積しているかも分からない、という状態が続きました。「自分の専門分野を確立して、フリーランスとして腹を決めてやっていこう」と決めたのが独立から約1年半後で、そこから特許翻訳を専門にするために勉強をしてキャリアチェンジをした、という話は、メルマガでもブログでも何度も書いてきたことだと思います。

 

私は、かつての職場で苦い経験が多くあるので、今から会社員に戻りたいかと言われると恐らくかなりの確率で断ると思っています。しかし、これは何も「フリーランスのほうが会社員よりおいしい」という話ではないのです。

 

今回はその点について、収支面から深掘りしていこうと思います。

 

フリーランスは会社員の1.5倍ほど稼いでようやくトントン

よく、「フリーランスと会社員の収入を単純比較するのは意味がない」と言われます。

これは、会社員の場合は(社会保険に加入している場合は)納める社会保険の半額は会社が負担しているため、納税負担の総額を考えると、フリーランスのほうが支出が多くなってしまう、ということが1つの理由としてあります。

 

私が聞いた話では、「フリーランスの年収1000万円は会社員の年収700万円と同じ」、つまり、あなたがフリーランスの場合は、年収に0.7を掛けた値が、自分が会社員の場合の年収にニアリーイコールである、というもの。

これには他のパターンもあるようで、「会社員の1.5倍の稼ぎを得て、フリーランスは会社員とトントン(例えば、フリーランスの年収750万円=会社員の年収500万円)」ということを、別の世界でフリーランスをしている私の知人は話していました。

 

他にも言われ方はあると思いますが、いずれにせよ「会社員の給与額基準でフリーランスの年収を考えてはいけない」というのが、一般的な見方だろうと思います。

 

そして、これは何も税負担額の違いだけで生まれるものではありません。

 

会社が負担してくれる各種経費をフリーランスは自己負担する

この記事をお読みのあなたが現在会社員をされているのであれば、一度考えて欲しいことがあります。

それは「会社が負担している経費は毎月どれくらいなのか?」ということです。

会社員の場合、月給(基本給)に残業手当や各種手当てが月ごとについて月収を計算できます(また、賞与の総額を12で割った金額を加えて計算することもできます)。

 

ただし、これで会社員の収入の総額が計算できるのは確かですが、この他にも、自分の代わりに会社が肩代わり(負担)してくれているお金もあることを、忘れてはいけません。

分かりやすいのは毎月の定期代(通勤費)ですし、家賃補助が一定額支給されることもあるかと思います。また、仕事で必要なパソコンなどの備品も、会社が全て購入してオフィスのデスクに用意してくれていることだと思います。

 

こういう、一見目に見えないお金の動きも考えると、会社員として受け取る毎月の給与は、自分に対して使われているお金のごく一部だと言うことをイメージするのは、難しいことではないと思います。

 

 

そして当たり前の話ですが、フリーランスになると、これらの「交通費」や「家賃」や「仕事道具代(設備投資)」にかかるお金も、全て自分で負担しなければなりません。

 

バカにならない設備投資

ごく一部の人の影響で、フリーランス(の一部の職種)は「パソコン一台で仕事ができる」というイメージと合わせて語られるようになってしまった感が否めませんが、翻訳業の場合、パソコン代、照明などの周辺機器代、翻訳ソフト代、辞書代、書籍代、セミナー代(と付随する宿泊費や交通費)、コンベンションや交流会(ネットワーキング)の参加費や付随する交通費・宿泊費、家賃などの費用は、基本的にこれまでの貯金と、仕事の報酬から負担しないといけません。

 

下手をすると(というか、実際そうなるのですが)設備投資に100万円単位でお金が必要になってくることも、何も特別なことではありません(一気に100万円が必要なのではなくて、数年間のトータルの設備投資費がそれくらいになる、ということです)。

 

設備投資費の推定額は自分で計算ができますが、問題は、そこまでの投資を自己負担ですることができるか、もっと言えば、し続けることができるか、ということが、フリーランスとして仕事を続けるための1つの指標と言っても過言ではありません。

 

私も、最初独立したときはここまでのことは考えられていませんでしたが、数年間フリーランスとして仕事を続けて確定申告を行い、収支の管理もできてくるようになって、こんな当たり前のことに改めて気づくことができました。

 

私が勤めていた会社は零細企業だったので、福利厚生などのサポートも充実してはいませんでしたが、今思うと、それでも月給に加えて、見えない部分で多くのお金が自分に対して使われていたんだな、と思います。

 

フリーランスは簡単にできるかもしれない。けれど…

今は「軽さ」や「分かりやすさ」が受ける、注目を浴びるような風潮になっているからなのか、「簡単にフリーランスになれる」「フリーランスのススメ」のようなキャッチーなタイトルで、いかにフリーランスが素晴らしいのか、を伝えるメディアや発信者が増えている印象を受けます。

 

もちろん、フリーランスにそういう魅力的な側面があるのは事実でしょう。しかし、会社員と比較したときのお金に対する価値の違いなど、投資意識が会社員と異なる場合があることなども、冷静に考えたうえで、良さと悪さを把握して行動していくことが必要なのではないかと思います。

 

もっと、骨太のフリーランスが増えるような世の中になって欲しいと最近は思っています。

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