セミオープンエンド形式にご用心

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前回の記事では、特許明細書の独立請求項におけるオープンエンドとクローズドエンドの違いについて見てみた。

実は、この記事内では「大別して2通り」と書いたのだが、あなたはお気づきになっただろうか。

「大別」というからには、これら2つ以外にも形式が存在する、ということである。

今回はそんな曲者、「セミオープンエンド」について見ていこう。

セミオープンエンド形式

これには以下のような特徴がある。

h3>範疇は「オープン」と「クローズド」の中間

しごく当たり前の考え方となるが、
「セミ」というからには、両者の中間に存在する、ということは想像に難くない。

h3>繋ぎの語句は consisting essentially of

セミオープンエンドでは、オープンのconsisting ofに、「essentially」という語句が付け足される。

日本語で言えば「実質的に」というニュアンスとなるが、
一体この「セミオープンエンド形式」は、どのような時に使われるのだろうか。

h3>少しややこしい範疇理解

セミオープンエンド形式は、以下のような意味を有するとされている。

①オープンエンドの特徴である「記載されていない成分等も含む」を有すること

②かつ、これらの成分等が「発明に悪影響を及ぼす場合」は、範囲外とされること

つまり、列挙していない内容を含むかどうかの判断基準は、
「それらが発明に悪影響を及ぼす場合」となる、ということである。

これは、特許翻訳を行う上ではそこまで意識することはないのだが、
特許訴訟での範囲内外の規定・解釈に影響を及ぼすことが多々ある。

例えば、以下のような文章がある。

An inorganic fiber having a composition consisting essentially of:
(a) 0.1-30 wt X HgO;
(b) 0-10 wt X Al2O3;
(c) SiO ; and
(d) CaO.

(WO1987005007A1/INORGANIC FIBER COMPOSITION CONSISTING ESSENTIALLY OF Al2O3, MgO, CaO AND SiO2)

ここでは、(a)~(d)に無機化合物が列挙されているが、
これらの成分に加えて、組成物に悪影響を及ぼさない成分(例えば充填剤など)を含むことはできるが、
悪影響を及ぼす成分(例えば、これらの成分とは化学的、物理的、電気的に相性が悪く、組成物の質や効用が下がってしまうもの)は含むことができない、ということである。

セミオープンエンド形式が含む範囲をどこまでとするか、ということについては、
実際に訴訟が行われており、それに関する見解をまとめた書類も存在する。

 

ここに記載されている内容が具体的で分かりやすいと思うが、列挙されている合金成分の他に含まれ得る成分として、権利主張する合金の残留応力の低下してしまう金属元素を含まないと解釈されるのか、どうか、ということに焦点が当てられている。

(詳細の確認はリンク先の資料をお読み頂きたい)

このように、セミオープンエンド形式の範囲がどこまでか、というのは、書かれた特許明細書を訳す仕事を行う上ではほぼ必要が無い知識といえるが、このような表現1つから、列挙されていない成分として大丈夫なもの、大丈夫でないものを考えてみるのも面白いのではなかろうか。

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