年が変わって一本目のライブメルマガですね。
さて、まだ正月ですが今回は
表題の件について考えてみたいと思います。
僕は普段特許翻訳の仕事をしていて、
これに加えてこの、特許翻訳についてのメルマガを発行していたり
(特許翻訳以外のネタのほうが多いですが…)
去年は春にセミナーを開催したりしました。
で、関係者と話をするとよく聞かれるのが、この
「私は文系なんですが、特許翻訳は難しいと思っています」
とか、
「バックグラウンドがないので、どうやって取っかかりを作ればいいか
よく分からないのですが…」
という質問です。
メルマガに対して時々返信をして頂くこともありますし、
去年セミナーをした時にも、質疑応答の際に出てきたテーマでもありました。
さて、これって一種の「コンプレックス」というか、
「特許って理系分野だから、文系の自分には難易度が高そう」
という、「刷り込み」だと僕は思います。
年末のメルマガでも話したと思いますが、
人間って「よく分からないもの」に対して
不安感とか抵抗感を抱きがちです。
なので、特許翻訳に対してこれまで関わったことがない場合は、
「いかに自分が関係ないか」という言い訳みたいなものを用意してしまって
勝手に壁を作ってしまうというか、
マインドブロックをかけてしまうわけです。
そして、特許翻訳に対して「漠然とした不安」を抱いている方は、
恐らく「理系」分野に対しても
「漠然とした」苦手意識を抱いてしまっていると思います。
理系分野って、具体的に言うと
数学、物理学、化学、生物学、とかですよね。
もしかしたら%name1%さんは、
これらの科目が苦手だから、
進路選択で文系を選択された、という過去をお持ちかもしれません。
(僕が高校生の時にも、特に女の子にはそういう子が多かったです)
が、しかしです。
本当に「理系分野が苦手」なのかどうかを
もっとじっくりと考えてみる必要があると思うわけです。
というのも、
そもそも理系(特に数学や物理学)の究極の目的は、
「世の中の事象をできるだけシンプルに表す」
ことだからです。
数学や物理学でややこしい式がたくさん出てきているのは、
それが関係しています。
%name1%さんの身の回りで起こっている出来事を
できるだけ簡潔に、分かりやすいように表現して
それを他人にも理解してもらうようにするには、
式を使ってある程度「抽象的」に表現するのが、
一番手っ取り早くて効率的なわけです。
あるいは、見方を逆にして頂きたいのですが、
「文系はそこまで簡単なのか」ということです。
世間的には、難易度的には
文系>理系
という構図があると思いますが
(特に大学受験という文脈において)
文系科目とか、大学以降で学ぶ「文系分野」って、
実はそこまで単純な世界じゃありません。
大学受験だと、世界史・日本史・地理という科目がありましたが
歴史だと、物事の時系列をしっかりと押さえた上で
誰と誰がどういう風に絡み合って、どういう出来事が起こった、
という話を沢山理解しないといけません。
(ここではあえて「覚える(記憶する)」という言葉ではなく
「理解する」という言葉を使っています)
また、大学で文系分野に進んだ方であれば分かるかと思いますが、
文系の学術分野で本腰を入れて勉強するのって、ものすごく大変です。
大ざっぱに言えば社会学や人文科学という分野がメインですが、
宗教にしても国際関係にしても、
ジェンダーにしても日本(世界)の貧困問題にしても、
物事の因果関係をしっかりと理解して、
筋道を立てて思考をしたり、仮説を立てて調査をしたりするって
生やさしいものではありません。
社会学や人文科学の何が大変かというと、
ある物事に対する見方が、立場によって
180度変わってしまう場合がある、ということです。
世界の民族問題や紛争問題をしっかり研究する場合が最たるものですが、
民族Aと民族Bが戦って云々、という話があったときに
その戦いの原因がどちらにあったのか、という話が
両方の立場で食い違っていたり
それまでの歴史的経緯(歴史認識)の相互のずれが生じていたりして
どちらの立場が正しいのか、という判断って、簡単にできるものじゃありません。
あるいは、発展途上国の貧困を解決するために
資本を投資して開発を進めるのがいいのか、
それをするのが発展途上国の人のタメになることなのか
とか、ややこしい話が多いです。
(僕も大学時代に、そういうことをよく考えていました)
文系(人文科学・社会学)っていうのは
「人間の営み」を研究対象にすることがほとんどなので、
物事の判断に個人の感情や主観が混ざってしまうことも多いです。
そして、こういう一面を考えると
理系分野って、もっと物事をシンプルに考えることができます。
共通文法が存在している、と言ってもいいかもしれません。
1+1=2だし、
Sは硫黄でOは酸素でPはリンだし、
DNAの中にある塩基は4種類だし。
物事のルールが決まっていることが多いので
それらのルールを押さえることができれば、
きちんとした論理的思考力があれば、
特許明細書の文脈を理解するのはそこまで難しくありません。
これが人文科学や社会学だと、
そもそも共通文法の定義がまちまちなことも多いので
話が食い違うことだって多いわけです。
なので、「文系だから理系は苦手」っていうのは
単なる思い込みであることが多いですし、
案外「理系より文系のほうが難しい」ことだって
あるかもしれないのです。
というわけで、特許翻訳が
今まで「自分には取っつきにくい」と思っていたのであれば、
その考えを疑って、「実はそこまで難しくないんじゃないか?」
ということが分かるきっかけを作って欲しいのです。
(その上で苦手感が残る場合は、
用語とかの共通文法の理解が不十分である可能性もあります)
人間って、イメージの限界も思考の限界も
勝手な「思い込み」で作り上げてしまっていることが多いので、
まずはネットで日本語の明細書を読んでみるなどして
その思い込みが本当なのか?というところから
きちんと自分の目で確かめてみて下さい。
案外、変なマインドブロックが外れるきっかけになるかもしれません。
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