今回は、私が実際に行った特許翻訳の勉強方法についてシェアしたいと思います。
現在勉強中の方にも、既に仕事をしていて、理解力を深めたい・分野を広げたいと思っている方にも参考になる部分があると思うので是非最後まで読んで下さい。
さて、実は私は、少し前に虫歯が見つかってしまってそこそこたいそうな治療を受けることになってしまいました。
治療後の経過は良好なんですが、それ以来、歯磨きをするときはスマホのライトを使って歯の周辺を確認したり、使う歯磨き粉を変えたりして歯のケアについては結構神経質になってしまいました。
歯医者さんからもデンタルフロスの使用を進められて、それも使いながら、1回の歯磨きに費やす時間は15分くらいになっています。
ただ、それでも歯磨きの後に歯を確認すると、やっぱり気になる部分があるわけですね…。
そこで。
キシリトールガムって商品があるわけですね。
これって実際効果があるのか?
ということが気になったので、ネットで調べてみたんです。
「キシリトールガム 効果」
「キシリトールガム 虫歯 予防」
とかのキーワードでググってみて、
最初のページに表示された、できれば歯医者さんが運営している専門的なサイトをザッと読むわけです。
すると、どうやら虫歯は「脱灰」によって「う蝕」が起こること、を意味するようなので
これらがどういう状態なのか、どういう意味を持っているのかをとりあえずググって調べました。
最初のほうにウィキペディアが出てくるので、最初はそれを読んでみるので大丈夫です。
「う蝕」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%86%E8%9D%95
「脱灰」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B1%E7%81%B0
読んでみると、どうやら「う蝕」というのは口の中の細菌が、摂取した糖質と反応して酸が作られることにより、歯が欠けていくことで、「脱灰」というのは、酸と歯の成分が反応してリン酸カルシウムが溶け出すこと、のようです。
ここで、歯の成分は「ヒドロキシアパタイト」と書かれていて、有り難いことに、ヒドロキシアパタイトと酸がどのように反応するのか、ということも書かれてあるので、とりあえず書かれてある内容を信用して、反応式もメモ帳にコピペしておきます。
ここまで調べた上で、キシリトールガムの効果についてもう一度調べると、キシリトールというのは糖アルコールの1種で、天然の代替甘味料として使われているようです。
(これもウィキペディアで調べました)
「キシリトール」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AB
つまり、キシリトールガムを食べると、キシリトール成分が口の中の細菌と反応しづらいので酸ができにくく、結果的に虫歯になりにくい、ということのようです。また副次的に、ガムを噛むことによって唾液も作られるので、これが歯の再石灰化を促す効果もある、とのことでした。
と、ここまで調べてから、特許庁データベースを使ってどんな特許があるのかを調べてみます。
とりあえず、「発明の名称」に「キシリトール/う蝕」をand検索で入れてみてヒットした明細書の中から、日本の企業が出している明細書をいくつかダウンロードして読んでみました。
書かれている内容を読んでいると、虫歯がどのように進むのか、という「背景技術」の部分は
先に説明した内容とだいたい同じことが書かれているので、そこを押さえながら、分からない単語が出てきたら必要に応じてググって、更に調べていく、
という方法を取ってもいいでしょう。ただ、この方法で調べた特許だと個人的にはあまり面白みがなかったので、今度は別のキーワードで検索をしてみました。
「発明の名称」を「う蝕/予防」のand検索にして、もうすこし広い範囲で、虫歯予防に使わわれる方法を調べました。
すると、例えばサンスター株式会社の「う蝕予防剤」という特許があるので、これを読んでみるわけです。
中を読んでみると、この特許では「フラバノン」という物質を使うのが特許の新規性のようです。そこで、フラバノンについてもググってみます。
最初にヒットしたのが
「フラボノイド」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%9C%E3%83%8E%E3%82%A4%E3%83%89
だったので、この説明を読みながら、中にある
「フラバノン」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%90%E3%83%8E%E3%83%B3
についても調べてみて、構造式だけでもパソコンに保存しました。
で、ここからが案外大事なことなんですが、特許明細書を読んでいても、「なんでこの化合物を使うと、こういう効果があるのか?」が詳しく説明されていないことも多いわけです。
この明細書でも、フラバノンを使うことが特許の新規性のようなんですが、
「フラバノンを使うと、歯の象牙質でのコラーゲン分解が阻害される」
とは書かれているものの、その原理までは説明されていません。
で、私はこういう時に「なぜ?」と疑問に思ってしまうのですが、ざっと調べてみてもよくわかりませんでした。
そして、こういう場合は「ああ、これを使えばこういう効果があるんだ」ということを、発明者を尊重して受け入れるようにしています。
もちろん、発明の背景に使われている科学原理が分かっているほうが内容理解を正確にできるのは当然です。が、読む明細書、仕事で担当する明細書の全てが当然そういうものではありません。
なので、自分なりに調べてみても分からなければ、そこで一旦ストップして、「そういうものなんだ」と、とりあえず受け入れておくことにしましょう。あとは、先程検索したキーワードでヒットした日本語の明細書を読んでいって、更に調べ物をしていく、ということも可能です。
例えば、フラバノンについて調べるときにGoogleの検索窓に「フラバノン」と入力したら、サジェスト機能で「フラバノン 育毛剤」というのが出ました。
特に男性だと、髪の毛については気にする方もいると思うので、興味があればこのキーワードで調べていくとか特許明細書を読むとか、できると思います。
というわけで、僕は虫歯になった経験から虫歯の原理を一通り調べてみて、特許も調べて読んでみることにしました。虫歯になったときはいろいろと泣きそうでしたが、そこから興味を持ったものを調べて、仕事で活かせるようにした、ということです。
なので、虫歯に限らず「転んでもタダでは起きない」取り組みは大事だと思います。
特に、自分の身体関連のトラブルは、特許翻訳の素材を見つける取っかかりとしては一番いいんじゃないでしょうか。そういう分野から調べ物をしていくと、これまで学んだ内容と意外な繋がりを知ることもあるので、そこから更に深掘り、横展開もしていくことができます。
今回紹介した方法はあくまで自分流ですが、特許翻訳の勉強方法の1つとして参考にしてみて下さい。
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