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名古屋の珍鉄道・東海交通事業城北線!そのネタ要素を徹底解説

2020/02/27

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名古屋の郊外・清須市の枇杷島駅と春日井市の勝川駅を結ぶ、「東海交通事業城北線」という鉄道をご存じでしょうか?

 

名古屋近郊を走る鉄道であるにもかかわらず、名古屋駅に乗り入れるわけでもなく、ご存じでない方も多いであろうこの鉄道。

 

他の鉄道ではなかなか見られない「珍要素」が多いこの鉄道を、今回は十二分に解説したいと思います。

 

※東海交通事業城北線の乗車記は、こちらの記事でまとめています。そちらを読みたい方はこちらのリンクからどうぞ。

東海交通事業城北線に、勝川から枇杷島まで乗ってみた

 

東海交通事業城北線。その興味深い歴史は?

東海交通事業城北線は、名古屋から東海道線に乗って一駅目の枇杷島駅から、春日井市の勝川駅(中央西線)までを結ぶ、総距離約12kmの鉄道路線(正式な起点は、枇杷島駅ではなく勝川駅)。

 

枇杷島から勝川まで、名古屋市の中心部を通ることなく、郊外を環状のようにぐるっと回って線路が敷かれているこの鉄道は、文字を見ても分かるとおり、JRの鉄道ではありません。

 

が、この城北線は持っている歴史が非常に興味深いものとなっています。

 

 

もともとこの城北線は、国鉄時代に日本鉄道建設公団(鉄建公団)が開通を目指した路線で、当時は枇杷島から勝川、そして中央線に一部区間を乗り越えて、勝川の東にある高蔵寺から瀬戸までを結ぶ「瀬戸線」として、建設と開通が見込まれていました(鉄建公団というのは、国鉄から枝分かれした、鉄道建設専門の部門(組織)です)。

 

が、東海道新幹線の開通の2年後から赤字に転落してしまった国鉄にとって、鉄建公団が次々と建設する新規路線を保有して維持するだけの体力はなく、当初考えられていた「瀬戸線」も、元々の計画通りに開通することはありませんでした。

 

結局、「瀬戸線」のうち、高蔵寺~瀬戸間は当時の国鉄岡多線として開通し、JRに移行してから瀬戸以遠区間も含めて第3セクターの「愛知環状鉄道」に移行して、「全線開通」が実現されます。

 

一方、枇杷島から勝川に至る区間は、国鉄解体の後、JR東海が保有する鉄道区間となります(JR東海が第一種鉄道事業路線として保有)。

 

ただ、ここで問題となったのが、開業後の維持コスト。というのも、JR東海が保有するこの枇杷島~勝川間は、そのままJR東海の路線として開通させてしまうと、年間で約49億円の各種コストが(2032年まで)かかってしまう試算になりました。

 

この費用は、さすがに東海道新幹線で潤っているJR東海にとってもバカにならない額。そこで、JR東海が保有するこの区間を、子会社である「東海交通事業」に運営させることにし、JR東海が支払うコストをできる限り抑える算段が取られました。

 

そのような経緯を経て、元号が平成に変わった2年後の1991年に、勝川~尾張星の宮(枇杷島の一駅手前)が開通し、その約1年3ヶ月後に、残りの尾張星の宮~枇杷島間の開通に至ります。

 

 

そんな東海交通事業城北線ですが、こんな経緯もあって、鉄道好きにはたまらない「珍要素」が沢山あるのです。順に見ていきましょう。

 

東海交通事業城北線の珍要素

①全線複線高架なのに列車は非電化・1両編成!

 

城北線は、もともと「瀬戸線」として計画されましたが、この路線は「三河地方から瀬戸・勝川を通って枇杷島まで、貨物列車を運転させる」という意味合いも持たされていました。枇杷島駅から東海道線を下ると、2駅向こうには稲沢駅があり、ここには貨物ターミナルも存在します。

 

東海道、あるいは中央西線から貨物列車を稲沢駅まで通す場合、通常であれば巨大ターミナルである名古屋駅を通過する必要があります。が、この「瀬戸線」を利用すれば、勝川から稲沢まで、名古屋駅を通ることなく、長い貨物列車を引っ張ってくることができるのです。

 

こういう期待もあって、この城北線は完全高架かつ複線で、レールも重い列車に耐えられるスペックのものが用意されました。

 

しかし、実際に開業にこぎ着けてみると、もともと負担が決まっている年間49億円のコストだけでも大きいのに、このコストには電化費用などは一切含まれていませんでした。

 

さすがに、これ以上維持コストを大きくするわけにはいかないため、運用コストを抑えるために、高機能路線のスペックを持っているにもかかわらず、この城北線区間は全線非電化で、かつ需要の問題もあり、1両編成の気動車のみが運転されている現状となっています。

(加えて、日中は1編成がピストン運転をしているため、複線であるにもかかわらず城北線内では一回も列車のすれ違いがありません)

 

②中央西線と繋がっていない幻の勝川駅ホーム

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この城北線は、枇杷島~勝川間を結ぶ路線ですが、驚くべきは勝川駅の構造。

 

この駅は中央西線が走っており、当初の計画では、城北線(瀬戸線)と同じホームでの対面乗り換えができるような設計がされていました。

 

しかし2020年現在、城北線は中央西線と直接線路が繋がっておらず、中央西線の勝川駅とは500mほど離れた場所に、あくまで「仮駅」となっている城北線勝川駅が作られています。

 

上の写真が、分かりづらいですがその構造を写していて、写真を撮ったのは城北線の勝川駅ホーム。この写真の奥側には、城北線の引き込み線が用意されているのですが、本来であればこの線路は更に延びて、写真左奥側にあるJR中央西線の勝川駅まで続いているはずでした。

 

しかし、実際は、そうはなっていません。

 

加えてもう1つ面白いのは、中央西線の勝川駅ホーム。2009年に高架化された中央線勝川駅は、もともと城北線の乗り入れも考慮されて、2面4線の配置となっていました。

 

しかし、城北線の乗り入れが実現されていないため、2面4線の構造のうち、城北線用に用意された中2線の部分には線路が敷かれておらず、無機質なコンクリートが顔を覗かせているだけ。

 

実際に中央線の勝川駅をウロウロしてみると…

 

本来、ここには城北線のレールが敷かれているはずなのですが、まだ実現していません。

 

では、中央西線のホームはどこにあるのか?と言うと、この柵が用意されているホームの反対側に、それぞれ名古屋方面と中津川方面の乗り場があります。

 

 

これは、中津川方面行きのホームから、中津側方面を向いたときの写真。こういう変なホームの構造のおかげで、万が一前後の駅から反対方面の列車に乗ってしまい、勝川駅で逆方向の列車に乗り直そうとしても、いちいち階段を降りて反対のホームに行かないといけない、という手間がかかります。

そんなことする人がどれくらいいるのか、はっきりとは分かりませんが…。

 

 

また、勝川駅に関するネタを余談でもう1つ加えておくと、城北線は中央西線勝川駅の名古屋方面から分岐する設計になっていて、現在使われていない中のホームから、中央西線の中津川方面行きの線路の下をくぐって、現在使われている城北線の仮の勝川駅から延びる、城北線の線路に繋がる、というルートがデザインされています。

 

なので、年間49億円のコストを支払い終えた2032年以降に、城北線が中央西線の勝川駅まで「延伸」される可能性はあるのですが、問題は、今の「仮」勝川駅が、中央西線の線路とほぼ同じ高さに設計されてしまっていること。

 

これによって、現在のレールを延伸するだけだと、元々用意されている、勝川駅の中面ホームにある基盤にたどり着くまでに、中央線のレールとぶつかってしまうんです。なので、線路の延伸をするのであれば、再度城北線の高架の高さを調整しないといけない、あるいは中央西線勝川駅から、もともと下をくぐる路線を、上をまたぐような設計にし直さないと、城北線と中央西線の乗り入れ運転はできないことになります。

 

この設計変更にも莫大なコストがかかるのは事実ですから、果たして城北線のレールが今後、中央西線と繋がるときは来るのか…という、単純な不安があります。

 

③全線高架!なのに有人改札は一切なし…

3つめの「ネタ」要素、それは、城北線に実際に乗るときは、必ず乗車時に整理券を取って、下車時に運転席手前の運賃精算箱で精算をする必要がある、ということです。

 

ワンマン列車の乗車であれば、中部圏でも太多線、高山線、飯田線、武豊線などでも経験することができると思いますし、乗降ドアが限られている、というのもご存じの方は一定するいると思うのですが、城北線がすごいのは、どの駅でも切符を買うことができない、ということ。

 

つまり、乗車時に整理券を取らなければ、途中駅で下車するときに、不正乗車を疑われる、というよりは、一番長い駅間での精算を求められる可能性もなくはない、という話になります。

 

城北線は、どの駅にも券売機がないので、必ず乗車時に整理券を取って、下車するときに現金で運賃を支払いましょう。交通系ICカードも使えませんし、千円札以外のお札も車内の運賃精算機では両替できません

 

興味本位で乗りたいのが鉄オタの性だとは思いますが、城北線のときはより入念な準備が求められます。

 

なお、全駅で乗車券が買えない、とは言うものの、この不便さに対する措置として、途中の小田井駅の近くにある本社の鉄道部で、乗車券類(普通乗車券、回数券、定期券など)が購入することができるようになっています。

とは言っても、この制度を使うのは沿線住民の方だけだと思われますし、沿線の方にとっても、わざわざ乗車券の購入のために本社に出向く、というのも、バカげた行為に思われるかもしれません…。

 

④枇杷島駅以外で他社路線との乗り換えが一切なし

最後の珍要素は、JR東海(東海道線)と接続している枇杷島駅以外で、城北線は一切、他の鉄道路線との接続を行っていない「孤立路線」である、ということ。

 

起点となる勝川駅は中央西線と接続している、とは言うものの、駅間距離が500ほどあって、移動には階段の上り下りと水平移動を合わせて、7~10分ほどかかってしまいます。これでは、「接続駅」と言うのは難しいでしょう。

 

また、途中の味美駅の近くには、名鉄小牧線の味美駅、味鋺(あじまえ)駅がありますが、共に城北線味美駅からは離れていて、かつほぼ等距離にあり、別の駅となっています。

 

同じように、小田井駅の近くには、名鉄犬山線・名古屋地下鉄鶴舞線の接続駅である上小田井駅もありますが、こちらも同様、離れている別駅です。

 

これらの駅どうしの接続には、城北線の駅が高架にあることもあって、想像以上に移動時間がかかる可能性があります。

 

城北線は、興味本位で乗りに行くのであれば面白い路線かもしれませんが、沿線の方にとっては切符購入や乗り換えの不便さから、あまり好き好んで使いたい路線とはいえないかもしれません。

 

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まとめ

今回は、東海交通事業城北線について、その歴史的経緯と珍(ネタ)要素を詳しく解説しました。

 

運転本数こそ少ない城北線ですが、勝川~枇杷島間は片道20分程度、運賃は片道450円と乗りやすい路線であるのも事実。中央西線と東海道本線を上手く利用して、是非乗ってみてはいかがでしょうか。

 

※城北線に乗った記録は、こちらの記事で。

東海交通事業城北線に、勝川から枇杷島まで乗ってみた

 

<合わせて読みたい>

名古屋関連では、2016年に廃止になりはしましたが、大阪と長野を結んでいた「大阪しなの」の乗車記録を、こちらにまとめています。

【2016年に廃止】「大阪しなの」のグリーン車に乗って全区間を旅してみた

 

 

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