先日ある国に旅行に行ってきたのですが、
ちょっと興味深い発見をしました。
ヨーロッパの観光地だと、
明らかな観光客(お上りさん)に対して
スリやらなんやらを働く人たちがいるのが普通ですが
この前、そういう人に久しぶりに出くわしました。
長距離バスでその街に着いた翌日、
地下鉄乗り場でチケットを僕は買おうとしていました。
調べてみると、「72時間パス」のような
「乗り放題パス」があるので、券売機にお金を入れて買おうとしたら
どこからともなく、変なことをしそうな青年が1人やって来まして…
その人、片腕にギプスをはめていたんですが、
目つきがちょっとヤバそうだったので
できるだけ関わらないようにしよう、としていたんです。
チケットを買う前に何か声をかけられたんですが、
その時は無視していたんですよね。
ただ、現金でチケットを買おうとしていたのに
タッチパネル操作を間違って
「クレジットカードで払う」ボタンを押してしまったのか、
現金を入れるところが現金(お札)を飲み込んでくれません。
自分がどこで操作を間違えたのかが分からなかったので、
少しテンパってしまっていたら、
その青年がまたやってきて
おもむろにタッチパネルを操作し始めました…。
「絶対に何かあるな」と思って見ていたら、
しきりに「Trust me, trust me」と言ってきます。
まあ、もともと僕はこういうのを信用していないので(笑)、
どうなるか見ていたんですが、
なんとか操作がうまくいったようで、
きちんと現金でチケットが買えました。
やれやれ、と思ったら、その青年が
「助けてあげたのでお金くれませんか」
みたいなことを言ってきたので
「やっぱり」と思いましたね…。
確か「お釣りをくれませんか」みたいなセリフでしたけれど、
こちらは、別に頼んだわけでもなく
操作をしている時も一切信用していなかったので、
もちろんその人には一銭もやることなく
その場を後にしました。
(方向を間違ったのでちょっとしたら、またその場所に戻ってきたのですが
その人は近くにいた警察に捕まって、罰金か何かを払わされていました)
頼んでもいないのにずかずかとこっちの空間に入ってきて
ヘルプをした、ということにしてお金をせびる、
というのは、多分6年くらい前にインドの空港で経験して以来なので
今回の経験は、イラッともしましたけど
どことなく新鮮な気もしたんですよね。
そして、その日の観光が終わってから気づいたことがあるのですが…
僕たちが普段取っている行動に隠されているメッセージ
(hidden message)って、案外大事なことなのではないかと。
hidden messageっていうのは、簡単に言うと
「言外にあるメッセージ」ってことですね。
例えば、このブログやメルマガでも
色々と本やら仕事道具を紹介していますが、
この時のhidden messageは
「これを手にしてみて下さいね」
というものだったりします。
(実際に書いている時も多いですけれど)
言葉って、文字や音声(シニフィエ)と、
その意味(シニフィアン)の2つの構成要素からなるわけですけれど、
時と場合によっては、シニフィエとシニフィアンが違ってくる時もあるわけです。
例えば、京都のぶぶ漬けなんかがそうですよね。
「ぶぶ漬けでもいかがですか」
という文字(シニフィエ)が持っている意味(シニフィアン)は、
「もうさっさと帰って下さい」
だというのは、結構有名な話です。
で、今回僕がその街で経験したのは、
まさにそういう
「シニフィアンとシニフィエのずれ」
だったわけです。
この場合、シニフィアンは
「文字や音声」ではなくて、「行動(非言語)」だったわけですけれど、
人間のコミュニケーションの要素の大部分は、
実は言語じゃなくて非言語、というのも事実で、
行動が表している意味って、バカにはできません。
今回の場合、ギプスをはめていた青年は
・何も言っていないのに近づいてくる(行動)
・「Trust me, trust me」と必死に喋る(音声)
・お金をせびる(行動)
という、3つのシニフィアンを使ったわけですが、
彼が僕に伝えたかったこと(シニフィエ)は
「私は信用できる人間です」というものだったと思います。
(結果として、信用できる私にお金を下さい、
というhidden messageもあったでしょう)
しかし、僕は上の3つのシニフィアンから
「この人はとても怪しくて全く信用できないな」
というシニフィエを見出したわけです。
ここで、「シニフィエ」と言っているのは
いわばhidden messageと同じですよね。
直接的にそれを伝えているわけじゃないですけれど、
言葉や言動が伝えてしまうメッセージが、hidden messageなわけです。
今回の場合は、
「Trust me」なんて言葉が、結局
「私は信用に値する人間ではありませんよ」
というhidden messageになってしまっていたわけですね。
ということは、案外
「伝えたいことを伝えるための手段(言葉や音声:シニフィアン)」
を使ったとしても、それが必ずしも、意図した
「伝えたかった内容(意味やメッセージ:シニフィエ)」
には捉えられない場合がある、ということですね。
ということは、
どういう表現方法を使って
どんなhidden messageを伝えるのか?
順序をもっと厳密にすると、
どんなhidden messageを伝えたいから
どういう表現方法を使うのか?
ということを考える必要が出てくるわけです。
例えば、特許翻訳で、これからトライアルを受験する
ときのことを考えてみましょう。
今までまとまった期間勉強をしてきた段階から、
トライアルを受ける必要のある期間に移るわけです。
その時には、履歴書や職務経歴書を
翻訳会社や知財系事務所に送るわけですが、
その時にあなたが伝えたいhidden messageは何なのか?
ということを考える必要がありますよね。
そして、そのhidden messageを伝えるための手段が
履歴書であり職務経歴書なわけです。
ここから先は、あまり僕から色々と書くと
自分で考える力が付かないので、あくまで例を挙げるだけにとどめますが、
例えば、hidden messageは
・私にトライアルを送って下さい
・私はこれだけの力がある翻訳者です
だったりするでしょう。
じゃあ、仮にこれを相手へのhidden messageにするとして、
どんなこと(シニフィアン)を使えばいいのか?
という話になるわけですが、
もちろん、履歴書に「私にトライアルを送って下さい」
なんて書くのはNGですよね。
それだと先程のギプス少年と同じになってしまいますからね。
そうじゃなくて、
・どうやったらトライアルを送ってもらえるのか?
・どうやったら信用できる翻訳者だと思われるのか?
hidden messageを伝えるためのシニフィアンは
十分に考える必要がありますが、これについては
答えは1つではないので、あなたのほうで色々と参考にしてみて下さい。
LinkedInなんかを使うのもいいかもしれませんね。
hidden messageという考え方を知っておくだけでも、
何かを見たり聞いたりしたときに、
本当の意味を知る(考える)機会が多くなると思います。
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