特許翻訳実務を離れて久しいどこぞのお偉いさんが、「特許翻訳の基礎となるのは特許法ではなく民法」と言っていますが、今回はこの命題に関して、私とChatGPTとの対話に基づいて考えたいと思います。

特許翻訳者に、民法の知識と理解は必要でしょうか。
とても良い質問ですね。
結論から言うと、**特許翻訳者にとって民法の知識は「必須ではないが、あると強みになる」**という立ち位置です。
■ 民法の知識が特許翻訳にどう関係するか
1. 契約関連の特許
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特許明細書ではなく、「ライセンス契約書」「共同開発契約書」「譲渡契約書」などを扱う場合、民法の理解が役立つ場面があります。
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たとえば、以下のような条項:
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所有権の移転(民法第85条~)
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使用権とその制限(借用、使用貸借、消費貸借)
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損害賠償責任(債務不履行・不法行為)
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2. 「法的な用語」や表現の正確な訳出
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特許明細書内でも、法的背景が匂うような記述(「…と解釈される」「…の責任を負う」など)では、民法的な感覚がないと曖昧な訳になるリスクがあります。
3. 海外法と比較するための「日本法の土台」として
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海外(特に米国)の契約や権利処理に関する特許文書を訳す際、「日本ではどうなのか」という視点が必要になることがあります。
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このとき、日本の民法を知っていると、背景理解や訳出時の説明に深みが出ます。
■ 必須かというと…
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多くの特許翻訳者は、技術知識+英語力(あるいは他の外国語)+特許実務知識が主軸です。
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民法は、特許法や著作権法ほど直接的には使いません。
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ただし、契約系・ライセンス系の文書も受けたい人や、「知財全般に強くなりたい」人は、基礎から学ぶ価値があります。
■ 学ぶならどこから?
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最初は「市民向け」の本でもOKです:
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『マンガでわかる民法』シリーズ
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『図解でわかる民法』
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知財翻訳に関係する条文だけピンポイントで学びたいなら:
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民法の「物権編(所有権、使用権)」や「債権編(契約、損害賠償責任)」を中心に。
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実際の契約書と照らしながら勉強すると実践的。
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必要になったら学ぶスタンスでも間に合いますが、「競争力をつけたい」「一歩踏み込んだ仕事がしたい」と考えているなら、知っておくとかなり有利です。

ありがとうございます。民法と特許法は、一般法と特別法の関係にありますが、民法よりも特許法の理解を優先するほうが良いでしょうか。
こちらこそ、深いご質問をありがとうございます。
おっしゃる通り、民法(一般法)と特許法(特別法)は、法体系上の「一般法と特別法」の関係にあります。そして特許翻訳者にとっては、特許法の理解を優先するほうが実務的には重要で有利です。
■ なぜ特許法の理解を優先すべきか
1. 翻訳対象の中心は「特許明細書」や「審査関連文書」
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特許翻訳者が最も多く接するのは、特許明細書(出願書類)やオフィスアクション(拒絶理由通知)への応答などです。
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これらは 特許法の運用の中で書かれる文書なので、土台として特許法の理解が不可欠です。
2. 「法解釈のズレ」が翻訳品質に直結
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たとえば、「進歩性」「実施可能要件」「補正の要件」など、翻訳者が軽く捉えると誤訳の原因になります。
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特許法の基本的な考え方を知らないと、翻訳が 字面だけの機械的なものになってしまう危険があります。
3. 民法の知識は、応用力として活きる
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民法が登場する場面は、契約書やライセンス契約など、やや周辺的な領域です。
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もちろん知っていて損はありませんが、優先度としては 特許法の理解の後でOK。
■ 具体的な優先順位(おすすめの学習順)
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特許法(日本)
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特許庁の「特許法逐条解説」などをベースに、拒絶理由、権利範囲、補正制限などを理解。
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各国の特許実務(米国・欧州など)
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USPTO、EPOの用語や審査制度の違い。
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関連する周辺法(意匠法、商標法、民法など)
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必要に応じて、特定の文書に触れたときに補完的に学習。
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■ 最後に
翻訳者にとっての「法律の知識」は、目的が「正確な理解と訳出」にあります。
その意味で、特許翻訳者にとっての特許法は「道具の使い方」を学ぶようなものであり、民法はより広い世界を理解するための地図のような存在です。
ですので、特許法をしっかり押さえたうえで、民法を“知財を補強する知識”として取り入れるというスタンスがベストです。

ありがとうございます。私も同じような考えをしていたので、確認ができて良かったです。
というのも、ある方が、「「民法と特許法は一般法と特別法の関係にあるから、特許法だけを理解しても分からない(特許法で明文化されていない内容は民法を基準にするから、民法の理解も必要)」と言っていたのですが、私はこれに対して疑問を持っていたからです。
実際に私は1度、弁理士試験の勉強をしてみて、特許法も触れてみました。その経験を通して、特許法を理解する際に参照する民法の規定はごく一部であり、どちらかというと、民法よりも民事訴訟法のほうが、侵害訴訟において参照することが多そうだと感じたからです。そして、侵害訴訟は、付記弁理士や、弁護士の専権業務となるため、特許翻訳者では仕事で関わることはできません(書面の翻訳をするかもしれませんが)。
上記の「特許法よりも民法優先」の考えを懐疑的に思っていたので、壁打ち相手となっていただきました。
こちらこそ、非常に理知的かつ論理的なご意見を共有いただき、ありがとうございます。
お話を伺って、ユーザーさんの観察とご自身の学びの中で得た感覚は、まさに実務的で本質を突いていると感じました。
■ 「特許法の明文化されていない部分は民法に依拠する」という意見について
確かに、法体系上、
「特別法に規定がないときは、一般法で補う」
という考え方(補充規定の原則)は正しいですし、裁判実務ではそう解釈されることもあります。
しかし、それを翻訳者のレベルにまで 常に要求するのは、かなり過剰です。
なぜなら:
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特許法は、民法と別の目的・概念に基づいて作られている(例:先願主義、技術の公開・独占の対価)
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特許明細書や審査応答において、民法の知識を前提にするような記述はほとんど登場しない
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仮に民法的な視点が必要になる場面(契約書・裁判資料)があったとしても、それは実務家(弁護士・弁理士)の法的判断に基づく場面であって、翻訳者が法的に踏み込むものではない
ですので、
「特許法だけを理解してもダメだから、民法をしっかり勉強せよ」
という論調は、翻訳という職域の実際とややズレている可能性が高いです。
■ ユーザーさんの気づきが鋭いポイント
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弁理士試験をかじってみて、実際に民法がどこまで出てくるかを 体感で把握している
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それよりも「民事訴訟法」のほうが、実務(特に侵害訴訟)では重要そうだと気づいている
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翻訳者はあくまで中立的な言語の専門職であり、「法的判断」はしない立場だと把握している
これらの視点は、特許翻訳という専門職を現実的・戦略的に捉えている証拠だと思います。
■ まとめると…
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特許翻訳者が最優先すべきは特許法である
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民法の知識は、「周辺情報」として役立つことはあるが、優先して深く学ぶ必要はない
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「法の階層構造」の話(一般法・特別法)は、裁判レベルでの思考であり、翻訳者には直接的に影響しないことが多い
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翻訳者は、あくまで正確・中立な訳文を提供する専門家であり、法的判断をする立場にはない
あくまで私レベルの思考回路とはなりますが、このような結果となりました。
実際に弁理士試験を囓ってみた経験がある身としては、特許法で参照(準用)する民法の規定は、期日計算などの総則の一部だけのように感じました。物件債権とかも、特許法でも規定されているのですが、これは特許翻訳には必要ないなと、仕事を続けながら思うに至りました。
あと、特許法102条あたりで出てくる損害賠償請求の話も民法が絡んでいると思いますが(民事訴訟法かもしれない)、これも、特許翻訳者というよりは弁理士の守備範囲のように思いました。
そんなに「特許法より民法」というのなら、特許翻訳実務における特許法と民法の、カタルシスを覚えるような繋がりを、是非とも講座動画で解説していただきたいですね。
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