人生を豊かにするためのTips

知っておくと何かと役立つ情報をまとめています     ※本ブログではアフィリエイト広告を使用してます。

旅行

新大阪~奈良をノンストップで結ぶ臨時特急「まほろば」に乗ってきた

 

2020年9月の4連休に、新大阪と奈良をノンストップで運転する臨時特急「まほろば」号の上り列車に乗ってきました。今回は、そんな「知る人ぞ知る」まほろば号の歴史と、簡単な乗車記をお送りします。

 

目次

JRの優等列車が走らない奈良県内で、超希少な「特急」である「まほろば」

奈良県は、日本で唯一、「JRの定期優等列車(特急・急行)が走らない都道府県」(ただし、モノレールしかない沖縄県を除く)ということは、鉄道マニアの中ではとても有名なことかもしれませんが、一般的にはあまり知られていません。

 

奈良県内にJRの優等列車が走っていたのは、2006年の3月に廃止になった「かすが」まで遡ることができ、この「かすが」は、名古屋と奈良の間を、関西本線経由で結ぶ、当時数少ない「急行列車」でした。

亀山から加茂までは、関西本線の中でも一番整備されていない「非電化単線」を通ることから、廃止末期は「快速みえ」と同じ、JR東海のキハ75系が、その6年ほど前までは、前身のキハ58・65(急行型ディーゼル)が使われていました。

 

その後、奈良県以外でも、岩手県や広島県で、それぞれ「急行陸中」や「急行ちどり/たいしゃく/みよし」といった、在来線のJR優等列車が廃止になった県もあるのですが、これらの県では一応「新幹線」が走っていて、これを特急列車に含めるのであれば、奈良県が唯一の、「JRの特急・急行列車が走らない県」として、14年以上君臨していることになります。

 

この理由としては、奈良県は近鉄(近畿日本鉄道)の路線網があまりに発達しすぎている、ということが挙げられます。奈良の観光の玄関口である奈良駅は、近鉄奈良駅とJR奈良駅で1キロほど離れていて、近鉄奈良のほうが便利がよく、そのほかの観光地へも、法隆寺を除いて近鉄のほうがアクセスがよいのが実態です。

 

それに加えて、近鉄は県内のほぼ全線が複線で、生駒や学園前、高の原、五位堂(香芝)や八木といった、大阪・京都へのベッドタウンにも、JRよりアクセスが便利。JRは大和路線(関西本線の奈良~JR難波間)こそ複線で、日中は15分ヘッドで快速が動いているものの、路線の経路なども含めて、近鉄にはずっと勝てていないのが事実(近鉄は有料特急がバンバン動いているのを見ても、その違いは明らかです)。

 

こういう事情もあって、奈良県内のJRではこれまでの歴史を紐解いても、「あすか」(名古屋~奈良~和歌山、「くろしお」の間合い運用)と「かすが」ほどしか、特急・急行列車が運転されないという、なかなか不遇の環境にあったのです。

 

ですので、今回の「まほろば」号というのは、単に大阪からのアクセス列車、という意味合いだけでなく、鉄道マニアには「普段特急が走らない奈良県で特急に乗れる、とても貴重な列車」という意味合いもあるのです。

 

実は、今回が初めてではない「まほろば」号の運転

「まほろば」号の小ネタとしてもう一つ欠かせないのは、実はこの列車、過去に一度運転されているんですよね。

 

それが、2010年にあった「平城遷都1300年祭」のときで、この年は奈良市をメインに、遷都関係のイベントが盛りだくさんということもあって、同じように、新大阪から奈良までノンストップで行ける「まほろば」号が運転されていました。

 

当時は、2020年の列車とは運転経路が違っていて、新大阪から大阪貨物線(「はるか」「くろしお」が天王寺に行くために通る短絡線)を通り、環状線内を通過。確か天王寺で運転停車をした後(多分客扱いはしていなかったはず)、ノンストップで奈良まで移動する、というスジでした。

 

このときは、日根野電車区の国鉄色381系6連が使われていました。これは当時、「やまとじライナー」「はんわライナー」など、通勤用のライナー列車で使われている、ほぼ波動用の列車だったのですが、なにせ国鉄色の特急型が奈良県内にやってくるわけですから、観光目的ではなくて乗車目的で乗った方も多かったと思います。

(私も、帰省に合わせて一度だけこの列車に乗ってみました。これが、大阪貨物線の初乗車でもありました)

 

 

ちなみに、この国鉄色381系ですが、この1年後には「やまとじライナー」が廃止され、完全に波動用に切り替わって、その数年後に廃止になったはずです。

 

スポンサードリンク

2020年版「まほろば」の概要

この、2020年版の「まほろば」は2019年から運転されていて、この年に開業した、おおさか東線の放出~新大阪間を通ることになり、2010年当時とは運転経路が変更になりました。

 

2020年は、コロナの影響で3月4月の他は9月の週末と祝日に運転され、

新大阪10時03分発 ~ 奈良10時53分着

奈良16時56分発 ~ 新大阪17時47分着

というダイヤ。どちらも、新大阪以西の新幹線との接続のために運転されているといっていいでしょう(東京方面から奈良に行くなら、京都で近鉄特急に乗り換えたほうが便利なので)。

 

車両は「くろしお」に使われている287系の3連で、いわゆる増結用の編成です。普段は運用の都合で車庫に置かれている列車を充当していると思われ、ある意味「間合い運用」の特急列車、と言っていいかもしれません。

 

新大阪方の2両(3号車、2号車)が指定席、奈良方の1両(1号車)が自由席。新大阪~奈良の特急料金は、自由席が1200円で、指定席だと1730円。

 

この料金は、大阪~草津を走る「びわこエクスプレス2号」と同じ料金なんですけれど、大阪~奈良は、近鉄特急を使うと指定席520円しかかからないため、どうしても割高に感じてしまいますね。

 

新大阪で新幹線と乗り継ぐ場合は乗継割引が適用されて、自由席600円、指定席860円になるのですが、これでも、近鉄と比べてしまうとまだ高く感じてしまいますね…。

 

なお、乗継割引の制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。

https://jiyuugatanookite.com/post-490/

なお、新大阪~奈良の運賃は970円ですが、関西圏の「大回り乗車」を使えば、例えば奈良~新大阪~大阪~天王寺、という経路で、新大阪から天王寺まで普通列車を使って移動すれば、470円の運賃しかかかりません。「まほろば」に乗るのが目的であれば、この「大回り乗車」を有効活用できないか、考えてみましょう。

 

実際に乗ってみた

一体、「まほろば」号の乗り心地や乗車率はどんななのか。実際に確かめるべく、9月4連休の間に指定席を予約して乗ってみることにしました。

 

特急券は、当日奈良駅の窓口で、乗車40分ほど前に急きょ購入。「進行方向左側の真ん中辺りの席」と伝えたら、座席の画面を見せてもらえたので、希望の席を指定することができました。

 

奈良駅の王寺・久宝寺・大阪方面ホームは2番線、3番線なのですが、「まほろば」号が運転される前の数本の快速列車は全て2番線から出発するので、「まほろば」号は、出発の15分ほど前には3番線ホームに入線しているようでした。

 

今どき、出発の5分前にようやく車内に入れる、という特急列車も多い中で、この「まほろば」号はなかなか余裕を持って乗車できるのが嬉しい点ですね。

 

乗車率は、指定席が平均2割程度。自由席は1割もなかったと思います。

これが指定席(2号車)。

こちらが自由席ですね。

 

指定席車両はみた感じ、「乗り鉄」と思われる雰囲気の方が大半で、奈良に観光に来た人だとおぼしき人は3人いたかどうか。私もそうなのですが、こういう列車に「乗るのが目的」の場合、指定席券を買って、列車名と座席が印字された切符を保管したいものなので、自由席に乗ることはまずないんですよね…。

 

乗り鉄の人は、私と同じ考えの人が多いのだと思います。自由席の乗車が少ないのは、コロナの影響で旅行をする人が少ない、というのも大きいでしょうが、「乗るのが目的だと自由席には乗らない」という人がそこそこの割合を占めているから、とも言えると思います。

 

ホームに上がったのが出発の10分ほど前で、この間に撮影を済ませます。

方向幕は、列車名が表示されない「特急」の表示が。波動用というか、汎用的な案内幕ですね。

 

車内の座席は、いたって普通のリクライニングシート。

リクライニングを最大限倒さないと、快適には感じないような座席でした。シートピッチは余裕がありますが、普段この車両が「くろしお」に使われているということは、この座席で3時間とか移動する…と思うと、自分は敬遠してしまうかもしれないと思いました。

 

 

 

いよいよ発車。奈良県内の全ての駅を通過するのは気持ちがいい

いよいよ定刻になり、扉が閉まって発車。

奈良の次から郡山、大和小泉、法隆寺、王寺と、大和路快速の全列車が停車する駅を全て通過していきます。特に王寺駅は、高田・和歌山方面に分枝する列車も含めて全てが止まるターミナルのような駅なので、ここを通過するときには言い様もない快感がありました。

 

奈良駅では、「まほろば」が出発する10分前に大和路快速が出発しているのですが、大和路線内では特に列車がつっかえることもなく、大和路快速以上の速さで大阪方面に向かって進んでいきます。

 

久宝寺でおおさか東線に入るわけですが、ここで一旦運転停車。1分ほどして発車したのですが、この線内は、朝夕に運転される「直通快速」以外全て各駅停車で、途中の駅に待避線・通過線もないため、前を走る列車を追い越せないことから、急にスピードが遅くなりました。

ノロノロ運転で、かろうじて停車をしないようなスピードで動いている区間もあったのですが、この路線も15分おきに普通列車が走っているので、その間に「まほろば」のスジを通すのは至難の業でしょうね。

 

近鉄と交差し、東西線と乗り換えられる放出も通過して、2019年に開通した区間を走行。淀川を渡る頃には、きれいな夕暮れ時を向かえていました。

 

結局、定刻どおりに大阪駅に到着。数少ない乗客がここからどこに向かったのか分かりませんが、私は13分後に新大阪を出発する「はるか」に天王寺まで乗って、すぐに奈良に戻りました。

 

 

「まほろば」号に将来はあるか?

一奈良県民として、新線開通後の「まほろば」に乗った感想としては、「観光用列車としての存在意義はやはり薄そう」というものでした。

 

一番大きな理由はやはり、「近鉄の存在」です。東京や名古屋、北陸方面から奈良に来るのであれば、新大阪まで出ずに京都で近鉄特急に乗り換えれば、近鉄奈良まで35分。中国地方や四国、九州方面から新幹線に乗って新大阪に着いたとしても、ここから大阪難波まで地下鉄御堂筋線に乗って近鉄に乗り換えれば、乗り換え回数こそ1回多くなりますが、1時間ほどで奈良に着けてしまいます。

 

近鉄のほうが特急料金が安いのは上に書いたとおりですし、特急に乗らなくても、大阪難波からだと座席に座れる場合が多いので、わざわざ特急に乗る必要もないとも言えます。

 

加えて、これも大きい要素なのですが、JR奈良駅は近鉄奈良駅より15分ほど、観光の中心地の反対側に位置するので、新大阪からわざわざ「まほろば」に乗って奈良に着いたとしても、そこから先が大変………、ということも大いにあり得ます。

 

こういう状況を考えると、

・わざわざ、週末に1日1往復しかしない

・新幹線の乗継割引を使っても近鉄特急の特急券より高く

・奈良に着いてからも15分以上歩かないと観光地に行けない

という条件が重なってしまっている「まほろば」号は、お世辞にも「観光列車」としてのステータスを確保するとは言えない、と思ってしまいました。

 

JRとしては、新幹線の玄関口である新大阪と、奈良行きの列車が出る大阪駅が分かれてしまっているのが致命的だとも言えるのですが、こういう条件を考えると、どうしても「普段使わない列車を間合い運用で使って収益を上げる」という構想でしか、阪奈特急は運転されないのではないかと思ってしまいます。

 

今後も、「まほろば」号は半ば試験的に、週末運行だけされ続けるとは思いますが、乗車率次第では自然消滅ということにもなりかねないのではないか、と思った乗車でした。

 

 

あなたにおすすめの記事はこちら!

-旅行