翻訳者に翻訳以外の仕事をさせる、ことについて思うこと

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昔から、「翻訳者に翻訳以外の仕事をさせていいのかどうか」みたいな話って、議論になりますよね。

 

基本的に、翻訳者の業務っていうのは「翻訳とそれに直接付随する業務」、例えばコメントを残すっていうものですよね。

 

これ以外の、例えば「訳文を特許明細書のレイアウトにする」とか「段落番号を付ける」とかは、本来は翻訳者の仕事ではなく、その後工程で別に取り組む必要がある業務です(あと、個人的にですが、コメントした部分をハイライトする、というのも、翻訳ソフトと訳文のワードファイルと原文のPDFを見比べて、別に対応しないといけない業務なので、翻訳業務ではないと考えています)。

 

 

この問題についての基本的なスタンスとしては、「業務委託契約において明記されていない業務は、本来すべきじゃない(対応義務がない)」という考えだと思うんですよね。

 

というか、大多数の翻訳者はそういう風に主張しています。

 

 

僕も、この考え方には大賛成なんですけれど、最近、この主張をする際の、別の理由って存在するよなあ、ということを考えるようになりました。

 

 

それは、「雑務に時間を割くことで本来の職務の生産性が下がる」というものです。

 

 

考えて欲しいのですが、翻訳作業っていうのは頭を使いますけれど、「段落番号を付ける」とか「特許出願様式に沿って訳文を再配置する」っていうのは、頭を使わない作業なんですよね。でも、改行の位置とかWordの余白とかの設定を、いちいちしないといけないわけです(「このレイアウト様式ファイルに訳文を貼り付けて下さい」と言われることもありますが、それに貼り付けたところで、貼り付ける前の体裁がそのまま反映されてしまうことが大多数なので、結局目視かつ手動で確認しないといけないのが普通です)。

 

これ、正直にいうと、「脳みそのメモリを余分に食っている」状態なんですよね。

 

分かりやすく言うと、翻訳作業をしているときに「今日の夕食どうしよう」「買い物に行って何を買おう」みたいなことを考えるのと、同じ状態なわけです。

 

翻訳以外のことを考えると、どうしても目の前の原文や訳文と向き合えないことが多くなってしまうわけじゃないですか。

 

で、こういう状態になると、訳文の精度もちょっと落ちてしまいますよね。

 

 

ただ、これって「訳文の体裁も整えて下さい」って言われると、そうなってしまうのは仕方がないと思います。だって、本来翻訳者の役務でない仕事を勝手に上乗せして、翻訳者の脳みそに余計な負担がかかってしまって本業に集中できなくなってしまうわけですから。

 

 

僕が昔勤めていた会社では、清掃業者に外注するお金がなかったのか、オフィスのトイレ掃除を新入社員にさせる、という慣習?がありました。でも、そのためにわざわざ30分から1時間早く起きて出社したところで、本来の売上げに関係する業務の生産性は上がらないわけですよ。

 

僕が朝弱いというのもありましが、機嫌は悪いわ頭も眠たいままだわで、仕事が始まってからも集中できないことが多かったんです(あと、当時の会社は不要な雑務が多くて(電話取りとか)、それに対応しないといけないので自分の仕事がおろそかになってしまう、ということもありました)。

 

 

訳文の体裁チェックとかは、正直翻訳者の生産性を蝕む「余計な仕事」だと思いますし、僕はその仕事をすることで、本業に割ける時間も減ってしまい、結局悪循環に陥ってしまうことを、この仕事を続ける中で理解しました。

 

今でも、そういうことをさせる会社は一定数存在しますが、正直な話、こういう余計な仕事までさせるのであれば、翻訳者本来の生産性や仕事のアウトプットが下がってしまっても、相手は文句言えないですよね。

 

プロ野球選手が、球場の芝の手入れをしますか?って話ですから。

 

 

ちなみに、この手の「雑務」はマクロを組んで自動化することができる、という意見も一部ありますが、それは半分机上の空論で、いくらマクロを複数用意して実行しても、そのマクロに引っかからない「例外」が存在してしまうので、結局最後は目視での確認が必要になってしまって、上で書いた状態に戻ってしまう、というのがぶっちゃけた話です。

 

 

 

 

 

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