ときどき、日本語で書かれた明細書(日本企業が日本語で出願しているもの)と、その公開対訳を見ることがあります。
日本語で書かれた特許明細書には独特の表現が使われていることが多いですが、日本語特有の「乃至」という表現も、英語にする時は注意しないといけないでしょう。
「乃至」が使われるのは、大きく分けて以下の2通りの用法です。
① 膜厚は5μm乃至10μmであってよい。
この場合の「乃至」の意味は、「~から~まで」の意味(英語だとfrom…to…)で、これはまあ分かりやすいかなと思います。
で、問題は2つ目の用法で、例えばこんなものですね。
② 金属微粒子は化学蒸着乃至物理蒸着により付着させてよい
この「乃至」の意味を「and」の意味で捉えて訳されている場合を散見するのですが、手元の広辞苑を引いてみると、
乃至-
①数・階級・種類などを示すときに上と下との限界を示して、中間を略すのに使う語。…から…にかけて。「3人―5人」
②または。あるいは。「金―銀」
と、andではなくorの意味でこの言葉は用いられる、という風にきちんとかかれているので、やはり普通は、「or」の意味で捉えて、そう訳出するのが自然な流れなのかなと。
ただ、原文を書いた人が「及び」の意味で使っている………可能性もゼロではないと思うので、その可能性がある場合は、きちんとコメントを残して、「and」で訳出するべきなのかな、なんて思いますね。
が、パリルートではなくPCT出願であれば、コメントを残したとしても原文とおりに訳出するのが業務上優先されるので、コメントを入れて「and」と訳出しても、PCTであればマズい対応になる気がしますし、コメントを入れずに「and」と訳してしまうのであれば、それは翻訳者の理解力不足なのかなあ、なんて傍目からは思ってしまいます。
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