英語の時制って面倒ですよね。
最近、チェックの仕事をしていてよく見るのが、「本発明者らは、●●ことを見出した」という日本語を英語にしたときの時制のブレです。
「本発明者らは、成分Aを従来の組成物に添加することにより、課題が解決されることを発見した」という日本語を英語に訳すと、どうなるでしょう?
僕なら
The inventors found that adding the ingredient A into the conventional composition solved (could solve) the problem.
のように訳します。
まあ、細かい表現のバラエティは置いておいて、ですよ。
that節の中にある動詞の時制は、主節に合わせて過去形にするのが自然に感じるんですよね。
ただ、この従属節の時制を、日本語原文に引きずられて(?)現在形で表現している文章を、よく見かけるんです。しかも、一度や二度ではなく、もう何十回も、です。
これ、もしかしたら自分が間違っているのか?ということで、改めて調べてみたんですよね。従属節の時制が主節のそれに引きずられずに、現在形を取る場合っていくつかありますから、それを改めて調べ直してみました。
出典は、表現のための実践ロイヤル英文法の「第20章 時制の一致・語法/第2節 時制の一致の例外」です。
<直説法の時制の一致の例外>
A:不変の真理などを強調する場合
①不変の真理/The balloon rose because helium is lighter than air.
※話し手が、伝える内容に自信がなかったり、特に真理や真実であることを強調する気持ちがない場合には、時制を一致させておくのが普通である。
②ことわざ/Too many cooks spoil the broth. (船頭多くして船山に上る)
B:今も当てはまる事実を言う場合
Did you know the film is now out in DVD?
I was told that eventually I will have to have surgery.
C:比較を表す場合
She said that in the late 1960’s crossing the roads of London was not as perilous as it is now [had not been as perilous as it was then].
D:歴史上の事実を表す場合(※常に過去形で表す)
His research proved that modern humans coexisted with Neanderthals for thousands of years.
この中で適用可能な根拠を挙げるとすれば、Aの①(不変の真理)、またはB(今も当てはまる事実)になると思います。
でも、特許明細書に記載されている出願者の取り組みと主張は、数学の定理や物理学・化学の原理、法則とは違って「不変の真理」ではありません。なので、考え得る根拠はBの「今も当てはまる事実」になるかと思います。
ただ、その根拠をもとに考えた場合でも、書籍から引用した上の例文とは違って、特許明細書の該当部分で発明者は、「今現在もできる」ということを、強調していないように思えるんですよね。当然、特許明細書に書かれている内容は実施例に基づいて当業者が速やかに再現できなければならないものですが、該当部分の日本語明細書のニュアンスは、「発明者らは、●●によって実際に課題が解決されたことを発見した」という、あくまで自身の研究開発の結果を意味するものではないのか、と思います。
まあ、あれこれ頭で考えても分からないので、実際に出願されている英文明細書(日本語から翻訳したものではなく、恐らくネイティブが書いたであろう英文明細書)をいくつか調べてみました。
するとやっぱり、found thatの従属節は過去形になっているものが多いですね。
The inventors found that IRS-2 protein levels were increased dose dependently in liver and fat in ob/ob mice treated for 6 weeks with PTP1B antisense.
(US20030108883A1)
他には
The inventors found that a bimetallic powder, having separate platinum particles and separate ruthenium particles produced a better result than a platinum-ruthenium alloy.
Both platinum and ruthenium are used in the catalytic reaction, and the inventors found that it was important that the platinum and 19 WO 97/21256 PCT/US96/19731 ruthenium compounds be uniformly mixed and randomly spaced throughout the material, the material must be homogeneous.
(共にAU721401B2)
例示にしては少なすぎるかもしれませんが、やっぱりこれが自然な表現ではないのかなと思います。
英文を読んだときに抱く違和感は、日本語で考えたり文法書を読んでも理解できないものかなとも思うので、最後は自分の感覚というか、英語の絶対語感みたいなものに頼らざるを得ないのかもしれませんが…
スポンサードリンク
jiyuugatanookite.com