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翻訳業で目標年収を設定することに意味はありません

「独立して食っていくためには、目標年収を設定しましょう」っていう風に、巷では言われていると思います。

 

けれど、独立して7年くらい仕事をして気づきました。

 

目標年収を設定することに意味はありません

 

むしろ、時と場合によっては、目標年収を設定してしまうことで逆効果になってしまうことも。

 

今回は、この話をしていきたいと思います。

 

なお、念のため断っておくと、駆け出し1年2年くらいの間であれば、目標年収は設定したほうがメリットが多いと思います。が、同じ仕事を続けて3年、5年、7年………と時が経っているのであれば、メリットはそう多くはないと考えています。

 

ですので、翻訳の仕事を駆け出しでしている方は、ここから後は読まなくても大丈夫です。

 

では、以下で順に理由を説明していきます。

理由その①:目標達成のための外部依存度が大きすぎる

ずばりこれが一番大きな理由ですが、翻訳業という仕事柄、自分が元請けになって顧客を引っ張ってこれないのであれば、仕事分野や量、取引先を自分で選びづらい(翻訳会社や特許事務所)ため、いくら「今年はこれだけ稼ぐ」と設定しても、状況次第では、その目標を達成するための筋道が全く立たないことがあります。

 

ここ数年だと、AIを導入することによる事実上のコストカットなどによって、数年前と比べて、「同じボリュームの仕事でも実入りが少なくなる」というような状態になっています(稼働時間の変動はここでは考えません)。

 

なので、ある程度長くこの仕事をしていると、数年前と比べて「あ、時給換算すると単価が下がったな」ってことに、気づく場合もあると思います。

 

あるいは、取引先からの仕事がどうしても減ってしまうとか、逆に多く依頼は来るけれど、処理のキャパの問題で全部は請けられない、とか、そういう現実的な問題もあります。

 

こういう要因って、自分ではどうしようもできないことなので、仕事が減ってしまったら目標額を下方修正せざるを得ない、とか、タイミング悪く、仕事が減る時期と増える時期が生じてしまって、年単位での実働時間が減ってしまうとか、「外部依存」の要因が、この仕事だとどうしても増えてしまいます。

 

端的に言ってしまえば、「相手次第の要素が多いのに、主体的に目標年収を設定してクリアするのに無理がある」という、構造上の問題がある、ということです。

 

身も蓋もないことを言ってしまいますと、ある程度の分野が対応できて、仕事の質も一定以上のものをコンスタントに達成できていて、多めに取引先を確保していて、稼働時間を増やすことができれば、目標年収なんて(額にもよりますが)達成するのは、そんなに難しくないはずです。

 

だって、この仕事は「単価×1日の処理量×稼働日数」という、単純な掛け算で収益の概算ができてしまう仕事だからです。逆に言えば、この3つの要素のどこかの値が下がるのであれば、他の2つの要素の値を大きくすれば、ある程度のリカバーはできる、ということです。

 

もう少し深く突っ込んで言うと、「これくらいの実働日数でこれくらいの年収を確保する」という設定をするのであれば、目標設定をすることと、具体的な戦略を考えることに意味はあると思うのですが、その場合でも、もしかしたら翻訳以外の仕事をしたほうが時間当たりの単価が高い、という場合もあります。

 

翻訳の仕事を数年しているのであれば、単に収入を増やしたいのであれば、翻訳という仕事にこだわる必要はないんじゃないか、というのも理由ですね。

 

理由その②:そもそも単年度でお金の動きを考える必要がない

これも、数年間仕事をしたことがある人であれば分かると思いますが、何年かでも仕事を続けていれば、それなりに貯金もできるし、そういうのをひっくるめて「これからどうしていこうかな」ということを考えることになると思うんですよね。

 

翻訳の仕事に限って言うと、自営で人を雇うこともなかったら、家庭で使うお金は出ていくと思いますが、そういう状況になかったら、そこまでお金の工面には困らないはずですし、むしろ「税金をどうやって減らそうか」みたいなことを考えるようになると思うんですよ。

 

僕も実際は、3年ほど前まで毎年「目標年収」は一応設定していましたが、2016年に翻訳だけで850万円くらい稼いで、翌年の課税額にびっくりしたことがあるんですよね(事業所得が450万円くらいで、課税所得は300万円くらいだったと思います)。

 

なのでまあ、こういうことも実際に経験しないと分からないことなんですけれど、ある程度貯金が増えてくれば、単年度の稼ぎに合わせて、既に手元にある元本をくっつけて色々と考えるようになって、

「最悪数ヶ月(数年間)仕事しなくても生きていけるな」とか

「不動産買うとしたら、これくらいの額を頭金で用意できるな」とか、

どこまで実行に移すかは置いておいて、具体的なイメージもなく「目標年収」を設定していた時期よりも、考えられることが広がりますし、出口戦略や、実行に移すためのプロセスにも選択肢が増えるんですよね。

 

駆け出しであれば、当座のキャッシュを確保して貯金を増やす、というのが大事になるので、目標年収に加えて(あるいは、それよりも)「目標貯金額」とかを設定したほうがいいかとは思うのですが、数年間それを続けていけば、その元手を使って何か新しいことを始めてみてもいいですし、手の着けようがないお金を金融商品に突っ込んで転がしてみたりすれば、それだけで金利分くらいの儲けは得られることがあります。

 

そういうステージまで来れば、「別に単年度で収入の目標設定をする必要はない」ということにも気づけると思いますし、「今手元にある資産を、どうやって更に殖やして行くか」ということも考えるように、自然になってくると思います。

 

理由その③:具体的な使い道がないのに収入目標を立てる意味がない

これは①の最後で少し触れたことと重なるんですが、特にお金の使い道がないのに目標年収を設定する、っていうのは、経験してみたら分かりますが、すごくむなしいことです。

 

守銭奴、というのか分かりませんが、お金が手元にあることで幸せを感じられるような状態だと、税金を払うことにも抵抗がありますし、他のことにお金を使うことにも抵抗を持ってしまうと思います。

 

あるいは、「今年はこれだけお金が出て行くから、稼ぐ必要がある」みたいな状態だといいのですが、そういう環境にいなければ、「今年はこれくらい、こういうことにお金を使おう」といったことを考えた上で、目標の年収を設定すべきだと思います(まあ、労働集約的な仕事であるために、まとまった休暇を取ってお金を使うのであれば、その休暇の間は仕事ができないので、そういうことまでひっくるめて、どうやって目標を達成するのかを考えないといけないわけですが…)。

 

まあ、最後は何がいいたいのかというと、具体的な使い道などがないのに設定する「年収目標」なんてものに現実味はないので、そんなことになるのであれば、お金以外の目標を設定して行動したほうが、よっぽど有益なんじゃないか、ということです。

 

まとめ

今回は書き殴っているので、あまり内容にまとまりがないかもしれませんが、数年間翻訳の仕事を続けているのであれば、無意味な「目標年収」なんて設定せずに、別の内容で目標を設定して、年間の稼ぎはおまけでクリアする(気づいたら超えてた)、くらいのノリで仕事をすればいいんじゃないか、と思います。

 

僕も、今でも収入と支出の管理表をExcelで作ってまとめていますが、数年前までは、年間の売上がどれくらいになって、支出はこれくらいだから、書類上はこれだけ1年でお金が増えるな、みたいな計算をしていましたが、今年に入ってからはむしろ、貸借対照表のような書類を別に作って、「今手元にいくらお金があって、どれくらい売掛金があって、買掛金があるのか」ということを意識するようになりました。

 

要するに、数年間の取り組みを積分して考えるようになった、ということです。

 

 

何年も翻訳の仕事を続けているのであれば、年間での目標を決めるより、より長いスパンでお金の動きを考えるほうがいいのではないかと思います。

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