企業に所属して厚生年金に加入し、退職後に手厚い年金を受け取れる会社勤めの方とは違って、フリーランス(個人事業主)は、(自分のスキルと時間を切り売りし続ける場合、)毎月の稼ぎから毎月の支出、子どもの養育費、緊急時の支出、退職後に必要な貯金などを用意する必要があります。
一方で、昨年世間を賑わせた、自動車メーカーの「終身雇用が維持できない」話や、「退職後に貯金2000万円が必要」といった話など、会社勤めの属性であろうとなかろうと、「会社(や事業)のサイクルよりも寿命が長くなっている」時代であることも鑑みて、仕事を終えた後の収益源や貯金の確保を、誰もが考える必要がある世の中になったこともまた事実です。
私は、2012年の春に就職をしてその夏に退職、翌年1月から独立して、2015年の4月頃から特許翻訳を主たる事業ドメインにしてフリーランスを続けてきました。私自身は家族(子ども)もおらず、養育費などはすぐに必要ではないのですが、親の老後のことを考える必要があること、また、会社勤めでよくあるボーナス支給などが当然ながらないことから、2019年の4月頃から、「自分のスキルと時間を切り売りする」ことに依存せずに、資産運用に取り組み始めました。
今回は、似たような境遇におられる方や、同じような悩みをお持ちの自営業者(特に翻訳者)向けに、私がこれまで調査したことと、それを踏まえて下した判断についてまとめておきたいと思います。
将来を見通したお金の管理で最初に出てくる3つの候補とは?
私が資産運用を始めるに当たって、色々と調べているときに出てきた制度は3つありました。それが、①iDeCo(個人型確定拠出年金)、②小規模企業決済、そして③NISA(つみたてNISAを含む)でした(厳密に言うと、②は「資産運用」には当てはまらないと思うのですが、ここでは便宜上この言葉を用いて話を進めます)。
現実的な話をすると、フリーランスで仕事をしながら、将来必要なお金を確保するのであれば、この3つの方法から選ぶ、あるいはこれらを組み合わせて利用するのが一般的かと思います(他にも、金を保有するとか、値下がりのしにくいブランド品などを保有しておく、というのもあるかと思いますが、あまり現実的ではないと思うので、ここでは割愛します)。
私も、手元にあるお金を使うのであれば、この3つの方法から選ぶのが妥当と考えて、調査を進めました。で、それぞれ特徴や制約が当然あるわけですが、それらは簡潔にまとめると、以下のようなものでした。
①iDeCo(個人型確定拠出年金)
特徴
・私的年金の1種で、加入は任意
・手持ちの資金を利用して(拠出して)金融商品を自分で運用
・掛金は60歳になるまで拠出し、60歳を超えると給付金として(掛金+運用益を)手にすることができる
・税制上の優遇措置がある
参考:iDeCoってなに
②小規模企業決済
特徴:
・名前のとおり、小規模企業の経営者や役員向けの制度であるが、個人事業主でも利用可能
・積み立てによる退職金制度
・毎月、1,000円~70,000円の間で掛金を設定(500円単位)。掛金は範囲内であれば柔軟に変更可能
・退職又は廃業時に、一括又は分割で積み立て額を受け取ることができる
・毎月の掛金を所得から控除できるため、節税対策になる
参考:小規模企業決済とは
③NISA
特徴:
・年間120万円までを、非課税枠として指定された金融商品を購入するのに利用できる(その商品を運用して利益が出た場合でも、非課税枠内での購入であれば、無課税になる、ということ)
・手続きをすれば、必要なときにいつでも積立金と利益を引き出すことができる(その際に所定の手数料が必要)
・証券口座を開く必要がある
・5年間という期間限定の制度(2019年に、更に5年間延長されることが決定)
※つみたてNISAの場合は、年間の非課税枠が40万円で、期間が20年間という違いがある
参考:NISAとは?
これら3つの特徴は、おおざっぱに比較するとこのようになります。
NISAを利用することにした理由と決め手
これら①~③を比較して、私は結局③のNISAを利用することにしました。
その理由とは簡単に言うと、
・①と②は、積み立てたお金の引き出しが制限される(例えば、60歳を過ぎないとできない、など)
・②はあくまで節税対策のものであって、毎月積み立てた額が引き下ろし時に(金利や運用益によって)増えることはない(つまり、手元にお金を残していると所得税がかかってしまうので、一時的に非課税領域に移す、という対策)
・③は、インデックスファンドという、様々な株式の銘柄を組み合わせた商品を毎月購入し続けることで、そのまま手元にお金を残しておくよりもお金は増える可能性が高い(当然、同じだけ減る可能性もある)
・かつ、③は必要なときにお金を引き出すことができる
という4つでした。
なので、このiDeCo、小規模企業決済、NISAの中からどれを選ぶか、というのは、1人1人が置かれている環境によって答えは大きく変わってくるでしょう。もし私に子どもがいれば、当面必要なお金が多くなるでしょうから、③は使わない可能性もあります。また、自分が若くて、30年間お金が引き出せない=ただのリスクでしかない、という判断もありました(それよりは、NISAを使って5年間である程度お金を増やし、それを更に別のものに投資していくほうが現実的ではないか、という判断もしました)。
結局のところ、私自身の環境を考えると、NISAが一番柔軟に使えて、自分にとってはリスクが少ない、という判断のもとで、この行動をとったことになります。
これが、自身の年齢や家族構成、家族を取り巻く環境によっては、iDeCoや小規模企業決済を利用するほうがベターな場合もある、ということです。
まとめ
あまり、一般論としての結論めいたことは書けないのですが、自営業で、労働収入以外の方法でお金を増やしていくのであれば、iDeCo、小規模企業決済、そしてNISAの中から、自分に合った制度を活用するのがいいのではないかと思います(厳密に言うと、小規模企業決済では、お金を増やすことができませんが)。
結局のところ、こういう制度を利用するにあたっても、
・リスクを取ってでも、お金を増やしたい(増やす必要がある)のか
・単に、目先数年での節税対策として利用したいのか
・お金を増やす目的は何なのか、その制度を使う理由は何なのか
ということを、制度の仕組みを調べた上で自分なりの結論を出して判断しないと、意味のないものになってしまうと思います。
スポンサードリンク
jiyuugatanookite.com