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Bothの使い方でよく見られる誤用例(「科学論文の英語用法百科」より)

仕事の合間に読み進めている「科学論部の英語用法百科(1)~よく誤用される単語と表現」の中で、「なるほど」と思ったチャプターがありました。

 

 

そのチャプターが、第28章の「both」について。

 

一体、どんな使い方が間違っているのか。本に載っている内容を元に、ここでも解説していきたいと思います。

 

誤って二つの物事の関係を示すために使用される場合

本で用いられている誤用例としては、以下のようなものがあります。

[1] Both of these terms agree.

[2] Both schemes are equivalent.

[3] There is a difference between the delay times for both sensors.

※括弧内の数字は、書籍の中で割り振られている数字とは必ずしも一致しません。

 

では、上の表現は、なぜ「both」を用いるのが不適切かといいますと。

 

その後の解説を読み進めていくと、このようなことが書かれています。

一般に、bothは、それが表している二つのものに関して述べられている内容がその二つに個別に当てはまる場合にのみ、適切に用いられる。(中略)動詞が表す動作や状態が、bothが(代名詞の場合)指している二つの名詞、または(形容詞の場合は)修飾している二つの名詞に対して個別に当てはまるということである。

 

………分かるような、分からないような、という説明の仕方ですよね。

 

僕は一度読んだだけでは分からなかったのですが、言い換えると以下のようになります。

bothが適切に用いられるのは、”Both A and B are C.” のような状態や動作を表す場合である。

 

つまり、「内容が個別に当てはまる場合」というのは、Bothが指し示すAとBの2つがそれぞれ、C(という状態、あるいは動作)に当てはまる、ということを意味します。

 

更に言い換えれば、

bothが適切に用いられる場合というのは、

“A is (does*) C.  B is (does*) also C.”

(*does means any verb)

という関係が成立している場合にのみ、bothを用いた表現で言い換えることができる

ということになります。

 

これを踏まえて、上で例示した[1]~[3]の表現を見てみますと………

 

[1]は、「両方の用語が一致する」という意味、つまり「A is B」のような意味合いで用いられているため、bothを用いるのは不適切。

[2]も、AとBが等しい対応関係にある、という意味なので、不適切。

[3]も、A and B are Cという対応関係にはありません。

 

ので、これらのような用い方は不適切だ、ということになるわけです。

 

ちなみに、[1]~[3]を適切に表現すると、一例としては

(1) These two terms agree.

(2) The two schemes are equivalent.

(3) There is a difference between the delay times for the two sensors.

というもので、bothを用いずに、単に「2つの」という表現にすればよい、というものです。

 

なお、[1]の表現が正しいと仮定すると、

The first term agrees, and the second term agrees.

という風に表現し直すことができる(=agreesの後にCが隠されている)ということになるのですが、Cが隠されているというのも変なので、bothを用いるのは不適切、ということになります。

 

 

抱いた違和感を言語化して理解するには

この本は、2017年の秋頃に買ったはずなので、もう2年以上、手を付けずにいたのですが、最近は英訳やそのチェックの仕事を請けることも増えてきたので、徐々に読み進めることにしています。

 

この本を読んでみて思うのは、僕が読み進める限りでは、

1:英文を読んで明らかに誤用であることが分かる、理由もある程度説明できる

2:英文を読むと、文法的に違和感を覚える、あるいは表現が不自然だとは思うが、なぜかを説明できない(あくまで感覚的には分かる)

3:なぜ、英文が間違っているのかが理解できない

の3種類にコンテンツが分けられるように感じているのですが、このbothに関しては「3」に分類されるものでした。

 

一口に「英文法」と言っても、個別の単語の適切な用法については、大学受験までの勉強でも、きちんと体系的に理解してこなかったように思うので(僕の場合、ラジオ英語のテキストを通して、受験勉強以前にネイティブの(?)英語に沢山触れてきたので、あくまで感覚的に自然か不自然かしか分からないものが多い)、こういう本で、客観的に英語(特定の単語)について勉強できるのは、なかなか貴重だなと思っています。

 

 

ただしその一方で、日本語を読んだときに、「これはこういうことなんだろうな」ということを、字面ではなくより正確な意味で(正確なシニフィアンとして)既に理解できている可能性もあるので、こういう本を読んで、逆に変な思考プロセスが形成されてしまわないかも、やや気がかりにはなるところです。

 

(和文英訳で必要な思考プロセスは、今回紹介したような「間違った英文を読んで、どこがどう間違っているのかを理解する」ものではないので、レビュー時には役立つと思うのですが、日本語を読んで英語でアウトプットする、という作業の際には、「AとBが一致する」のような意味を正しく理解して、正しく英語でアウトプットできることが重要なので、もともと感覚的に「正しい英語」をアウトプットできるのであれば、こういう風に「日本語を通して英語をメタ理解する」ことが、ややプロセスとしては煩雑になるのではないか、と思いました)

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