フリーランスをやっていると、どうしても避けられないのが確定申告をはじめとする税金の話です。
確定申告(所得税の計算)にあたって最低限必要な理解は、「売上」「経費」「所得」の3つである、ということは随分昔のブログ記事でもまとめましたが、今回はこれらに加えて、もう1つ合わせて理解しておきたい大切なキーワードについて取り扱います。
それが、どこかで聞いたことがあるかもしれない「控除」というキーワードです。
そもそも「控除」って何?
「控除」っていう言葉は、普段別の環境であまり使う機会がないこともあって、いまいち馴染みにくい言葉なのではないかと僕は勝手に思っています。
手元の広辞苑第九版(電子版)を引いてみると、
「金額・数量などを、さしひくこと。ひきさること。多く、税金の計算などでいう。「扶養―」
という簡単な説明だけがされていますが、どうやらこの言葉は主に、税金計算の分野で使われる模様。どうりで、他の機会に用いることが少ないわけですね。
さて、この「控除」という言葉、僕も独立当初は意味が分からずちんぷんかんぷんになっていました。というのも、この言葉は「何を、何のためにどこから(何から)控除するのか」が分かりづらいからなんですね。
ですが、数年間フリーランスとして仕事をして、確定申告も自分でやってきた身として、今はようやく、この言葉の意味をはっきりと理解できるようになりました。
「控除」とは、「手元に残ったお金(=所得)から、更に一定金額を差し引く(控除すること」(=その、控除が終わった段階の金額に所得税がかかる、ということ)なんだ、ということです。
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一番簡単な「基礎控除」
抽象的な話をこれ以上続けても分かりづらいので、ここからは、確定申告の際にどんな「控除」を使えるのかを、実際の例を確認しながら理解を深めていきましょう。
まず、フリーランスであれば(本当は、フリーランスだけでなく会社員(サラリーマン)も)誰でも適用される控除が、この「基礎控除」です。
上にも書いたように、「控除」とは「(所得税がかかる)所得から、更に一定金額を差し引く」ということです。
基礎控除は「38万円」と決まっていますから、一年間の所得(=売上-経費)から、まずはこの38万円を差し引く(控除する)ことができる、というわけです。
例えば、フリーランスとして年間売上が500万円、経費が150万円だとすると、所得は350万円となります。
単純には、この350万円に対して所得税がかかる、と考えてしまいがちですが、ここから更に、この基礎控除や他の様々な控除を適用して(差し引きをして)、最終的な金額に所得税がかかるということになります(この、所得から控除を適用した金額を、課税所得と言うことがあります)。
この場合、350万円-38万円(基礎控除)=312万円に、所得税がかかるということになりますね。
それでは他に、どんな控除を利用することができるのでしょうか。
他に利用できる控除一覧
以下、全ての控除を説明するのは大変なので、多くのフリーランスに当てはまるであろう控除の種類についてまとめます。
①青色申告特別控除
フリーランスが開業届を出すときに、白色申告か青色申告を選ぶことができます。これらの違いの詳しい説明は省きますが、より複雑な青色申告の場合、10万円または65万円の「青色申告特別控除」を適用することが可能です。
例えば、上のケースにおいて青色申告で確定申告をしている場合、65万円の控除がてきようできるとすれば、
350万円-38万円(基礎控除)-65万円(青色申告特別控除)=247万円
この247万円が、課税所得となります。
②医療費控除
病院に行って治療を受けた、手術を受けた、あるいは薬を処方してもらった、という場合でも、控除を適用できる場合があります。また、自身だけでなく配偶者や親族の各種治療費などの合計額で計算することが可能です。
ただ、これは医療費が1年間(1月1日~12月31日)で、以下の計算をする必要があります。
実際に支払った医療費の合計額-(A)の金額-(B)の金額
(A)保険金などで補填される金額
(B)10万円(年間総所得が200万円未満の場合は、その5%の金額)
つまり、保険金などの補填がないシンプルな場合を考えると、「1年間の医療費が10万円以上」の場合に、この医療費控除を利用できる、ということですね。
例えば上のケースの場合、医療費が1年間で15万円かかり、保険金は補填されなかった場合、15万円-10万円=5万円、を医療費控除として適用することができる、ということです。
ですので、
350万円-38万円-65万円-5万円(医療費控除)=242万円
が、課税所得になるわけです。
③社会保険料控除
続いては、国民年金や国民健康保険を納入した分も、控除にすることが可能です。
もし、これらを合わせて30万円を支払ったのだとしたら、上のケースの場合
350万円-38万円-65万円-5万円-30万円=212万円
が、課税所得となりますね。
④寄付金控除
寄付金と聞くとなんだか取り組む機会の少ない善意活動のようなイメージがありますが、一番分かりやすいのはふるさと納税ですね。
ふるさと納税額から2000円を差し引いた金額を、寄付金控除として適用することができます。
ふるさと納税を3万2000円でして返礼品をもらった場合、3万円を寄付金控除として適用することができます。
上のケースだと、
350万円-38万円-65万円-5万円-30万円-3万円=209万円
となります。
⑤配偶者控除
配偶者がいる場合、38万円を控除することができます。
上の例は、独り身のフリーランスを想定しているので今回は控除はしません。
⑥扶養控除
子どもなど、「扶養親族」がいる場合は、こちらも38万円の控除を適用することができます。
⑦小規模企業共済等掛金控除
小規模企業決済とは、フリーランスのための積み立て共済金のようなものです。このような決済金を払っている(積み立てをしている)場合、この全額を控除に適用することができます。
もし1年間で12万円を積み立てているとすれば、
350万円-38万円-65万円-5万円-30万円-3万円-12万円=197万円
となりますね。
※小規模企業決済の詳細は、こちらをご確認下さい。
こんなに「控除」には種類があるんです!
他にもいくつか控除の種類はあるんですが、多くのフリーランスが当てはまるであろう控除は、基礎控除の他には以上の7種類ではないかと思います。
つまり、上のケースで言うと、所得は350万円だったけれど、ここから控除を適用していって、最終的に所得税がかかるのは、197万円だ、ということですね。
ちなみに、197万円に対する所得税率は「10%、更にその金額から9万7500円を引く」という風になっているので、
197万円×10%-9万7500円=9万9500円
この金額が収めるべき所得税額、ということになりますね。
仮に、350万円から基礎控除の38万円だけを差し引いた場合、所得税額は
(350万円-38万円)×10%-9万7500円=21万4500円
ということになりますから、大幅な節税になっていますね。
(実際には、医療費や寄付金、小規模企業決済などでお金が出て行っているので、単純に所得税額の差が節税金額になるわけではありませんが)
まとめ
このように、「控除」というものが何であり、どんな種類があるのか、そしてどれくらいの金額を控除することができる(=所得税を下げることができる)のかを理解することが、「お金に強くなる」ためのヒントと言えます。
これまでお金(税金や売上、所得)には無頓着だった方も、これを機に、お金と向き合って頂ければと思います。
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