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どの世界にも置換屋はいる

今回は連続投稿となるのだが、ご容赦頂きたい。

ネットでニュースを漁っていると、こんなことが起こっていたようだった。

台北/桃園発のバニラエア機、誤って乗客をバスで国内線到着口に案内 一部搭乗客は入国審査通らず入国

こんな話は聞いたことがないし、そもそも国際線の乗客が国内線ターミナルに誤っていってしまうことができるのか、と非常に驚いている。

詳細を見てみると、今回の「事件」が発生するには伏線があったようだ。

①台北出発のこの便は、成田空港が強風のため着陸できず、一旦中部国際空港に着陸し、給油をした。

②その後、中部国際空港から成田空港に飛行した後に、このトラブルが発生した。

どうやら、飛行機からターミナルまでのバスの運転士が「中部国際空港発の便」という情報から、「国内線の便」だと勘違いして起こってしまった、というのだ。
(格安航空会社は普通、飛行機とターミナルの間はバスを使って乗客を運ぶ。なぜなら、一般的なボーディング・ブリッジ(搭乗橋)を使うと「使用料」取られてしまい、コストが跳ね上がるからだ)

つまり、今回は「飛行機の出発地を勘違いした」ために、トラブルが起こってしまったという。

しかし、である。

よくよく考えてみると、これでもなお、今回のトラブルを防ぐことは十分にできたはずだ、と私は思っている。

それは、以下の2つの理由があるからだ。

①そもそも、成田~中部国際空港間に国内線を飛ばすことは常識的なことか?

少し考えてみて欲しい。
現在、東京~名古屋間は新幹線で1時間30分と少しで、移動できてしまう。
この区間に飛行機を飛ばしたところで、競争に勝てるだろうか?

仮に、羽田~中部国際空港間ならなきにしもあらず、だが、
(事実、全日空や日本航空はこの区間にフライトを設定している。おそらく、羽田発着の国際線との接続での運用という意味が大きいのであろう)

今回の場合、成田である。
東京からも1時間以上かかってしまうこの空港から、中部国際空港に飛行機を飛ばしたとして、
新幹線に負けることは明白だ。

常識的に考えて、「中部国際空港からの国内線が成田に着陸する」という情報を得た時点で、「なにかおかしいんじゃないか?」と思うはずである。

そして、万が一これに気づかなかったとしても、

②自社は成田と中部国際空港を結ぶ便を設定しているのか?

ということを考えずに気づかなかったことが、致命的である。

手短に言えば、このバスの運転士は自社便がカバーしている路線すら頭に入れていなかった、
ということになる。

(ただ、格安航空会社の場合、バスの運転をするのは出資を行っている親会社の社員である場合もあるので、必ずしも「自社便の知識がなかった」というのは正しくはない、と考える余地はある)

厳しい言い方をすれば、この運転士は「何も考えていなかった」ということになる。

私はバニラエアは利用したことはないのだが、
このようなことは絶対に経験したいとは思わない。

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なお、このように「自分の頭を使って考えない人」のことを、
業界内では「置換屋」と呼ぶ。

即ち、Aという単語の訳はα、という風に、
何も考えずに仕事をやってしまう人間のことである。

このような人間が業界にどれくらいいるのかは分からないが、

今回のケースで、置換屋であることがどれだけ危険であるか、ということ、

そして、同じような人間はところ変わっても存在するのだ、ということ、をご理解頂けたのではないか、と思う。

もちろん、人間という生き物は、ミスをゼロにすることはできない。
どれだけ頭を使っても、思わぬ過ちをしてしまうことはあろう。

しかし、普段から「考える癖」を付けておくことで、
大きな失敗の殆どは避けることができ、
何か道を誤ったとしても、リカバリーの余地を広く残しておくことができる。

このブログをお読み頂いているあなたには、是非そのような「考える人」となって頂きたい、と思う。

なお、これはお知らせでもあるのだが、

このブログとは別に、現在メールマガジン発行の準備を進めている。

そこでは今回のように、翻訳や語学に関係しない話も含めて、
様々な切り口で「考え方を養う」ということを、
読者であるあなたに行って頂けるようなメールマガジンにしよう、と画策中であるので、

是非そちらもご登録頂きたいと思っている。

詳細は改めて案内をさせて頂くので、今しばらくお待ち頂ければ幸いだ。

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