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特許事務所が翻訳している明細書の対訳活用法

今回は対訳を使った勉強法で、最近気づいたことがあるのでシェアしておこうと思います。

 

既にこのブログの読者の中には、E’storageを使ったり特許庁データベースを使って専門にしたい分野の明細書の対訳を集めながら、用語や表現、熟れた訳し方を蓄積しつつ、誤訳があればそれを元に勉強をする、という方法はご存じかと思います。

 

実際、僕もこの方法を使って勉強をしてきましたし今でもたまに、対訳を拾って表現の幅を広げたり、新しい分野に入っていく時には、この方法を使って勉強をしています(いわゆる「原点回帰」というやつですね)。

 

ただ、対訳収集の際に最近意識していることがあって、それは「特許事務所が直接対応している案件を引っ張り出す」ということです。

 

これはどういうことかというと、普通、特許翻訳の仕事をするためには翻訳会社に応募をしてトライアルを受けて登録を行うわけですが、この場合、応募のためにその会社が持っているであろう大手のクライアントの明細書を引っ張り出して対訳を取る、となった時に、問題になるのが、複数の会社が対応している場合です。

 

特許翻訳で時々経験するのが、同じ会社(出願人)の複数の案件を1人の翻訳者が対応する、ということです。

 

こういうのは、特許をガンガン出す大手企業に時々見られるんですが、ある時期に一斉に出願をするので、それに合わせて翻訳のニーズがどっと押し寄せるわけですね。

 

そして、こういう会社は当然ながら、特許出願の手続きを進める知財会社(特許事務所)を通して出願をすることになるのですが、その時に、明細書の翻訳は普通、特許事務所のパートナーである翻訳会社が担当します。

 

が、当然ながらその会社1社だけで、一気に何百という明細書の翻訳は人手の関係で行えるものではありません。

 

そこで、その翻訳会社は何をするのかというと更に下請けの会社に、翻訳作業の何割かを投げてそちらで対応してもらうということがあります。

 

例えば、100件の翻訳案件があったとすれば、特許事務所のパートナーであるA社は60件を担当して、下請けのB社に40件を投げます。

 

そして、B社は更に、40件のうち対応できない15件を更に下請けのC社に投げて、それがまた繰り返されて…ということが起こりえます。まあ、実際の処理件数はもっと多いと思いますが。

 

そして、こういう風に元請け→下請け→孫請け→…という風に、ある会社の明細書が複数の翻訳会社に流れて翻訳されたとすると何が起こりえるかというと、会社によって翻訳の品質が異なる恐れが出てくる、ということです。

 

当然、元請けと孫請けでは翻訳者のレートも異なるわけですが(仮に倍違うとしましょう)、レートが違うと、当然ながら翻訳の質も変わりますし、会社が対処する業務も異なる可能性があります。

 

元請けはレートが高いので、細かい誤訳や表現の修正を行った後でそれに見合った訳文が納品されますが、これが孫請けの場合、そこまでのチェックが行われない可能性がありますね。

 

だとすると、同じ出願企業の明細書の対訳を引っ張り出したとしても、20件の対訳を見てみた場合に、訳文にバラツキが出る可能性があるわけです(僕は実際に、ザッと目を通しただけですがそういうバラツキを感じたことがあります)。

 

しかしもしこれが実際に起こりえると、勉強をする側にとってはあまりいいことではありませんよね。

 

特許翻訳者として仕事を続けていくのであれば、やっぱり一定以上の条件の取引先を開拓して、一定以上の評価を得ながら仕事をしていきたいものです。

 

なので、その状態を目指すのに、関係のある出願企業を調べて対訳を参考にする、というのはいいんですが、必ずしも、取引をしたいと思っている会社がその翻訳を担当したというわけではない、ということが起こりえるわけですね。

 

A社に応募をするのに、A社が持っているであろうクライアントの明細書の対訳を調べたのに、実は孫請けのC社が翻訳を対応していた、なんてことがありうるわけです。

 

まあ、もしC社の訳文だったとしても、誤訳やツメの甘さに気づいて、自分で修正をしてレベルアップすることができれば特段問題はないわけですけれど、勉強を始めて間もない頃だと、一定以上の訳文を見ながら、「写経」的要素を含めながら対訳を取っていったほうがいいですし(最初に取った対訳が全然ダメでも、最初はそれがダメなことに気づきにくい)、

 

ある程度レベルアップした後だと、対訳を取るのであれば、細かい表現の工夫なども含めて「よい訳文」に触れる機会が多い方がいいわけです。

 

そういう時に、特許事務所が直接対応している案件の対訳を探し出して勉強に使うと、学びになる部分は増えそうですよね。

 

僕は実際、この方法で特許事務所の対応案件の対訳を少しずつ見ていっていますが、今後仕事で使ってみたいな、と思える工夫や気づきが多いです。

 

ちなみに僕は、翻訳者の求人が出ている特許事務所を調べて特許庁データベースを使って、代表弁理士の名前を「出願人」に、任意のキーワード(「核酸」とか「遺伝子」とか)を「発明の名称」に入れて、まずは日本でどれくらい出願されているのかを検索します。

 

僕の場合は英日を主に担当しているので、その結果の中から外国企業が出願している明細書をピックアップして、あとは、タイトルで使われているキーワードから英語のタイトルを想像して
そのキーワードをE’storageに入力して検索をしたり、

PCT出願の場合はPCTでの出願番号が明細書に書かれているので
それをE’storageに入力して検索をしたりして

いくつか対訳を拾い出しました。

 

検索方法は他にも色々あると思います。

 

とまあ、この考え方に基づいて
特許事務所担当の翻訳案件を探し出して
対訳収集と勉強をするのが案外効果的だと思うので

 

今回はそのシェアをしました。

 

上に書いた内容には「仮説」も多く含まれるので
実態とは違うこともあるのかもしれませんが、
まあそれはさほど重要ではありませんからね。

 

是非参考にしてみて下さい。

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