「自己組織化」という言葉を聞くと、個人的には学習プロセスにおける脳内のシナプス形成での自己組織化マップ、のことをどうしても最初にイメージしてしまうのだが、この「自己組織化」という概念はもともと、細胞等で自然に見られる現象であり、ややミクロな世界にはなってしまうが、私たちの身の回りで何気なく見られるものである。
そこで、いわゆる技術思想としての「自己組織化」を取り上げた場合、私が真っ先に思い浮かぶのは、自己組織化高分子を利用したポリマーミセルやナノ粒子である。
例えば、自己組織化を利用したナノ粒子は、特許明細書にも現れる。
例)有機修飾シリカ微粒子およびその製造方法(2009-197142号)
この図はさくっと調べてヒットしたものなので、特許明細書の中身までは詳しく確認していないのだが、どうやらシリコーンを素材にするナノ粒子のようだ。
私としては、どうしても生化学・薬理学関連で用いられる「薬物送達用ポリマーミセル」のような、自己組織化を利用した材料をイメージしがちなのであるが、
いずれにせよ、異なる性質の高分子を化合してブロックコポリマーとして、これが溶媒との兼ね合いなどにより自己組織化してミセルを形成する、という方法を利用している。
ただ、調べているとどうやらこの自己組織化、半導体のパターニングでも利用されているようで、非常に応用範囲が広そうなのだ。
これはどういうことかというと、異なる性質の主鎖や官能基を有するブロックコポリマー等の相分離を利用する。
上の図は、AとBの部分からなるポリマーが、AとBの比が異なることによって様々な相を形成することを示しているのだが(出典:自己組織化材料の半導体微細パターニングへの応用)、この技術を使って、シリコンウエハー上に自己組織化材料でのパターニングができるという。
同じ文書から引用すると、ただポリマーをウエハー上に塗布するだけでは、上手左のように指紋状になるだけなのだが、このウエハー上の表面エネルギー等を制御することによって、右のような直線状などの、規則的な配向を生み出すことができる。
では、なぜこのような「自己組織化リソグラフィー」が良いのかというと、理由の1つとしては、従来の方法では実現しづらいより微細なパターニングが必要とされてきている、ということが挙げられる。
高分子材料をナノスケールで制御・利用することによって、レーザーの照射等では到達しづらいスケールでのパターン形成を行える、というわけである。
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスの構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるパターンの微細化が要求されている。現在、例えばArFエキシマレーザーを用いて線幅90nm程度の微細なパターンを形成することができるが、さらに微細なパターン形成が要求されるようになってきている。
上記要求に対し、秩序パターンを自発的に形成するいわゆる自己組織化による相分離構造を利用した自己組織化リソグラフィープロセスが提案されている。かかる自己組織化リソグラフィープロセスとして、互いに性質の異なるブロックからなるブロック共重合体を用い、自己組織化により超微細パターンを形成する方法が知られている(特開2008-149447号公報、特表2002-519728号公報及び特開2003-218383号公報参照)。また、互いに性質の異なる複数の重合体を含む組成物を自己組織化させることにより微細パターンを形成する方法も知られている(米国特許出願公開2009/0214823号明細書及び特開2010-58403号公報参照)。これらの方法によると、上記重合体を含む膜をアニーリングすることにより、同じ性質を持つ重合体構造同士が集まろうとするために、自己整合的にパターンを形成することができる。
(特願2015-87150:下地用組成物及び自己組織化リソグラフィープロセス)
この特許を見てみると、
基板101上の下地102に、プレパターン103及び塗膜104を形成し、アニーリング等の処理を行うことで104の配向が変化し、下図4のように、自己組織化膜105(105a、105b)が形成される。この状態でエッチングを行うことなどにより、103と105bを除去することで、図5に見られるように自己組織化膜の一部がウエハー上に残る。
なるほど、これは半導体プロセスの一部ではあるが、カテゴリーとしては表面処理の一種として考えられる。そういえば、このようなパターニング表面にカーボンナノチューブを生長させるような特許も読んだことがあるし、なかなか細かい部分で技術思想や技法は繋がっているのだなあ、とまた勉強になった。
今回の場合は、自分の頭の自己組織化も強化されたというおまけも付いてきたが。
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