2026年2月に出版された、「研究開発のための知財戦略~技術を競争力に変える特許のしくみ」(著者:玉利泰成氏)を読みました。
企業で研究開発に携わる方にとって、切っても切れない「知財戦略」との結びつきをまるっとまとめた書籍です。
私は企業知財経験がありませんが、ないからこそ、別の視点での物の見方を何か得られないか、ということで読んでることにしました。
一番学びになったこと
結論をズバリ言いますと、「企業側の知財戦略の内在的論理」を掴むことができた、ということです。
どういうことでしょうか。
私は翻訳という観点で、知財実務(特許実務)の絡んでいるのですが、この仕事で必要な物事の視点は、どちらかと言うと「代理人側」の視点でした。
翻訳をする≒別言語で明細書を書く、と私は考えているのですが、そこで必要になってくる視点だったり考え方は、「明細書の書き方」という、弁理士・技術者の視点と、(突き詰めて行くと)ほぼ似通ってくると思います。
英語や日本語に通暁していることに加えて、技術をある程度理解している、そして特許制度(法律)もある程度抑えている、というものです。
一方で、知財戦略における「企業の内在論理」というのは、自社の事業を育てる、売上を上げる(営利活動)に繋がるものです。
その1つが、ライセンス交渉(許諾)や特許権購入といった、本書では「攻めの知財戦略」と呼ばれているものです。
このような実務が存在することは知っていましたが(特許法でも、制限事項などについて明文化されています)、これは言ってみれば、営利事業体(企業)のまさに「生きた(血の流れている)実業の世界」と言えるわけで、翻訳という「字面をこねくり回す」ような仕事をしていると、決してイメージすることのできないものだったと思います。
営利事業体がどのような内在的論理を持って活動しているのか、を把握した上で、その目的を果たすためには、知財(特許)実務の世界でどのような身動きができるのか、ということを掴むことができたのが、私にとっては一番の学びでした。
事務所か企業か論争について一言
さて、個人的にはここからが本題です。
弁理士資格を取る(目指す)人の中で定期的に話題になるのが、「特許事務所で仕事をするか、企業の知財部で仕事をするのか」という二項対立のテーマです。
私は両方経験したことがないので、具体的なことはなんとも言えません。
ただ、強いて言うなら、様々な出願人の書類の特許翻訳、という仕事を通して疑似経験しているのは、前者、つまり事務所の実務に近いのかなと思っています。
その上で、この二項対立について思うことは、「そもそも同じレイヤーで語ることができないテーマ」なのではないか、ということです。
というのも、民間企業と士業事務所とでは、上にも書いた「内在的論理」が違っているからです。
民間企業というのは、言ってみれば「当事者」であり、士業事務所というのは、良くも悪くもその「代理人」でしかありません(代理人にしかなれない、と言ってもよい)。
これら両者の違いを乱暴に一言で表現してしまうと、
民間企業は「自社の利益が第1優先」であり、
士業事務所は「クライアントの利益が第1優先」である、ということではないでしょうか。
もちろん事務所も、自社の売り上げが立てられないと潰れてしまうので、そのファクターが大切なのは言うまでもありません。ただ、根本的に求められる資質といいますか、プロとしてのマインドは似て非なるものではないかなと思います。
私自身は、代理人として適格な物事の見方考え方(クライアントの利益第一主義)のことを、「ノブレスオブリージュ」と呼んでいますが、このマインドを持っていない人が代理人になっても、顧客も本人も、幸福にはなれないのではないか、と思います。
もちろん、このマインドを持っていなくても、成功はできるかと思います。
でも、成功と幸福は別物なんですよね。
そして、成功を求めるのであれば、別に代理人(士業)になる必要はないかと思います。専権業務の代理権付与がされる国家資格を持っていなくても、成功する路はあるはずですから。
最後に
「研究開発のための知財戦略」を読んで自分なりに考えたことを今回はまとめました。
読者ターゲットは、タイトルにあるとおり「企業の研究開発部門で仕事をしている方」なんだと思いますが、知財実務に別のアプローチで関わっておられる方も、おおいに学びになる内容だと思います。
ぜひ手に取っていただければ嬉しいです。
スポンサードリンク
jiyuugatanookite.com

