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翻訳業で一人法人成り。立ち上げ時に苦労したこと①

特許翻訳の仕事を個人事業主で始めたのは2015年でしたが、そこから9年が経った2023年の3月に、諸事情で法人成りをしました。

 

法人成りをするに当たっては、急きょ予定を前倒しして法人を作ったため、事前に大切なことを熟考する時間を十分に取れなかったのですが、その反省点を今回はまとめたいと思います。

 

これから、翻訳業を個人事業主から法人に変更する方に参考にしていただければ幸いです。

①法人の所在地をどうするか/株式会社か合同会社か

最初に大切なのは、法人の形態と所在地です。形態は、現在作ることができる法人形態の主たるものが株式会社か合同会社なのですが(他には合名会社などあります)、私は株式会社を選びました。

 

株式会社か合同会社の違いで大きな点は、設立にかかる費用の違い(株式会社のほうが高い)、及び、その後役員変更をするとか、会社のお金を個人にどう分配するか、という際のコスト(登記変更など)の2点だと思うのですが、翻訳業の場合、BtoBの仕事がメインだと思うので、株式会社のほうが良いかと思います。

 

また、法人の所在地は、自宅を持っている(持ち家である)場合はそこを所在地にし、賃貸の場合は、近くで法人利用可のバーチャルオフィスをレンタルで借りるのがほぼ唯一の選択肢だと思います。私は後者の方法を取りました。

 

②資本金をどうするか

株式会社を設立するにあたっては、資本金の準備が必要です。税理士視点からだと、「1000万円以下(未満?)だと法人税などの特例があるので1000万円以下」と解説されているのですが、これはあくまで税理士視点での話で、個人的には不十分な解説だと思います。

 

参考:資本金1000万は消費税の免税基準!1000万以上の場合の注意点も解説

 

資本金は、法人の運営に必要なお金として自由に使えるので、例えば法人成りの場合は

・個人から法人に売上を移すまで(取引先の経理や契約の関係で、数ヶ月かかる場合がある)の役員報酬などの支払い

・必要な設備投資(辞書や翻訳ソフトなどがメイン)の購入費用

・事務所の賃料の支払

などに充てることができます。要は、法人で売上が安定して立つまでのランニングコストの支払いに充てることができるので、法人の売上の安定が見込めるまでの数ヶ月間のランニングコストを資本金にする、というのは考え方の1つとしてアリかと思います。

 

150~300万円にするのが一般的なのですが、資本金はポケットマネー(個人事業主で作った貯金などが該当)から準備することがあるので、ご家族がいるなどの理由で全てのお金を自由に使えるわけではないと思います。ここは各々の財布事情を考慮しながらも、対外的な見られ方、という意味で、最低150万円はあるのがいいかと思います。

 

(とはいうものの、業務委託でパートナーを増やすなどせず、一人でできる範囲の仕事を続けるのであれば、そこまで多くの資本金を準備する必要もないかと思います。)

 

③ランニングコストの洗い出しと役員報酬の設定

私が一番後悔しているのはこれ(特に、役員報酬の設定)です。

 

個人事業主だと、そもそも「給与」という概念がないので、この役員報酬(=給与)をどのように決めれば分からず、結果的にエラい失敗をしてしまいました。

 

結論から言うと、「役員報酬は取れるだけ取れ」です。

 

どういうことかと言うと、法人のほうで色々と経費計上できるとは言え、それはあくまで事業に関連する支出に対してだけで、「お金の自由度」だけで言うと、個人のお金>法人のお金、という式が成り立ちます。事実、NISAなどの資産運用のお金も個人のお金から出すことになりますし、住宅ローンの返済が必要であれば、そのお金も個人のお金から出す必要があります。

 

また、これから住宅を買う、住宅ローンを組む予定の人にとっても、「給与を上げて年収を高くして、融資を組みやすい」状態にしておく必要があるので、そういう意味でも、役員報酬はできるだけ取って(もちろん、法人が赤字になったり、キャッシュアウトするような設定にしてはいけませんが)、その上で法人では事業に必要なお金を使っていく、という使い分けが大事になってくるのです。

 

では、役員報酬をどう設定するのか?についてですが、これは、「月の売上-法人の必要経費」を大まかに計算した上で、そこから無理のない(法人に最低限のお金が残るような)金額で役員報酬を設定するのがいいかと思います。

 

例えば、個人事業主時代の売上が年間1000万円だとすると、月平均すると約83万円の売上が立っていることになります。ここから、法人の運営に必要な、毎月かかるランニングコスト、例えば

・事務所/バーチャルオフィスの賃料

・賃貸を法人名義で契約している(=役員社宅制度を導入している)場合は、その法人負担分

・税理士顧問契約料

・書籍、学会費などの「新聞図書費」で計上できるお金

・消耗品費、荷造り運賃(切手、レターパックなど)

がいくらかを計算します。

 

例えば、この金額がおよそ18万円になるのであれば、毎月の粗利は83万-18万=65万円、となります。

 

この金額がざっくりと分かったら、ここから役員報酬を決めていきます。

 

ここで、法人の場合は、法人負担分の社会保険料が別途、ランニングコストとしてかかってくるので、このシミュレーションが必要なのですが、これは住んでいる都道府県と年齢(介護保険負担の有無)によって異なるので、各自で計算をしてください。

 

例えば、私の住んでいる都道府県+私の年齢だと、役員報酬を50万円に設定する(額面を50万円にする)と、それに伴う法人負担分の社会保険料は約7.3万円になります。

 

つまり、この場合は役員報酬のランニングコストが57.3万円になるわけです(この役員報酬額と法人負担分の社会保険料は法人の損金算入(=経費計上)ができます)。

 

なので、例えば上記の粗利で役員報酬を50万円にしたら、65万-57.3万円=7.7万円、が、毎月法人に残るお金になります。

 

これが12ヶ月続くと92.4万円が年間の法人の利益になるわけですが、この利益から、たまにする出張の交通費や単発的な支出を賄えば良いわけです。

 

一人法人の場合、利益が出すぎると法人税もかかることになるので、法人での利益はそんなに残さずに(税引き前利益が20万とか30万円)、殆ど法人の経費で使う+役員報酬でがっつり受け取る、の組み合わせで「お金を上手く使う」方向性にシフトするのが良いかと思います。

 

(私は、1期目の役員報酬を低く設定しすぎて法人税をたんまり払うことになったので、2期目からはがっつり取ることにしました)

 

まとめ

今回は、私が法人成りをするに当たって苦労した点をまとめました。

 

次回は、法人の銀行の選び方と顧問税理士の選び方についてまとめたいと思います。

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