ワーキングホリデーとシェンゲン協定の組み合わせ論争に決着をつけよう
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このブログに訪問して下さる方の検索キーワードを調べていると、「ワーホリ シェンゲン協定」というような組み合わせが定期的に見られます。

 

これは恐らく、「大陸ヨーロッパの多くの国はシェンゲン協定に加盟しているけれど、ワーキングホリデーを使ってこれらの国に訪れるときの滞在ルールはどうなっているの?」という疑問を、多くの方が持っているからだろう、と推測されます。

 

試しに、このキーワードでググって見ると、色んな回答が見られます。例えば…

ビザ免除で滞在できる「90日間」はワーキングホリデービザの有効期限に「既に含まれている」ため、ワーキングホリデービザでの1年間の滞在の後に90日間の滞在延長できるわけではありません。

出典:ワーキングホリデービザとシェンゲン領域

この出典は「ワーキングホリデーニュース」という、ワーホリ業界(?)の大手サイトだったり、

終了後はフランスの場合は90日間、他の締結国も一定期間(大抵は90日)はVISA無しでは再入国出来ません、

出典:Yahoo知恵袋

こちらは匿名の質問サイトなので、信憑性には欠けますが…

あるいは、こちらのデンマークワーホリのサイト(運営は同じ、大手サイトのようです)にも

ワーキングホリデービザでの滞在はシェンゲン協定の定めるビザ免除規定の期間(6ヶ月内90日間)を含みます。シェンゲン協定加盟国外で6ヶ月過ごさなければ、デンマークも含むシェンゲン条約加盟国の再入国はできません。 シェンゲン協定加盟国に6カ月入国できないのでデンマークワーキングホリデー終了後にシェンゲン協定国へのヨーロッパ旅行はできません。

出典:デンマーク 留学・ワーキングホリデー

などなど…

 

ネットの検索結果の上位表示サイトをザッと見てみると、「ワーホリビザが有効になる前の90日間、あるいはワーホリビザが失効した後の90日間は、ビザ無しで(観光目的で)シェンゲン圏内に滞在できない」というような回答が多く目に付きます。

 

しかし、これは(2018年初頭現在で)間違った回答です。なぜなら、実際に僕は、ポーランドでワーキングホリデービザを使って滞在した1年間の前後約100日間を、ビザ無しでポーランド(とシェンゲン圏内)に滞在していたからです。

 

今回は、このややこしくて、ネットでは憶測ばかりで勝手に話が進んでしまっている「ワーホリビザとシェンゲン協定の組み合わせ問題」について、決着をつけたいと思います。

 

※2018年8月3日追記:この「ビザ無し滞在」の条件ですが、基本的には「ビザの有効期間をまたぐ合計180日のうちの90日間は滞在可能」という考え方を採用して下さい。詳しくはこの記事の最後で述べますが、僕がポーランドワーホリの前後にポーランド国内に合計で約100日間できたのは、共にポーランドと日本との二国間協定を使ったからです。

 

二国間協定の詳細についてはこちらの記事をどうぞ。

ポーランド好きの日本人なら知ってて損のない「日本ポーランド二国間協定」

 

 

目次

ワーホリ前後でビザ無し滞在(前後合計180日)ができる理由

 

まず、僕がどのようにビザ無し+ワーホリビザを組み合わせてシェンゲン圏内に滞在していたかを紹介しましょう。

・2016年7月中旬~8月末:ビザ無しでポーランドに陸路入国(シベリア鉄道を使ってベラルーシから)、ポーランド国内に滞在

・2016年8月末にポーランドから直行便でウクライナまで旅行(一旦シェンゲン圏内を出る)

・2016年9月頭~2017年8月末:ワーホリビザでポーランドに滞在(他の国にも旅行)

・2017年8月末にポーランドからグルジア(ジョージア)に直行便で移動(またシェンゲン圏内を出る)

・2017年9月中旬~2017年11月頭:ポーランドに再び戻り、ビザ無しで2ヶ月ほどポーランドに滞在(スロバキアとハンガリーにも旅行)

 

つまり、ビザの有効期限が始まる前と期限が切れる直前にシェンゲン協定圏内を一旦出る必要はあるのですが、それを行えばビザがなくてもシェンゲン圏内に、シェンゲン協定の有効期限内であれば何の問題もなく滞在ができる、というわけです。

 

(ちなみに、本当はビザ有り滞在とビザ無し滞在の切り替わりの際に、一旦シェンゲン圏内を出る必要はない、ということをシェンゲン圏内のとある国の大使館にも確認済みですが、一旦シェンゲン圏内を出る方が確実だという話も聞きました)

 

では、なぜワーホリビザの有効期間の前後で合計180日間(それぞれ最大90日間)のビザ無し滞在が可能なのか、と言えば、それは、日本人が有効な滞在許可証を持ってシェンゲン圏内に滞在する場合、その滞在(日数)はビザ無し滞在(観光目的滞在)としてはカウントされないため、シェンゲン協定の「あらゆる180日間で90日」というルールを、そもそも考えなくてよいかららです。

 

実際に、ヨーロッパに滞在している間に複数のシェンゲン協定国(ワーホリ締結国)の大使館に問い合わせをしましたが、そのような回答を以下の通り頂いています。

しかしながら、有効な滞在許可に基づく滞在はビザ免除協定の滞在として数えられません。一旦出国して、ビザ免除協定で再入国した場合は、最初から90日間まで滞在することはできます。

(駐日B国大使館)

 

ポーランドでのワーキングホリデービザ終了後、日本国籍の方はシェンゲン協定国にあらゆる180日のうち90日の滞在、できます。

(駐日B国大使館)

 

とまあ、全ての国の駐日大使館に問い合わせをしたわけではありませんが、複数の大使館から同様の回答が得られていることからも、ワーホリビザ(ひいては、ワーホリ以外の全てのビザ)の有効期限の前後では、シェンゲン協定の規則を破らない限り、ビザ無しでもシェンゲン圏内に滞在可能というわけです。

(こういう協定の専門は日本の外務省であり、駐日大使館や在外日本大使館(在外公館)に問い合わせをするのが確実です)

 

なぜ「ワーホリ前後はビザ無しで滞在できない」という間違った論説が広がるのか

 

では、上に挙げた例のように、なぜ間違った考え方や回答が広がってしまうのでしょうか?(ワーホリ斡旋の大手サイトでもそのような回答が堂々と書かれています…)

 

これには、上に挙げたサイトにも書かれていますが「ワーホリビザでの滞在期間は、ビザ無し滞在での90日間に含まれる」という論理がそもそも間違ってしまっている、というのが原因かと思われます。

 

というのも、大使館の回答にあるように「有効な滞在許可証(ビザを含む)を持っている場合の滞在は、ビザ無し滞在の日数には含まれない」というのが正しい考え方なわけです。

 

この間違った考え方(ワーホリビザでの滞在期間は、ビザ無し滞在での90日間に含まれる)の何がいけないのかというと、「ワーホリビザでの滞在期間は、ビザ無し滞在での90日間に含まれる」という論理で話を進めていくと、矛盾が生じてしまうからです。

 

というのも、そもそもシェンゲン協定というのは「あらゆる180日間のうちで90日間、協定国に滞在ができる」というものです。つまり、残りの90日間はシェンゲン国外(日本やトルコ、イギリス等)にいないといけません。

 

そして、「ワーホリビザでの滞在期間にビザ無し滞在での90日間が含まれる」のであれば、有効なビザを持ってシェンゲン圏内に90日間滞在した時点で、次の直近の90日間はシェンゲン協定国には滞在できないことになってしまいます(論理に矛盾が生じています)。

 

(数学的に言うと、これは背理法と呼ばれる考え方で、「●●が正しい」という前提で物事を考えていくと矛盾が生じるので、「●●は間違っている」という結論になる、というものですね)

 

そもそも、「シェンゲン協定」というのは、前提が「無査証で協定国内に滞在する場合」となっているわけですから、有効なビザを持っている期間を含めて考えるのはおかしいわけです。

 

というわけで、インターネットには間違った情報がコピペされ続けてしまっているのですが、実際は「ビザの有効期間の前後180日はビザ無し(観光目的)でシェンゲン協定に滞在できる」ようになっている、ということで、これ以上この論争を続けるのは無意味だ、ということになりました。

 

これからシェンゲン圏内でワーホリをする人は、参考にしてみて下さい。

 

補足:ビザ無し滞在を利用する際の注意点

 

2点補足をしておきます。

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①ビザ無し滞在中は就労等は一切できません

ワーキングホリデーでは、現地で仕事をする(就労する)ことが認められていますが、当然ながらワーホリビザがないと就労はできません(あくまで「観光目的」での滞在です)。

 

インターネットを使って日本と仕事をする、株やFX等で収益をあげる、というのであれば別ですが、ビザ無し滞在中は「滞在は出来ても制限が増える」ということは理解しておきましょう。

 

②ビザ無しでの滞在が認められないこともゼロではありません

シェンゲン協定国を含むヨーロッパは、年々移民や難民の受け入れにシビアになってきていることもあり、ビザ無しで入国を使用とした場合に、「現地で不法就労するのでばないか」というように当局からみなされない可能性もゼロではありません(日本のパスポートを持っている限り、限りなくゼロに近いとは思いますが…)

 

実際のところ、シェンゲン協定国で就労(日本からの駐在)で現地でビザ申請をする人が、ビザ無しで片道航空券を使ってドイツから入国をして第三国に移動をしようとしたところ、ドイツの入管に入国拒否をされた、という事例が発生しているようで、日本大使館にもその注意喚起がされています。

 

長期滞在を目的にシェンゲン協定域内国に渡航する際の注意(ドイツを経由する場合)

 

ドイツ以外の国ではこのような事例は起こっていないようですが、ワーホリビザが切れてからシェンゲン圏内に再入国してビザ無しで滞在する場合、ドイツから入国する場合は帰国のチケットを手配しておくなどしておいたほうがよいかもしれません。

 

その他細かい質問は、当局(日本の在外公館や駐日大使館)にお問い合わせ下さい。

 

ビザの有効期間をまたぐ180日間で90日の滞在が可能、とは

 

ここからの章は、2018年8月3日に追記としてまとめています。

実は、上でまとめた内容は、後から振り返るとどうも「日本とポーランドの二国間協定」を利用したからできた方法ではないか、ということが判明しました。

 

というのも、僕はポーランドでのワーホリ+無査証滞在を終えて帰国した約半年後に、再度ポーランドに戻ってからハンガリーに移動して、ブダペストでハンガリーのワーキングホリデー(を利用した滞在許可証)を発給してもらったのですが、このときに、滞在許可証が切れた後の無査証滞在について大使館に確認をしたところ、以下のような回答が返ってきました。

 

ただし、シェンゲン協定では、査証を必要としない短期滞在の日数について,「あらゆる180日の期間内で最大90日間を超えない」範囲でのみ認めると規定されています。

従いまして、観光目的で改めてシェンゲン域内国に入国した際、入国日から遡って過去180日以内の間に短期滞在目的でハンガリー以外のシェンゲン域内国に渡航している場合には、90日から右滞在日数を差し引いた日数がビザ無しで滞在できる日数となると承知していますので、ご留意ください。

これはどういうことなのか、僕の場合を例に詳しく説明します。

 

僕は、2018年の3月31日にポーランドのワルシャワ空港で、無査証(観光ビザ)で入国審査を受けてシェンゲン協定国内に入国をしました。ここから3週間ほどポーランドに滞在した後、4月の22日のハンガリーに向かって、24日に滞在許可証を申請し、5月の中旬に無事発行してもらうことができました。

 

その滞在許可証には、発給日(発行日)が「2018年5月8日」と書かれています。つまり、僕は2018年3月31日~2018年5月7日までの約40日間は、シェンゲン圏内にシェンゲン協定(あらゆる180日間のうち90日間滞在可能)を使って、滞在をしていたことになります。

 

そして、僕のハンガリーでの滞在許可証の有効期間は2019年4月26日ですので、これまでに一旦シェンゲン圏を出て帰国するか、ルーマニアや旧ユーゴスラビア形成国を一部を旅するなどして、またすぐにシェンゲン圏に戻ってくることは可能なのです。

 

ただし、ここでどういう風にシェンゲン協定が適用されるかというと、

「2018年5月7日以前の任意の日数+2019年4月27日以降の任意の日数=180日」

となる日数の間で、90日間しか無査証でシェンゲン圏に滞在できるということなのです。

 

そして、僕の場合許可証の有効期間が始まるまでに約40日間はすでに「無査証滞在」をしている(しかも今回は、ポーランド入国でハンガリーに移動して査証を受け取っているので、二国間協定は適用外になる)ので、2019年4月27日以降では約50日しかシェンゲン圏内には無査証で滞在ができないのです(まあ、それでも十分な日数と言えば日数ですが)。

 

これが、ワーキングホリデーをはじめとするビザや滞在許可証を持っている際の、シェンゲン協定の適用方法です。大事なのは、とにかく「ビザの有効期間前後を合わせて90間滞在できる」ということです。こういう風に考えることを覚えておけば、問題ないし難しくもありませんね。

 

まとめ

今回は、シェンゲン協定とビザとの兼ね合いについて詳しくまとめておきました。もう、これからは「ビザが切れた後90日間はシェンゲン圏に入国できない」という都市伝説に怯えなくても大丈夫ですね(ただし、ビザ有効期間が始まる前に90日間無査証滞在していると、ビザが切れた後は90日間はシェンゲン圏に滞在ができません)。

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